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「6TEEN」 -再読-

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今回ご紹介するのは「6TEEN」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
『4TEEN』続編ついに刊行!
ぎこちない恋。初めての裏切り。
そして、少しだけリアルさを増してきた未来…。
超高層マンションを見上げる月島の路地で、ぼくたちはこの世界の仕組みを考える。
ダイ、ジュン、ナオト、テツロー ―永遠の青春小説。

-----感想-----
「4TEEN」の続編となります。
「6TEEN」は「4TEEN」の2年後が舞台で、ダイ、ジュン、ナオト、テツローの4人は高校一年生になりました。
今作も東京の月島を舞台に、4人の青春物語が展開されます。

今作も語りはテツロー。
4人の中では最も「普通」な少年です。
物語は以下の10編で構成されています。

おばけ長屋のおばあ
クラインの妖精
ユウナの憂鬱
携帯小説家に出会ったら
メトロガール
ウォーク・イン・ザ・プール
秋の日のベンチ
黒髪の魔女
スイート・セクシー・シックスティーン
16歳の別れ

どの章も最初に意味深な語りがあって、その章で起こることが漠然と示されます。
そして本編に入っていきます。
この構成は「池袋ウエストゲートパーク」のシリーズと同じです。

月島はもんじゃ焼きが有名で、この小説にもよく出てきます。
その中で、「もんじゃ焼きは漢字だと文字焼きと書く」というのは今まで意識したことがなく、新鮮でした。
お金がない時は具が何も入っていない「素もんじゃ」で、文字焼きの名のとおり鉄板に自分たちの名前や好きなアイドルの名前を書いたりして遊びながら食べているとのことです。
ちなみに4人がよく頼むもんじゃ焼きは「明太子もちチーズ」と「カレーコーンのベビースターラーメン入り」で、何度も登場しているのを読んでいたら私も特に「明太子もちチーズ」のほうを食べてみたくなりました

4人は高校生になり、それぞれ別々の道へと進んでいきました。
テツロー(北川哲郎)は隣町の新富町にある新富高校という都立高校へ。
ジュン(内藤潤)は開城学院という東京で一番の進学校へ。
ナオト(岸田直人)は聖ヨハネ高校という私立のお坊ちゃん学校へ。
ダイ(小野大輔)は早朝から昼ごろまで築地の場外市場にある海産物問屋で働き、昼間は帰って仮眠して、夜はテツローと同じ高校の定時制に行っています。

ナオトはウェルナー症候群(早老症)という病気にかかっていて、普通の人の2倍も3倍も早く年をとってしまいます。
「6TEEN」の今作では一段と白髪が増えていました。
体も疲れやすいため、あまり負担をかけないようにストレートで大学まで行ける私立高校に入ったのでした。
ダイは前作で家族と自分の身に色々なことがあり、昼間は働き、夜は定時制高校に行くという道に進みました。
高校は別々になってもやはりこの4人組は仲良しで、よく一緒に集まっています。

「携帯小説家に出会ったら」では、携帯小説についてのテツローの語りが印象的でした。
「ぼくは携帯小説を読んだことがなかった。なんだか、あのちいさな液晶ディスプレイではメールの文章を読むくらいで十分な気がしていたのだ」
とありました。
私もテツローと同じく、あまり携帯小説を読む気にはならないです。
ただし、高校生の頃は”ファッション”を大事にするので、本の小説を読むのは周りから浮いている気がして避けるかも知れず、何となくお手軽で格好良さげな携帯小説を読むのはあるかも知れない、と思いました。

新富町、月島、佃(つくだ)、八丁堀、新川、箱崎町。このあたりの街は、みな細かな運河で結ばれている。
すごく興味を惹く一文でした。
運河で結ばれているこの辺りの街、一度じっくり散策してみたいです

「さて、どうする。月島はとなりだけど、地下鉄にもどる?」
「こんな天気がいいのに、ひと駅分くらいで地下になんか潜れるかよ。歩いて、帰ろうぜ」
これはよく分かります。
私も天気が良い日はたくさん散歩したくなることがありますし^^

月島はもんじゃ焼きで、神保町は本屋。東京は街がものすごく専門化しているから、おもしろい。
これも良いなと思った一文です。
たしかに楽器の街の御茶ノ水などもありますし、専門化している街がありますね。
神保町には何度も足を運んでいるので分かりますが、完全に「本の街」となっています。

「黒髪の魔女」に出てきた以下の言葉も印象に残りました。
ついてないことや悪い運命は、ただ忘れちゃうのが一番いいのだ。いつまでも覚えていて、傷ついているよりはね。それは確かなことである。
私はわりと引きずりやすいタイプなので、いつまでもあれこれ考えて悩むより気にしないようにするのは大事なことだと感じています。
辛いことがあった時、落ち込んでしまうのは仕方ないとして、大事なのはその後いかに気持ちを立て直すかです。
考えても詮無きことは考えないようにして、忘れてしまえればそれが一番良いです。

作品全体を通してよく出てくるキーワードは隅田川、佃大橋、月島、もんじゃ焼きなど。
この作品を読んでいると私も隅田川沿いを歩いてみたくなりますし、佃大橋を歩いてみたくなりますし、月島のもんじゃ焼き屋にも行ってみたくなります。
昔ながらの下町の雰囲気のある街はやはり面白いなと思います


※前回書いた「6TEEN」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

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「光待つ場所へ」

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今回ご紹介するのは「光待つ場所へ」(著:辻村深月)です。

-----内容-----
大学二年の春。
清水あやめには自信があった。
世界を見るには感性という武器がいる。
自分にはそれがある。
最初の課題で描いた燃えるような桜並木っも自分以上に表現できる学生はいないと思っていた。
彼の作品を見るまでは(「しあわせのこみち」)。
文庫書下ろし一編を含む扉の開く瞬間を描いた、五編の短編集。

-----感想-----
この作品はスピンオフとのことです。
物語は以下によって構成されています。

冷たい光の通学路?
しあわせのこみち
アスファルト
チハラトーコの物語
樹氷の街
冷たい光の通学路?

「冷たい校舎の時は止まる」「スロウハイツの神様」「ぼくのメジャースプーン」「名前探しの放課後」「凍りのくじら」からのスピンオフとなっています。
このうち私が読んだことがあるのは「ぼくのメジャースプーン」「凍りのくじら」の二作品です。
ちなみにチハラトーコの物語に赤羽環(たまき)という脚本家が出てくるのですが、この人は「島はぼくらと」にも登場していました。
辻村作品は作品同士が少しずつリンクしていると聞きますが、ほんとにそうだなと思いました。

私が読んでいて一番惹き込まれたのは「しあわせのこみち」でした。
主人公は清水あやめ、T大学文学部二年生。
『造形表現』という科目の初回の説明で、教授から受講条件として「絵画でも写真でも映像でも、塑像(そぞう)でもなんでもいい。作文だって、詩だっていい。世界を表現してみせろ。才能を見せてみろ」と課題が出されます。
清水あやめは大学の桜並木の絵を描き、自分の書いた絵が受講者の中で一番の出来だろうと確信。
しかし、教授から最初に「抜きん出ている作品」として紹介されたのは、法学部の田辺颯也(そうや)のビデオ作品。

そんなバカな。この大学には文学部はあるものの、芸術学部はない。専門的な勉強を積んでいる人間が、私の他にいるとは思えなかった。

清水あやめは随分と動揺していました。
また清水あやめには自惚れたところもあって、
世界を強く見るのには、能力がいる。感性という武器がいる。そしてその武器を持っている人間は選ばれた一握りの人間たちだけだろうと思っていた。
とも語っています。
それでいて、自分に自信を持てていないところもあって、
絵が全てだと思えない。昔からそうだった。美大に行く覚悟がなかったのと同じように、私には何もない。絵画の技術が向上した今も。
とも語っていて、何だかややこしい人だなと思います
自分でもそれが分かっているようで、自分のことを「イタイひと」と評していました。
美大を舞台にしての、同格の相手との戦いならともかく、圧勝だと思っていた舞台での敗戦は思いのほかショックだったようで、その気持ちは何となく分かります。

