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「毛利元就 第七回 われ敵前逃亡す」

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今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第七回 われ敵前逃亡す」です。

-----内容&感想-----
松寿丸(しょうじゅまる)が元服して毛利元就になった直後、兄の興元(おきもと)が突然京都から帰国しました。
評定が開かれ、興元とともに京都に行っていた重臣の福原広俊(元就の祖父)によって、興元は大内義興の形勢不利を見越して見切りをつけて帰ってきたことが明らかになります。
興元は疲れきった目で「戦というものは地獄じゃ。勝たねばさらに地獄じゃ」と言っていました。

その夜、元就は興元に大内の負けを見越して何と言われようと領民や御家(おいえ)のために帰国したのはまさしく勇気の成すところと労います。
相合(あいおう)の子(元就の異母弟)の月夜丸(つきよまる)も弟であることが誇らしいと言います。
興元が二人の労いにほっとした表情を見せながら印象的なことを言います。
「とにかく世間では親兄弟同士が殺し合う。毛利だけはそのようなことのなきよう、兄弟三人力を合わせていこうぞ」
しかし後に毛利もそうなるのが分かっているのでこの言葉は寂しく聞こえました。

興元が杉に幼き弟をよくここまで育ててくれたと礼を言います。
そして元就からぜひ杉に褒美をやってくれとせがまれていると言い、杉のかつての侍女、久を呼び戻して再び杉に仕えさせてくれます。
杉は大喜びしていてその様子を見て興元と元就も微笑んでいました。

その頃京都では誰も予想だにしなかったことが起こります。
かなりの劣勢だった大内義興が船岡山の合戦で奇跡的に勝利し再び京都を奪回します。
義興の館では征夷大将軍の足利義稙(よしたね)が「よお戦ってくれた。戦というもの、終いまで分からぬものじゃと、此度(こたび)ほど思うたことはない!」と言います。
義興が「御所様、早う具足を解かれ、まずはごゆるりとお休みなされませ」と言い義稙が去ると、重臣の陶興房(すえおきふさ)と内藤興盛(おきもり)が大内に無断で帰国した高橋、吉川、毛利への怒りを爆発させます。
興房はいかなる厳罰を与えても足りないと言い、興盛は特に毛利興元は元服の烏帽子親を頼み義興の一字を貰っているのに許せないと言います。
義興も「容赦はせん」と言っていて一気に緊迫した雰囲気になりました。

この知らせはただちに毛利にも届き、評定が開かれますが興元がなかなか現れません。
元就が呼びに行くと興元はのん気に寝ていました。
興元は「大内が勝利したからとて、何も慌てることはない。打つ手は考えてある」と寝たまま言いますが、その枕元に酒が置いてあるのを見て元就は本当に信じて良いのかという表情になります。
中村橋之助さんは嬉しそうな表情も不審げな表情も雰囲気をたっぷり出していて演技が上手いと思います。
評定に現われた興元は「案ずるな」「わしに策がある」と言うばかりでどんな策があるのかは言いません。
重臣達がこの窮地を脱する策を考えねばと言ってものらりくらりとかわしていて、大内が激怒しているのになぜそんなにのん気にしていられるのか分かりませんでした。

杉が久に私は母親らしく見えるかと聞きます。
久は元就と杉は昔はあんなに仲が悪かったのに今ではどこから見ても実の母と子に見えると言い、私は杉は喜ぶものと思いました。
ところが杉は「そのようなことは聞いてはおらぬ。見た目が母親臭くなってはおらぬかと聞いておる」と言い、「見た目は独り身のようでいて、元就様が姿を現した時に初めて「まあっ、このようなご立派なお子があるようには見えませぬ」と言われるのが女としてあるべき姿じゃ」と言います。
久は呆れながら「何も変わられませぬなあ」と言い、久しぶりにこの二人の掛け合いが見られて面白かったです。