私は何になりたいのだろう。どこへ行きたいのだろう。
これもよく分かる気持ちです。
自分に自信がなくなったり目標を見失ったりするとこんな気持ちになります。

ただ清水あやめが絵が好きなのは本当で、内藤絵画教室という美大生も通う絵画の教室に通っています。
そこそこ仲が良い高島翔子という都内にある美大に通う二年生と話をしながら、清水あやめは美大についての思いを述懐します。
高校時代、美大に進学するかT大を受験するかで迷った経験のある私にとって、美大というのは覚悟の必要な場所だった。その道で生きていく覚悟がなければ、選ぶことのできない進路。

あと印象的だったのが、田辺颯也との以下の会話です。
「清水さんは?鷹野にちょっと聞いたけど、絵描いてるんだって?」
「はい、一応」
愛想笑いを浮かべながら、自分で無意識につけてしまった「一応」が後から胸にこたえた。

ふいに口をついて出た「一応」という言葉に、自信のなさが現れていると思いました。
ちなみに鷹野博嗣(ひろし)という人と清水あやめは高校の同級生で、辻村深月さんのデビュー作「冷たい校舎の時は止まる」に登場していたようです。

物語の途中からは田辺颯也との会話がメインになるのですが、その中で印象的だったのは以下の言葉でした。
「努力もしないで、何もしないでただ地位だけ欲しがったり、いつか自分が何者かになれると確信したり、その逆で始めてもいないのに諦めてる人たちが世の中にはたくさんいる。
「いつか自分が何者かになれると確信したり」は、10代の頃はよくそんなことを思っていたなと思います。
そして「始めてもいないのに諦めてる」は今でもよくあって、たしかにやってみなければ分からないと思います。
先入観で可能性を閉ざしてしまうのは、ちょっと勿体無いかも知れません。

もうひとつ印象的だったのが以下の言葉です。
「友達って定義にはいろいろあるだろうけど、友達が成功したときにそれを素直に喜べるのが、俺にとっての友達だ」
これはすごく心の深くに染み込んでくる言葉でした。
友達が成功して輝いているのを見ると、やっぱり焦る気持ちがあるのです。
「関係が浅い友人同士ならきっと何でもないことだけど、関係が深くなればなるほど難しい」とも語っていて、なるほどなと思いました。
素直に喜べる人でありたいと、思います。

そしてラストで田辺颯也が清水あやめに語った「最優秀賞、受賞おめでとう」の言葉。
田辺颯也は素直に「おめでとう」と言ってくれました。
自分で自分を天才というほど、ものすごく傲慢でプライドの高い部分のあるこの人のこの言葉は、圧倒的な重みを持っていました。
「素直に喜ぶのは関係が深くなるほど難しい」と言っていた言葉は、この場面へとつながっていきます。


もうひとつ、「樹氷の街」についてもご紹介します。
この作品では「凍りのくじら」に出てきた松永郁也が大活躍します。
同じく「凍りのくじら」で主人公だった芦沢理帆子や、特殊な環境の郁也の家で家政婦をする多恵さんも登場。
「凍りのくじら」と強くリンクしていました。

「樹氷の街」は中学三年生たちの物語。
合唱コンクールに向けて課題曲「大地讃頌(さんしょう)」と自由曲「樹氷の街」の練習をしています。
しかしピアノ伴奏の倉田梢の演奏がなかなか上達せず、仲の悪い女子グループからは不穏な空気が漂っています。
そこで指揮を担当する天木は松永郁也にピアノの伴奏を代わってもらうことを考えます。
松永郁也は著名な指揮者である松永純也の息子で、天才的なピアノの技量を持っています。
そして郁也にピアノを教えてもらおうと倉田梢に提案した時、この人は意地で「いい」と言ってしまっていました。
この意地で拒否してしまう心境、よく分かります。
素直に「それでお願い」と言うのは意外と難しいです。
「課題曲は倉田梢にそのままやってもらうが、自由曲は松永郁也に頼むことにもう決めた」と告げられた時のプライドを粉砕された取り乱しようもまた印象的でした。
この人はもともと課題曲の「大地讃頌」に苦戦しているくらいで、それを遥かに上回る難易度の「樹氷の街」を弾くなど到底無理だったのだから、松永郁也に代わってもらえて良かったはずなのに、心境的にはそうはならないんですよね。
問答無用で自分が降ろされたことにひどくプライドを傷つけられたようで、激怒して涙を流しながら天木のもとを去っていきました。

しかし倉田梢が偉かったのはそこでは終わらなかったことです。
きちんと自分のピアノの現実を受け止め、不貞腐れずに前を向き、松永郁也に課題曲の面倒を見てもらうことを了承しました。
これはまさしく青春物語だなと思います
郁也の成長した姿も見ることが出来たし、すごく良い物語で楽しめました


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「吉野北高校図書委員会」

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今回ご紹介するのは「吉野北高校図書委員会」(著:山本渚)です。

-----内容-----
図書委員の高校2年生・かずら。
気の合う男友達で委員仲間の大地が、可愛い後輩・あゆみとつきあいだしたことから、彼への微妙な想いに気づいてしまった。
だけどこれは恋ではないと、自分の気持ちにふたをする
一方、そんなかずらへの恋心を抱える、同じく委員仲間の藤枝は……。
地方の高校を舞台に、悩み、揺れ動く図書委員たちを描いた、第3回ダ・ヴィンチ文学賞編集長特別賞受賞作。
シリーズ第1巻。

-----感想-----
書店で文庫本を選んでいた時に目についた一冊です。
明日から「靖国神社 みたままつり」が始まり、私は明日行く予定で、今日のうちに読み切れる小説を探していました。
この作品はページ数的にもお手軽に読める小説で、内容紹介の欄を見ても興味を持ったため、読んでみようと思いました。

作品の舞台になっている吉野北高校は、徳島県徳島市にある進学校です。
そこで図書委員会に所属する生徒たちが物語の中心となります。
主人公は川本かずら。
高校二年生で、図書委員会では副委員長を務めています。
委員長は岸本一(ワンちゃん)、もう一人の副委員長に武市大地、書記に藤枝高広で、みんな二年生です。
もう一人二年生には西川行夫というものすごいオタクキャラがいます。
一年生には上森あゆみという子がいて、この子と武市大地は付き合っています。
登場人物たちはみんな大阪弁と博多弁を組み合わせたような言葉を使っていて、これが徳島の言葉なんだなと思いました。
高知県の土佐弁とも少し違う印象を受けました。

ちなみに委員長のワンちゃん(名前が一で、英語だとワンと読むことから、この渾名になったようです)と副委員長の武市大地は特別進学クラスに属しています。
吉野北高校は一学年十四クラスで構成されていて、どの学年も一組と七組が特別進学クラスになっているとのことです。

大地があゆみと付き合い始めたと聞いて、川本かずらはショックを受けました。
大地から「付き合い始めた」と打ち明けられた後、
あのとき、本当に心の奥底から、全力で「よかったなあ」って言ってあげられなかった。必要以上に動揺してしまってあの場面をなんとなく終わらせてしまったことが悲しくなる。
と振り返っていました。
かずらと大地はとても仲良しで息もピッタリ合うのですが、付き合ってはいません。
かずらは大地とあゆみが付き合っていると聞いてから湧いてきている感情が何なのか、自分でもよく分かっていませんでした。
それは嫉妬なのか、大地のことが好きなのか…

藤枝高広はかずらにちょっかいばかり出してきます。
しょっちゅう憎まれ口を叩き、かずらと軽い口喧嘩になることが多いです。
そんな二人が、吉野川の土手で話す場面がありました。
マツヨイグサという黄色い小さな花が咲く土手で、かずらが
「『待てど、くらせど、来ぬ人を、宵待草のやるせなさ』……ってね」
と言う場面が印象的でした。
竹久夢二の『宵待草』という作品で、宵待草はマツヨイグサのことを言っているらしいです。

藤枝はかずらが大地のことを好きなのではと思っていて、この時にそれをズバリ聞いていました。
ただそこでかずらは以外にも否定。
自分の大地への感情は、恋愛の「好き」とは違うのでは、と本人は考えているようでした。
藤枝は憎まれ口ばかり叩いているわりにかずらのことが好きなので、この場面では内心チャンスありと思ったのだろうなと思います。

ちなみにこの作品は4つの章に分かれていて、1つ目がかずらが語りの「宵待ち草」、2つ目が藤枝が語りの「ワームホール」、3つ目がかずらが語りの「初風」、4つ目があゆみが語りの「あおぞら」です。
藤枝の語りになると、時期も6月から10月に進みました。
まず目を惹いたのがワンちゃんと藤枝の出会いで、1年の2学期末までほとんど不登校状態だった藤枝が学校に来るようになったのは、ワンちゃんの存在が大きかったようです。
そしてワンちゃんつながりで図書館に行くようになり、図書委員のみんなと話すのが楽しくなり、毎日学校に来るようになって進級することが出来ました。
藤枝が語りの章では、藤枝の想いがかずらに届くかどうかが最大の注目点でした。

3章の「初風」では、以下の言葉が印象的でした。
時間は勝手に流れていくし、一年後の自分なんて誰にも分からない。けれど、時間は流れていくけれど、変わらないものもきっとある。それを信じられる自分でいたいと思った。
変わらないものは、自分の性格の根源的な部分とか、何かに臨むときの自分の信念とか、そういったものではないかと思います。

4章の「あおぞら」はあゆみの視点での物語りで、あゆみの視点から見たかずらのことなどが書かれています。
時系列は再び6月頃に戻っていました。
かずらは大好きで尊敬する先輩だけれど、自分よりも圧倒的に武市大地との息がピッタリな様子を見ると、複雑な心境になるようです。
恋人の自分より相性が抜群な人を目の当たりにして、胸がざわついていました。

あとこの章では、かずらがあゆみに雨について興味深いことを語っていました。
「雨の日に図書館で本読むの、すごいすき。いつも以上に静かで、でもばたばたって雨の音は聞こえてきて、空気がしっとりしとって」
私は雨自体はあまり好きではありませんが、雨の日に読むなら島本理生さんの「ナラタージュ」のような小説だなと思います。
雨の日に真価を発揮するようなタイプの小説ってあると思います。

そしてこの作品は「シリーズ第1巻」なので、まだ続編があるということです。
面白い作品だったので続編もぜひ読んでみたいと思います


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靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1

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靖国神社みたままつりは毎年7月13日〜16日の4日間に渡って行われます。
今年は日曜から水曜にかけての開催なので、私は日曜日の今日行ってきました。
10時40分くらいに着いたのですが、午前中なのに結構たくさんの人が来ていて驚きました。
時間が経つにつれ人が増えていき、私が帰る14時30分頃にはかなり賑わってきていました
夜になると圧倒的な人混みになり、身動きが取れないほどの賑わいになります。

そんな中、今年も「靖国神社 みたままつり」に寄せられた言の葉や絵画を見てきました。
「懸雪洞(かけぼんぼり」と言って、境内に色々な人の言の葉や絵画などが展示されています。
たくさん紹介していきますので、ぜひ楽しんでみてください
写真は全てクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1 -----


「蒼天の彼方 若き微笑」
俳優・伊藤つかささん。


「みんなの心がひとつになりますように」
歌手・俳優・大場久美子さん。
ハートマークが印象的ですね


「心音」
俳優・的場浩司さん。


「笑顔が笑顔を繋ぐ 愛される事が愛する事を誘う 温かい心の花よ 光り輝け」
女優・西舘さをりさん。
西舘さをりさんは昨年の「靖国神社 みたままつり」のパンフレットの人です。
ご覧になる方は「靖国神社 みたままつり2013 寄せられた言の葉・絵画 その1」のリンクをどうぞ。
今年も「懸ぼんぼり」を奉納してくれて嬉しいです


『東南アジアの国々は「本来我々が戦うべきところを日本が戦ってくれた」と先の大戦を感謝してくれています。』
アナウンサー・鈴木史朗さん。
以前書いた「ASEANの旗」が参考になるかと思います。


「英霊の永訣の朝を思ふ」
女優・烏丸せつこさん。


俳優・石坂浩二さん。
読み方が分からないので、読める方がいましたらよろしくお願いします。


「背負はれ ねんねこから覗いた 九段坂を 何故か覚えてる 来る度にその時の 母親に逢える 気がします。もう75年も前の話だ。」
俳優・伊東四朗さん。


「常緑」
音楽家・つのだ☆ひろさん。


「魂」
漫画家・松本零士さん。
右上のひとしずくの涙が印象的です。


「誠」
玩具コレクター・北原照久さん。
ブリキのおもちゃコレクターの第一人者として世界的に知られているとのことです。


「横たわった兵士たちに雨が降り注ぎ風が吹き抜けた。
そこには何事もなかったように。
季節めぐり花の扉がまた開いたら 君よ舞い散る桜のひとひらに
一掬の涙を託してください。」
脚本家・井沢満さん。


「報恩」
宮城県知事・村井嘉浩さん。


「祖国は甦る 脱私即的の志とともに」
株式会社独立総合研究所代表取締役社長・兼主席研究員・青山繁晴さん。
2674年とあるのは、「皇紀」のことです。


「国の大事 富国強兵」
元航空幕僚長・田母神俊雄さん。
富国強兵と書くと朝日新聞、毎日新聞、中国韓国あたりが軍国主義だ右傾化だと騒ぎそうですが
この場合は、私たちの住む豊かな国を守ってくれているのは一体誰なのかを考えてみると良いかと思います。
兵の弱い国は、例外なく衰退するか滅亡します。


台湾元総統・李登輝さん。
読み方が分かる方がいたらよろしくお願いします。


「六分之侠気 四分之熱」
元内閣総理大臣・小泉純一郎さん。


「忠魂義胆」
崇敬者総代・寺島泰三さん。
忠義を重んじ守る心のことという意味です。


「月の出や 手の鳴る方に 誰もゐず(いず)」
俳人・宮坂静生さん。
昔の、誰かの居た頃に思いを馳せているような句ですね


「雪嶺の 発する光 身を正す」
俳人・松村昌弘さん。


「慎みて 秋の七草 手向け南無 尊き使命 貫きし御英霊(きみ)に」
画家・安並美智子さん。


「花は花は花は咲く いつか生まれる君に 花は花は花は咲く いつか恋する君のために」
画家・茂木美津子さん。


画家・池田正明さん。


「心 みたまに捧ぐ」
声優・カシワクラツトムさん。


画家・鈴木麗子さん。


「私たちは憲法を守る 憲法が私たちを守る」
司会者・愛川欽也さん。
これは憲法が私たちを守れるものだった場合に成り立つ話ですね。
残念ながら今の憲法九条を盾に「こちらには九条がある。侵略はやめなさい」と言っても、中国の尖閣諸島侵略への野望は止まりません。
一刻も早い憲法九条改正を願います。


アヤメの花。
画家・早川春代さん。


画家・米澤和子さん。


画家・山崎堅司さん。


画家・田中紀以子さん。


画家・小島光春さん。


画家・西野和子さん。


「愛」
亀井三千代さん。


画家・市川武弘さん。
すごく力のある絵ですね


「みやしろの しじまのなかに 身をおけば 国を憂いし 英霊のこえ」
特別縁故・西脇美都絵さん。


画家・佐藤緋呂子さん。


水墨画家・松井香村さん。


「美し国 大和」
崇敬者総代・葛西敏之さん。


「総理に感謝」
崇敬者総代・古河潤之助さん。
安倍晋三首相の靖国神社参拝のことです。
この場所に、来てくれたのです。
私もよく参拝してくれたと思っています。


「鎮魂」
崇敬者総代・阿南惟正さん。


天馬。
画家・柏木美保子さん。


画家・酒井友子さん。


「小さな菜園の 野菜たちの香り 楽しむ食卓の 家族団欒」
特別縁故・相沢きよみさん。
何気ない日常で普段は実感がないかも知れませんが、家族で食卓を囲んで団欒できるのはすごくありがたいことです。