そんな杉と久のもとを元就が訪れて、兄上はいつからああなってしまったのか、何を考えているのか見当がつかないと言います。
「兄上は何をお考えなのか分からぬ、元就に手立てはない、もうどうしてよいか分からぬ。何やら気持ちがしおしおとするばかりじゃ」とかなり悩んでいました。
元就が話したら少しは気が晴れたと言い去っていくと久が「ぼやきの多い男にござりまするな」と言います。
毛利元就は知略の他にぼやきの多さでも有名で、第一回から見てきて初めてぼやきの多さへの言及があったのでこの先どうぼやきが有名になっていくのか楽しみになりました。


相合の方(写真はネットより)

相合の館では桂広澄(ひろずみ)が月夜丸に思い詰めた様子で「月夜丸様、早う元服を済ませ、わしの力になって下さりませ」と言います。
月夜丸がなぜ急にそんなことを言うのかと聞くと「闇夜にあっては、誰しもきっと月を待っておる」と言いこれは良い台詞だと思いました。
「闇夜の毛利にきっと月夜丸様は必要になる」と言っていて、興元が率いる現在の毛利に光がないと考えていることも分かりました。
相合が大内のことを早く手を打たなければ大変なことになると言うと、広澄はおのれの命を引き換えにしても手を打つと言います。
「あの殿にはもう任せておけぬ。わしがやらねばまこと毛利は闇に葬り去られる」と言い覚悟を決めていました。
そんな広澄を見て相合は「分かりました。思うたとおりになさりませ。腹を決めた男を送り出すのは、女の気持ちを酔わせるものにござりまする」と言い送り出します。
この大河ドラマはよく女の人の気持ちが描かれているのが印象的です。

広澄は尼子経久(つねひさ)のもとを訪れ、自身のことを信頼してくれていると思ったのに尼子と武田が手を組む動きを何も知らされていなかったと言います。

さらに真っ先に京都から出雲に帰ったことも、今後の動きも、何を目指しているのかということも聞かされていないので教えろと迫ります。
経久は備後、安芸、瀬戸内と物にしさらに天下を我が物にすると言います。
本心を見せた経久は改めて「桂殿、手を結ばぬか」と言い手を差し出し広澄もその手を取ります。

興元のもとを井上元兼(もとかね)が訪れ、福原広俊自身が言うように広俊の首を差し出して大内に許しを乞うしかないのではと言います。
すると興元が激怒して刀を抜き元兼を斬ろうとします。
そこに元就が駆けつけて何とか怒りを鎮めます。

興元と元就二人での話し合いになります。
興元は元就がいつも不安そうな目で興元を見ていることに触れ、今度そんな目で見たら元就にも刃を向けると言います。
すると元就は刀を差し出し、死を覚悟して興元は本当は何も手立ても考えもないのだろうと言います。
元就が「兄上が一人でお苦しみになるのを見てはおられませぬ。何をお苦しみなのか、元就にお話しくだされ」と迫るとついに心の内を話します。
興元は何もかも虚しくなって京都から逃げてきました。
広俊は興元に大内を見限るように勧めたのは自身だと言っていましたが、実際には京都から逃げようとする興元に大内を裏切るなと何度も言っていたことが明らかになります。
「元就、わしは人間のクズか。領民のためを思い、国のためを思い、家のためを思い、熱い使命感に燃えて京都に上がった。されど、京都で見たものは戦の地獄じゃ」という言葉がとても印象的でした。
戦国武将は勇猛な印象がありますが中には興元のように挫折する人もいると思います。
「わしはこの世に生まれてきとうはなかった」とまで言っていて悲しくなりました。

元就が杉に「兄上はお心に深い傷を負われておる。我等は兄上をお助けせねばならぬ。今の兄上はお心の傷を治すことが先じゃ」と言います。
私はこれを見て元就の思いやりのある心に胸を打たれました。
これもまた後に中国地方の覇者となる毛利元就の姿につながっていくのだと思います。


少しずつですが元就は後の中国地方の覇者としての片鱗を見せています。
今回初めてぼやく姿が見られたことで戦国時代きっての知将として調略に長けた姿も見たくなりました。
人間味のある面白い描かれ方をしているので元就と周りの人との掛け合いを見るのも楽しみです


各回の感想記事
第一回 妻たちの言い分
第二回 若君ご乱心
第三回 城主失格
第四回 女の器量
第五回 謀略の城
第六回 恋ごころ

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