「凪のしらべ 弟橘媛命(おとたちばなひめのみこと)」
音楽家・小宮佐地子さん。


画家・秋山巌さん。


「富士山 世界遺産」
デザイナー・鈴木三知子さん。


「今日は 赤チャン 私がママよ」
画家・鈴木利男さん。
この平和を、守り抜きたいですね

というわけで、「その1」はここまでで、「その2」へと続きます。
「その2」もどうぞお楽しみに


※フォトギャラリー館を見る方はこちらをどうぞ。

※横浜別館はこちらをどうぞ。

※3号館はこちらをどうぞ。

靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2

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※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

というわけで、「寄せられた言の葉・絵画」のその2です。
昨年と同じくその2では絵画が多く登場します。
非常に流麗で印象的なものが多いのでじっくり楽しんでみてください
写真は全てクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その2 -----


アヤメの花。
画家・保井梅香さん。


どこかの湾からの眺めですね。
画家・木本重利さん。


たくさんのスズメたち。
画家・井上真澄さん。


朝顔。
画家・鎌田万里子さん。


「四季のある 祖国に生まれ 若柴かせ」
飯島タイ子さん。
「春子の句」とあるので、俳人・飯島晴子さんの句かも知れません。


画家・一條雅香さん。


黒田サチ子さん。


「東京だヨ おっ母さん
やさしかった兄さんが
田舎の話を聞きたいと
桜の下でさぞかし待つだろおっ母さん
あれがあれが九段坂
逢ったら泣くでしょ兄さんも」
古茂田杏子さん。


藤の花と小鳥。
吉田公子さん。


アジサイ。
田山多美代さん。


風にそよぐ竹林。
画家・畑佐祝融さん。


「名にしおわば いざ言とはん みやこ鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」
特別縁故・青木寛子さん。
伊勢物語にて在原業平が詠んだ和歌です。


歯科医師・島本和則さん。


富士山と桜
画家・酒井俊幸さん。


飛び立つカモメ。
画家・鈴木義明さん。


シャルトルのノートルダム大聖堂。
画家・服部正子さん。


特別縁故・一杉昭夫さん。


「新生日本  瓊矛(ぬほこ)もて 国生みはげむ これの世を 護りたまへよ 杜(もり)の神々」
戦友・柳澤喜三郎さん。
瓊矛とは日本神話において伊弉諾(イザナギ)と伊弉冉(イザナミ)の二神が国生みに用いたという玉で飾った矛(あまのさかほこ)です。


『謹みて「安らかにおねむり下さい」とお祈り申し上げます。』
画家・阿部風木子さん。


「負けじ魂」
書家・牧野真治さん。


「美しいものは 永遠のよろこび」
画家・柳瀬弘子さん。


靖国神社の能楽堂。
画家・後藤真由美さん。


枝垂桜と鶴。
画家・柴田貢代さん。
すごい美しさです


「経世済民(けいせいさいみん)」
経済評論家・渡邉哲也さん。
世の中をよく治めて人々を苦しみから救うという意味です。


画家・阿部毬子さん。


画家・高木多美子さん。


画家・坂口芳秋さん。


「北国晩冬日本海 潮風暖炉之夕暮れ」
画家・一杉早苗さん。


画家・永江一博さん。


画家・水上玲さん。


画家・小濱綸津さん。


「我が故郷の大分県中津城」
画家・原田重穂さん。


「特攻の 血涙凝りし ハイビスカス」
画家・青木孝さん。
この人達の奮戦がなかったら、今頃日本という国は植民地になって消滅していたかも知れません。
靖国神社でゆっくり休んで、そして毎年30万人が訪れる「みたままつり」では祭りの華やぎを大いに楽しんでほしいと思います。


画家・後藤芳世さん。


画家・産形美智子さん。


「しろかねも 金(こがね)も玉も何にせむ まされるたから 子に及(し)かめやも」
画家・塩澤烈子さん。
万葉集の山上憶良より。


「人生は 美て(で)あり 愛て(で)あり」
崇敬奉賛会会長・扇千景さん。
読める方がいましたらご教授よろしくお願いします。


「歩くことかなわず 帰りし傷兵らを 母宮(ははみや)と庭々 まねきし日は 遠し」
元皇太后官女官長・北白川祥子さん。


「(北白川宮)永久王 御詠
すめらきの 赤子(せきし)ひきいる 長として 駒をも吾子(あこ)と いつくしみなん」
崇敬者総代・島津肇子さん。



国際オリンピック応援団長・山田直稔さん。


漫画家・小松直之さん。


「生きて生きて 泣いて笑って 役者道」
俳優・浜木綿子さん。


「一本刀土俵入り 
しがねえ姿の 横綱の 土俵入りでござんす」
俳優・浅香光代さん。
長谷川伸の戯曲『一本刀土俵入』から来ているのかなと思います。


音楽家・森田公一さん。


「君や知る 腹の中にて 玉の汗 明日は前足 末は花形」
講談師・室井琴調さん。


「生」
プロレスラー・小橋建太さん。


「忍」
プロレスラー・天龍源一郎さん。


「感謝」
大相撲解説者・舞の海秀平さん。
靖国神社に眠る英霊の方々が日本のために戦ってくれたからこそ、現在の日本があります。
偉大な先人達に、私も感謝します。

というわけで、「その3」へ続きます。
「その3」も楽しみにしていてください

※崩し字で判読が難しいものについては、以下の方々にご教授頂きました。
ありがとうございます。
5枚目、12枚目、36枚目、37枚目、39枚目 ツイッターアカウント「@com_chan」さん。
18枚目 ツイッターアカウント「@s_leaf」さん。


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靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3

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※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
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「寄せられた言の葉・絵画」の「その3」では序盤から中盤にかけて歌手・ミュージシャンなど音楽家の方々の作品が多数登場。
今年は例年以上に音楽家の方々からメッセージを感じる作品が寄せられていたように思います。
色々な作品がありますので、楽しんでみてください。
写真はすべてクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3 -----


「夢」
大相撲 横綱・白鵬関。


「生きることに必死」
大相撲・遠藤関。


「静」
歌手・ペギー葉山さん。


「俺の人生(みち)」
歌手・畠山みどりさん。


たんぽぽ。
歌手・菅原都々子さん。


「よろこべば よろこびごとが よろこんで よろこびあつめて よろこびにくる」
歌手 こまどり姉妹・長内敏子さん。


「喜びの毎日をすごしたい
花や草を見ても ありがとうと言いたいです」
歌手 こまどり姉妹・長内栄子さん。


「静恩」
歌手・あべ静江さん。
力のある字ですね。


「一期一会」
歌手・青山和子さん。


「謹んで英霊に捧ぐ 平和への願い」
歌手 二代目東光軒宝月・歌川二三子さん。


「やすらけ
すめ大神の日のもとに
くもが重なる
にほいめでたく」
作家・歌手・合田道人さん。
それぞれの頭の文字をつなぐと「やすくに」になります。


「縁」
歌手・青山るみさん。


歌手・岩本公水さん。
「20」の意味が気になるところです。


「愛に生る」
歌手・佳山明生さん。


「はまなすの花赤き オホーツクの磯にして
時は夏雲白く 思う事遥かなり」
歌手・安藤まり子さん。


「昔から誠というこの言葉好きだな〜」
歌手・妻吹俊哉さん。


「民謡はふるさとの応援歌」
民謡・原田直之さん。


「愛する者を守りぬくため 僕らは命を投げ出せるだろうか
この手に握る平和という名の剣をかざして戦うのだろうか
生まれくる前の我 それは今ここに眠る英霊か
真白き鳩が舞い降りるたび さわぐ梢の間真昼の月
迷える小径たどりついた地で 遠い兄のような声を聞く
ああ君我の代わり生きよと
さまよう心呼び戻した地に 優しい姉のような声を聞く
ああ君 死にたもうことなかれと」
歌手・宝野アリカさん。


「自由でいる不安 自由でいる覚悟 その苦しみが 誰かを守る」
ミュージシャン・キリトさん。
Angeloというロックバンドグループのリーダー兼ヴォーカルで、毎年「懸雪洞(かけぼんぼり」を奉納してくれています。
女性ファンが多いようで、毎年このぼんぼりの前では熱心に見入る女性ファンを見かけます。


「平和」
ミュージシャン・ガラさん。


「今があることに感謝」
ミュージシャン AK LIVE・市川博樹さん。
昨年の「靖国神社 みたままつり2013 寄せられた言の葉・絵画 その1」のラストに登場する写真を思い出す言葉でした。


「笑顔は種 未来へのバネ!」
ミュージシャン AK LIVE・KOUSAKUさん。


「今という 時を越えた 恋文を ありがとう」
歌手・sayaさん。


「夢」
俳人・山名愛三さん。


画家・ツバキアンナさん。


「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵。
画家・矢形嵐酔さん。


画家・網本幸子さん。


梅の花とウグイス。
画家・杉本績さん。


「ソ連抑留 御霊鎮魂」
特別縁故・山田秀三さん。
富山県慰霊碑奉賛会会長とのことです。


戦艦。
画家・菅野泰紀さん。


ステンドグラス作家・飯出佐恵さん。


「ひとつ拾えば ひとつだけきれいになる」
実業家・鍵山秀三郎さん。


富士山
画家・小倉睦子さん。


颯爽と走る馬
画家・小倉茂山人さん。


「ガダルカナル戦跡に詣ず
船上よりいくさの島をかえりみつ
み魂鎮めの法螺吹きならば」
小田玉瑛さん。


画家・河野未美さん。


アジサイ。
画家・桜井圭子さん。


「夏は来ぬ」
画家・土屋淑子さん。


アヤメの花。
画家・野瀬香葉さん。


「靖国の 桜となりし わが友と 会わむと云いつ 父の逝く」
書家・平井俊子さん。


特別縁故・桑原美智子さん。
読める方がいましたらご教授よろしくお願いします。


毎年こけしの絵画を奉納している人です。
画家・荒井美代子さん。


彩り豊かなバラの花
画家・小林健一さん。

というわけで、「その4」へ続きます。
「その4」はかなりインパクトのある作品がいくつも登場するので楽しみにしていてください


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靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4

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※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その1」をご覧になる方はこちらをどうぞ。
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※「靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その3」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

みたままつり2014の「寄せられた言の葉・絵画」シリーズの最終回となります。
「その4」では絵画も言の葉も印象的なものが沢山出てきますので、最後までぜひ楽しんでみてください
写真は全てクリックで拡大されます。


----- 靖国神社 みたままつり2014 寄せられた言の葉・絵画 その4 -----


その4は拝殿に近いこの辺りの作品がメインとなります。


地球と太陽系の星と、拡大して見ると「国際会議ステーション」と書いてあります。
画家・市川章三さん。


金魚とおたまじゃくしとカエル
グラフィックデザイナー・平松都代子さん。


ゆりの花。
画家・中村威久水さん。



彫刻家・石黒光二さん。


アヤメの花。
画家・井上明敏さん。


画家・岡正三さん。


富士山を望む風景
画家・高橋由さん。


群馬県の赤城覚満淵(かくまんふち)。
画家・阿部晶子さん。


森を歩く鹿
画家・浅野とし子さん。


「裏もなし 表もなし ただこころからの おもてなし」
書家・荒牧菁峰さん。


靖国の社にねむり給う 英雄の霊に捧ぐる歌
   歌
国のため 何にぞ惜まん 若櫻
涙皇しく 散り行くものかな

特別縁故・荒井慧(けい)さん。
84歳とありますので、まだまだ長生きして「懸雪洞(かけぼんぼり」も奉納してほしいなと思います。


染織家・石田万介さん。


画家・新澤淑子さん。


「忠魂不滅」
書家・清水正尚さん。


花火
画家・山田三耀さん。


画家・岡田和子さん。


「平和」
書家・高砂京子さん。
和を○で表しています。


画家・鶴岡山路さん。


画家・彦坂美保子さん。


弘前ねぷた絵師・津軽錦絵師・三浦呑龍さん。


染織作家・森岡功さん。


「感謝 今ここにある幸せは あなたたち英霊のおかげです」 
”英霊七福人”
画家・杉浦正さん。
今こうして日本という国があるのは、先の大戦で日本のために戦ってくれた英霊の方々のおかげです。


染織作家・木戸源生さん。


「繁栄の礎は先人への感謝と敬意にあり」
作家・北康利さん。
世界中どこの国でも、当たり前のことです。
中国韓国及び日本のテレビ局・新聞社の反日圧力に負けず日本の首相として靖国神社に参拝し、先人への感謝を示した安倍晋三首相を私は偉いと思います。


「大慈大愛」
イラストレーター・菅ナオコさん。


「氣愛」
お笑いタレント・よしえつねおさん。


「万民太平の幸」
女優・葛城奈海さん。


「強く生きる」
プロレスラー・里村明衣子さん。


「軍神祭る社に勇み駒」
講談師・一龍斎貞花さん。


湯沢七夕絵灯篭絵師・石川巳津子さん。



画家・南雲正井さん。


「天壌無窮」
重要無形文化財保持者・陶芸家・井上萬二さん。
天地とともに永遠に続くという意味です。


「大義悠久」
陶芸家・南雲龍さん。


「忠節」
特別縁故・滝沢幸助さん。
ツイッターの「@com_chan」さんに読み方をご教授頂きました。ありがとうございます。


画家・如月爽人さん。
夜空へと舞い上がっていく光の粒が神秘的です


「四方の海 みなはらからと 思ふ世に など波風の たちさわぐらむ」
漫画家・畠奈津子さん。


「忠恕」
書家・松川玉堂さん。
自分の良心に忠実であることと、他人に対する思いやりが深いことという意味です。


画家・小林妙彩さん。


「大和のこころ とこしへに」
外交・安全保障研究家・鈴木邦子さん。


鶴川流花押宗家・望月鶴川さん。


江戸凧絵師・岸田哲弥さん。


「天天向上 花紅 柳緑」
染織家・中村經子さん。


「やっぱり私も 日本人で良かった」
皇室評論家・高清水有子さん。
私も、日本人で良かったと思います。
四季折々の美しい、良き国に生まれました


「夜桜能」
宝生流能楽師・田崎隆三さん。


「外圧に 屈するなかれ わが桜 気高く咲きて 英知促す」
工学博士・佐藤準一さん。


「出征の 兵士を送りし 日の遠く 無人の駅に 風の声聴く」
神職・宮崎義敬さん。


イラストレーター・かやなるみさん。


「ゆく川の流れの如く あるがままに生きる
滝に落ち岩に砕け 汚水によごされても
太陽で浄めていただく
合流してやがて大河となり
多くの使命を果し 天に還る」
特別縁故・鮫島純子さん。


「烈風と 怒涛なぎたる 南洋は 海空もやして 英霊しずめぬ」
ニュージーランド治安判事・神谷岱劭(たかよし)さん。


「ひたすらに 晴れきたりけり 海の面に 鳥ただひとつ とほくかがやく
  硫黄島にて 折口春洋歌」
元仙台市長・梅原克彦さん。


画家・芝岡聡史さん。


「英霊の皆様、あの戦争で私達を護って下さってありがとうございます。」

今から13年前、ミャンマーの遺骨収集(収容)に行ったときのことです。
そこには、インパール作戦で戦った元兵士のご年輩の男性がお二人参加されていました。
ある日、戦友が沢山沈んだというイラワディ川に行ったとき、お二人が戦争当時の心境を話して下さいました。
「私は本当は戦争に行くまでは死ぬことが嫌だった。でもここビルマで
とうとう銃撃戦になって敵さんの弾丸が私の頬をかすめたんだ。
その時急に、私の背中の後ろに両親や祖父母や全ての日本人がいるように感じたんだ。
ここで自分が敵を食い止めて、皆を護るために命を落とすのであれば、それはとても幸せな死に方だと思ったんだ。
不思議だなあ。あんなに死ぬことが怖っかったんになあ」と。
もう一人の方はそれにこたえ、
「ほんまやったなあ。わしらはみんなそんな気持ちで戦っとったなあ。
日本人を護れるちゅうことが、あんときのわしらの希望やったし、喜びになっとったなあ」と仰いました。
私は、今ご存命の兵士の方々、そして戦死された英霊の皆様がそのような気持ちで戦われていたことを初めて知り、
涙が止まりませんでした。
私達の命を護って下さった皆様にずっと感謝していきたいです。

ジャーナリスト・佐波優子さん。


というわけで、今年の靖国神社みたままつりの「寄せられた言の葉・絵画」シリーズ、これにて終了となります。
4回に渡ってお付き合い頂き、ありがとうございました。
今年も沢山の良き言の葉や絵画に巡り会うことができました。
もし来年も機会があればぜひ「みたままつり」に行きたいと思います


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「プラネタリウムのあとで」

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今回ご紹介するのは「プラネタリウムのあとで」(著:梨屋アリエ)です。

-----内容-----
友人の眞姫に誘われて、美香萌は同級生の川田歩と眞姫の兄の4人で鉱物採集にいく。
心の中で小石を作ってしまう秘密の体質を持っている美香萌は、石に詳しい川田のことが少しずつ気になっていく。
ある時、眞姫から川田が好きだと聞かされて―(「笑う石姫」)。
他にも別世界へ誘う3作品を収録した、美しくも切ない珠玉の短編集。

-----感想-----
物語は以下の四編で構成されています。

第一話 笑う石姫
第二話 地球少女
第三話 痩せても美しくなるとは限らない
第四話 好き。とは違う、好き

どの作品も主人公は中学三年生。
この短編集は「プラネタリウム」という作品の続編に当たるらしく、たしかに前作で何かがあったんだろうなと思われる箇所が何箇所かありました。
それでもいきなりこの作品を読んでも比較的スムーズに読むことが出来ました。
四つの短編いずれもファンタジー要素が含まれているので、好みは分かれるかと思います。
私的には可もなく不可もなくという感じでした。

私が読んだ中では「笑う石姫」が一番面白かったので、それについてご紹介します。
主人公は岩舟美香萌(みかも)。
一番の友人ではないものの最近仲良くなったという葛生眞姫(くずうまひめ)。
そして眞姫が想いを寄せる川田歩。
この三人が物語の中心にいます。

冒頭で美香萌、眞姫、歩、眞姫の兄の四人で、埼玉県秩父市の大滝というところに鉱物採集に行きました
眞姫の兄が歩の家庭教師をしていて、今度二人で鉱物採集に行くということになり、眞姫も行きたがって、美香萌を誘って一緒について行くことになったのでした。
その鉱物採集に出かけた時の眞姫のやり方が、読んでいてすごくムカつきました。

眞姫は美香萌に「山に行くなら長袖長ズボンが基本だよ」と助言をしていました。
そうしていざ当日、美香萌がアドバイスを守って長袖長ズボンで来てみると、当の眞姫は小さな半袖Tシャツとショートパンツという格好で登場。
人には長袖長ズボンを薦めておきながら自分はラフで洒落た感じに決めてくるというこのやり方、美香萌は理由が分からなかったようですが、私は読んでいてすぐにピンときました。
川田歩の気を引きたいのです。
もう一人がいかにも山歩きな地味な格好で、それに対して自分がお洒落で可愛い格好なら気を引けるという計算が働いたのだと思いますが、このやり方は最悪だなと思います
「君に届け」のくるみちゃんが思い浮かぶような計算高き性悪女ぶりでした。
そして「君に届け」がそうだったように、この手の策略を巡らせる人の恋愛は大抵成就しないもので、川田歩は眞姫には興味なしのようでした。
むしろ興味があるのは美香萌のほうで、この後日の川田歩と美香萌のやりとりから、歩が少なからず美香萌に好意を持っていることが分かりました。
美香萌のほうも歩に興味を持ち始めていて、二人が付き合い出すのは時間の問題のように見えました。

眞姫もそれに気付いていて、そして何とかして二人が付き合うのを阻止しようと、策略を巡らせます。
自分が振り向いてもらえないからと、川田歩の意中の人を持ち前の計算高さでぶっ潰そうとするのは、心が醜すぎやしないかと思います。
ついでに指摘すると「逆恨み」でもあります。

ただ中学三年生の頃となると、こういうのはよくあるかも知れないなと思います。
よくも悪くも貪欲に突っ走る時期で、これもまた青春の1ページではあります。
願わくば眞姫にはフォースの暗黒面にばかり頼らないで、もう少し真っ当なやり方で進んでいけるようになってほしいと思いました。


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靖国神社 みたままつり2014 後記

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私が今年の「靖国神社 みたままつり」に行ったのは、13日の午前中でした。
初日の早い時間帯ということもあり空いているかなと思ったのですが、意外にも結構人が来ていました。
日曜日ということで早い時間帯から足を運ぶ人が多かったのだと思います。


みたままつりは「光の祭典」の呼び名を持つくらいで、メインは夜となります。
昼間のうちに来たのは、空いているうちに懸雪洞(かけぼんぼり)を見たかったからです。


境内にずらーっと並ぶ懸雪洞。
夜はこの懸雪洞もライトアップされます。


こちらは能楽堂での奉納古武道。
迫力のある打ち合いでした。


歩いていて、今年も若い人の姿が多いことが印象的でした。
私が帰った14時30分頃にはかなり人も増えていたのですが、中学生や高校生のグループも多数見かけました。
やはりお祭りは若い人が沢山いたほうが活気が出て良いなと思います^^
靖国神社に眠る英霊の方々も、お祭りの華やぎを楽しんでくれたのではないかと思います。


宮城縣護国神社から奉納された七夕飾り。

ツイッターでは「若い人達は祭りの意味を分かっているのか。ただ騒いでいるだけじゃないのか」という意見を見かけたりもしましたが。。。
私は若いうちはそんなに考えていなくても問題はないと思います。
この靖国神社に来て縁日を歩くことが、祭りの華やぎとなり、自然と「みたま」への慰霊となっています。
そして歩いていると自然と何かを感じさせてくれる神聖さが、ここにはあります。


夏祭りらしく浴衣でも着て、友達と縁日を歩いて、そして良かったらぜひ来年も来てほしいなと思います。
この献灯された大量の提灯の意味にも、今まで知らなかったとしても縁日を歩いているうちに気付くかも知れませんし、知っている友達に教えてもらえるかも知れませんし、後で祭りのことを調べたりした時に気付くかも知れません。
そうやって脈々と受け継がれていくものだと、私は思います。


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「チア男子!!」

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今回ご紹介するのは「チア男子!!」(著:浅井リョウ)です。

-----内容-----
柔道の道場主の長男・晴希は大学1年生。
姉や幼馴染の一馬と共に、幼い頃から柔道に打ち込んできた。
しかし、無敗の姉と比べて自分の限界を察していた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部。
同じころ、一馬もまた柔道をやめる。
一馬はある理由から、大学チアリーディング界初の男子のみのチーム結成を決意したのだ。
それぞれに事情を抱える超個性的なメンバーが集まり、チームは学園祭での初舞台、さらには全国選手権を目指すが…。

-----感想-----
浅井リョウさんの作品を読むのは「桐島、部活やめるってよ」以来2冊目となります。
ネットのレビューで『三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を楽しめた人はこの作品も楽しめるはず』とあって、興味を持ったので読んでみることにしました。

主人公は坂東晴希、命志院大学に入学して三ヶ月の大学一年生です。
最初、晴希は柔道部で活動していました。
しかしエースとして勝ちまくる姉の春子に比べ晴希はあまり強くなく、本人も自分は姉のようにはなれないことを自覚していました。
しかし晴希は「応援」では誰よりも熱く、いつも立ち上がって応援してしまい、他のメンバーに座らされるくらい熱くなります。
この熱い応援ぶりがチアリーディングへと繋がっていきました。

チアリーディングと聞くと、大抵の人は女子を思い浮かべると思います。
チアガールとも言いますし。
しかしこの作品では男子のみによるチアリーディングという、かなり珍しいものを題材にしています。
作者の浅井リョウさんが当時通っていた早稲田大学に実在する男子チアリーディング・チーム「SHOCKERS」に取材して、物語を作っていったようです。

肩を怪我していた晴希は、それを機に柔道を辞めることを決意します。
坂東道場という、命志院大学の練習場にもなっている道場の跡取り息子で、そのコネでスポーツ推薦枠で大学に入っていた晴希。
柔道を辞めることに、むなしい心境になっているようでした。
また晴希が柔道を辞めることにショックを受けた姉の晴子との関係もギクシャクし気まずくなってしまいました。
その頃時を同じくして、晴希の幼馴染の橋本一馬も柔道部を辞めることを決意。
ずっと辞めるタイミングを図っていたらしく、晴希が辞める今、一緒に辞めることにしました。
そして一馬は春希と新たに始めたいことがあって、それがチアリーディングでした。
「一発おもしろいことしようぜ」
昔からの、一馬が晴希と何かを始める時の誘い文句です。

メンバーも二人のほかに溝口渉、遠野浩司(トン)、総一郎(イチロー)、弦、徳川翔と、一馬が最初の目標としていた7人になります。
この7人で学園祭に出てそこから羽ばたいていこうとなり、張り切って練習していきます。

チアリーダーとは、観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のこと。そして、そのために自らの努力を惜しまない人のこと。
これはすごく良い言葉でした
素晴らしい競技、そして素晴らしい存在だなと思いました
作中にほぼ同じ言葉が何度か出てきました。

ちなみに徳川翔はチアリーディングの経験者であり、相当な技量を持っています。
しかしそんな翔にも悩みがあります。
登場人物7人全員が何らかの悩みを持っていて、一人ずつ心の悩みを綴る形で物語が進んでいきました。
一馬は自身の中にある葛藤も、晴希の背負っている姉への罪悪感も、溝口が名言で隠している本音も、トンの自分に自信がなさすぎるところも、翔が誰にも言えないで抱えてることも、色々なものを壊したいと考えていて、そこからチーム名は「BREAKERS」になりました。

その「BREAKERS」が学園祭でそれなりの成功を収めて、物語は新たな局面を迎えます。
「BREAKERS」のチアリーディングを見て自分もやりたいという人達が集まり、チームは7人から16人に。
さらには翔の過去を知る高城(たかぎ)さんという女の人が「BREAKERS」の専属コーチになります。
そして1月30、31日の神奈川予選から3月27、28日に千葉県の幕張メッセで行われるチアリーディング全国選手権への出場を目指すことになります。
もともと高城さんは「DREAMS」という晴希達と同じ大学にある全国屈指の強豪チアリーディングチームのOGで、コーチの経験もあり、腕は確かです。
スパルタ指導のもと、全国大会を目指すというバリバリの青春スポーツ物語になりました
最近青春小説を読みたい心境の私にはピッタリな作品でした^^

翔の過去の話で、8月末に行われる全国高校チアリーディング選手権、通称「サマーカップ」というのが出てきました。
このサマーカップが行われるのは国立代々木競技場の体育館で、私は毎年チアリーダー達の姿を見かけています。
同じ時期に原宿では「スーパーよさこい」があって、それを見に行くと自動的に全国大会に来ているチアリーダー達の姿も見かけるというわけです。
何だかこの小説を読んでいたら私も代々木体育館で行われるチアリーディング全国大会を見てみたいものだなと思いました^^
そう思わせてくれる楽しさがこの作品にはありました。
特にラストが圧巻で、あれを読んでいたら2分30秒間の躍動をぜひ生で見てみたいなと思いました
人は苦悩を突き抜けて歓喜を勝ち得る。
色々な偉人の名言を言うのが好きな溝口の、本人が最も気に入っているこの言葉。
まさにこの言葉のようなラストでした。

チアとは、戦うスポーツではない。世界でたったひとつだけ、人との関わりの中で生まれた競技であり、誰かを応援するという姿勢が評価されるスポーツだ。
これもまた、すごく良い言葉でした。
誰かを応援する姿勢が評価されるスポーツ、素晴らしいなと思います


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「予言村の転校生」

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今回ご紹介するのは「予言村の転校生」(著:堀川アサコ)です。

-----内容-----
父・育雄が故郷の村長に当選し、中学二年生の奈央はこよみ村に移り住む。
村には秘密の書「予言暦」があるという。
元アイドルの溝江アンナとその息子・麒麟、松浦、父の政敵・十文字など個性的な村民と共に奈央は様々な不思議な体験をする。
村の四季を背景に、ほんのり怖いけれど癒される青春ファンタジー。

-----感想-----
「幻想郵便局」「幻想映画館」「幻想日記店」の幻想シリーズでお馴染みの堀川アサコさん。
先日書店で本を眺めていたらこの作品が平積みされているのが目に留まり、内容紹介を見たら面白そうだったので読んでみることにしました。

主人公は中学二年生の湯木奈央。
冒頭、父の育雄が突如としてこよみ村の村長選挙に立候補すると言い出し、湯木家は騒ぎになっていました。
奈央たちはこよみ村の隣にある竜胆(りんどう)市という市に住んでいて、父の育雄は竜胆市の市役所市民課に務めています。
しかし選挙に立候補するとなると市役所も辞めなければならず、家庭生活が崩壊しかねないため母の多喜子は猛反対しています。

湯木家のルーツはこよみ村にあり、育雄の父(奈央の祖父)の湯木勘助はこよみ村の前村長、さらにはその父も、またその父も、村長あるいは有力者としてこよみ村に君臨してきたとのことです。
前村長の湯木勘助が急死してしまったのですが、自身の死期を悟っていた勘助は遺言状を書いていて、自分が死んだら育雄が後を継ぐようにと書かれていました。
育雄の主張には妙なところがあって、自身が村長になるのは”もう決まっていること”と言っています。
選挙なので対立候補に勝たなくてはならないのですが、もう決まっているとは一体…

そこに出てくるのが、こよみ村の伝説である「予言暦」。
昔からこよみ村では日照りも干ばつも、事件が起こることも事故が起こることも、全部が予言されていて、みんなその予言のとおりに生きているという伝説があります。
村の行政までがその予言によって運営されていて、それは昔から「予言暦」と云い習わされています。
どうやらその予言暦に育雄が次期村長になることが記されているらしく、それで育雄は”もう決まっていること”と言っているようなのです。
実際に育雄は、十文字丈太郎というバリバリの政治手腕を持つ強敵に勝ち、見事村長に当選してしまいました。
ちなみに「予言暦」については、大多数の者はそれがどんなものなのか、またどこにあるのかさえ知らず、それを見ることが出来るのは村の中でもほんのわずかな限られた人しかいないようです。

育雄が村長に当選したため、育雄と奈央はこよみ村に移り住みました。
母の多喜子は怒りが収まらなかったため最初は意地を張って竜胆市にある家に一人で残っていました。
奈央も当初はこよみ村に住む気はなかったのですが、育雄の政敵の十文字丈太郎とある賭けをしていて、その結果育雄についてこよみ村に行くことになりました。

こよみ村には古い因習があって、その一つになる制度があります。
この村での村八分は村中からのけ者にされる村八分とは違って、「頼れる人」「生きたお地蔵さん」のような意味を持っていて、村の困りごとを助ける人間として頼りにされています。
その村八分を務めるのが松浦という青年で、育雄の選挙戦の選挙参謀も務めました。
松浦も「湯木さんは当選します。これは、決まっていることですから」と言っていて、この人も予言暦に育雄が次期村長と記されていることを知っていました。

古い因習と聞くと、私は三浦しをんさんの「白いへび眠る島」が思い浮かびます。
こよみ村はすごく閉鎖的なところがあって、よそ者が「予言暦」に代表されるような、村の核心に触れるものを嗅ぎ回るようなことは許しません。
改革派と呼ばれる十文字丈太郎は
「こよみ村には、むかしから、無知蒙昧(もうまい)なやからを煽動する、良からぬ因習がある。わたしは、それを取り払うつもりでいるのだ」
と言っていました。
十文字丈太郎は予言暦で何もかも決めてしまう現状は嫌なようです。

この作品は堀川アサコさんの作品らしく、ミステリー、ホラー、ファンタジーが融合しています。
今作ではそこに政治的な要素も融合していました。
ファンタジーはあからさまな空想世界ではなく、背筋がひやりとするような、ホラーが入り混じったちょっと怖い雰囲気です。
森見登美彦さんの「宵山万華鏡」の中の「宵山姉妹」という話のように、気が付いたらあの世に連れて行かれそうになっていたのと似ています。
奈央はこよみ村に来てかなり怖い体験をするのですが、めげずにこよみ村に住む溝江麒麟(きりん)、竜胆市での友達・静花とともにこよみ村の謎に挑んでいきます。
予言暦についても、最後はついにその在り処が分かるのですが、そこに記されていた恐るべき予言を目の当たりにし、物語は一気に怒涛のクライマックスへと向かいます。

解説に「堀川さんの文章は読みやすい」とあったのですが、これは私もそう思いました。
サクサク読める文章で、読んでいて途中からかなりのハイスピードで読んでいくことが出来ました。
しかもそれでいて内容は薄くなく、ミステリー、ホラー、ファンタジーが融合した面白い作品世界を見せてくれます。
すごく良い作家さんだと思うので、この先にも期待しています


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「トリガール!」

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今回ご紹介するのは「トリガール!」(著:中村航)です。

-----内容-----
「きっと世界で一番、わたしは飛びたいと願っている」
ひょんなことから人力飛行機サークルに入部した大学1年生・ゆきな。
エンジョイ&ラブリィな学生生活を送るはずが、いつしかパイロットとして鳥人間コンテストの出場をめざすことに。
個性豊かな仲間と過ごす日々には、たった1度のフライトにつながる、かけがえのない青春が詰まっていた。
年に1度の大会で、ゆきなが見る景色とは―。
恋愛小説の旗手が贈る、傑作青春小説。

-----感想-----
鳥人間コンテストにすべてを捧げた大学生の輝かしい日々を描く、”空飛ぶ”青春小説。
文庫本の帯に書かれていたこの言葉と、爽やかな表紙に好印象を持ち、読んでみたこの作品。
期待していた以上の、かなりの面白さでした

主人公は鳥山ゆきな。
一年浪人して、女子では珍しく工業大学の機械工学科に入学しました。
ゆきなは同じく機械工学科に入った和美とともに、人力飛行機サークル「T.S.L(チーム・スカイハイ・ラリアット)」の勧誘イベントに参加。
そこでものすごい熱意の勧誘を受け、最初からノリノリだった和美とともに、ゆきなは成り行きで「T.S.L」に入部することになりました。

ゆきなを熱烈に勧誘したのは高橋圭という二年生で(ゆきなは一年浪人しているため、年齢は同じです)、「T.S.L」では実際に人力飛行機に乗るパイロットをやっています。
「T.S.L」にはプロペラ班、翼班、フェアリング班、電装班、フレーム及び駆動システム班、庶務班、パイロット班と、色々な班があります。
人数も100人くらい居るものすごい大所帯のサークルです。
一つの人力飛行機を作るために一年がかりでこんなに大勢の力を結集させているというのは読んでいて驚きでした。
8月1日に滋賀県彦根市の琵琶湖で行われる「鳥人間コンテスト」を目指すにはそれくらい大規模な準備が必要ということを意味しています。

ゆきなは当初エンジョイでラブリィなキャンパスライフを送るつもりだったのですが、圭に勧められてトレーニングを始め、いつの間にか本気でパイロットになろうとしていました。
実際の人力飛行機では足でペダルを漕いで飛ぶので、来る日も来る日も、自転車を漕いだりトレーニングルームでエアロバイクを漕いだりして体力強化、脚力強化に努めていました。
ちなみに、「T.S.L」の人力飛行機は「二人乗り」を伝統としています。
重量のこともあり普通は一人乗りにするらしく、二人乗りの人力飛行機はかなり珍しいとのことです。

パイロット班には圭とゆきなの他にもう一人居て、それが坂場大志という男です。
その人から強靭な脚力と体力が要求されるパイロットは女には無理だと言われ、ゆきなは激怒。
坂場先輩への怒りからより一層トレーニングに励んでいました。

「T.S.L」が出場するのは「人力プロペラ機ディスタンス部門」で、今年製作している人力飛行機の名前は「アルバトロス」。
縦の長さは10m、翼を開いての横の長さは40mもあるかなり本格的な機体です。
8月1日の本番に向けて、パイロットが実際にアルバトロス号に乗ってのテストフライトがあります。
これも荒川の河川敷にある「ホンダエアポート」を借りての本格的なものです。
そこで各種のデータを取って、改良が必要な場所があれば改良し、完成度を上げていくというわけです。

しかしアルバトロス号の最初のテストフライトで事故が発生。
ふわりと浮いた機体に異変が起き、そのままバランスを崩して滑走路に激突。
乗っていた圭が大怪我を負ってしまい、8月1日の「鳥人間コンテスト」への出場が絶望的に…
当初「圭と坂場」がパイロットを務めるはずだったものが、急遽「坂場とゆきな」になります。
しかし坂場は二年前に1stパイロットとして出場した鳥人間コンテストでの大失敗のトラウマがあって、メインのパイロットである1stパイロットはもう絶対やらないと言って、自身がメインパイロットになるのを頑として受け付けません(ゆきなはサポート役の2ndパイロット)。
さらにゆきな自身、坂場のことが大嫌いだったので、こんなギクシャクしたコンビで大丈夫なのかと心配でした。
それでも、ゆきなの「飛ばない先輩は、ただのクソブタ野郎ですよ!」という紅の豚の名言みたいな一言が効いたらしく、坂場もようやく1stパイロットをやる決心をします。
ちなみに以前、二年前の大失敗のショックでしばらくパイロットから離れていた時、圭にも「飛ばない先輩は、ただのブタですよ」と言われてショックを受け、もう一度パイロットとして戻ってきた経緯があり、この紅の豚の名言は結構効き目があるようです(笑)

たった一回のフライトのために、パイロットは血の滲むような努力をしています。
人力飛行機におけるパイロットは「エンジン」であり、どれだけの出力を出せるかが飛行距離に大きく関わってきます。
目標としている出力を出せるようになるために、トレーニング計画を立て、毎日とんでもなくハードなトレーニングの日々です。
鳥人間コンテストはテレビで少し見たことがあるのですが、パイロットはこんなにハードなトレーニングを積んでいたのかと驚きました。
少しでも長く飛ぶために、極限まで努力を重ねています。

そして迎える、滋賀県彦根市、琵琶湖での鳥人間コンテスト。

無駄を削ぎ落とし、空を一度だけ飛ぶために設計された機体は、こんなにも情熱的で、こんなにも力強い。風の結晶を、光の結晶で繋ぎ合わせて生まれた機体は、こんなにも優しくて、美しい。

製作チームが仕上げてくれた渾身の機体を見て、ゆきなも坂場も胸が高鳴ります。

前方に青い空が見えた。こんな日が来るなんて思わなかった。わたしのこれまでは、全部、この日のためにあったんだと心から思えた。限界なんて関係ない。わたしのこれまでは全部、このフライトのためにあったんだ。

みんなの思いが詰まったアルバトロス号で琵琶湖の彼方へと飛んでいくゆきなと坂場のフライト、素晴らしかったです
これぞ青春だと思いました
ちなみに今年2014年の鳥人間コンテストは7月26日、27日にあり、まさにタイムリーな時にこの小説を読みました。
コンテストに出場する方々にはぜひ健闘してほしいと思います


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健康的な食事

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写真は和食料理屋「大戸屋」にて注文した、ご飯、納豆、ほうれん草の胡麻和え、かぼちゃのコロッケです。
大戸屋では各種定食だけでなくバラの品目も充実しているので、自分の好きな組み合わせで注文することができます。
ふと植物性タンパク質を中心にしたものを食べてみようかなと思い、この組み合わせにしました。

植物性タンパク質の代表的なものと言えば納豆です。
納豆は「畑の肉」と呼ばれる大豆から作られた、タンパク質が豊富な食べ物。
これとご飯が組み合わさると栄養バランスも凄く良いらしく、私が子供の頃から好きな「納豆ご飯」はかなり健康的な食べ物だったようです
納豆ご飯、本来は好きなのに普段あまり食べる機会がなくなっているため、これからまた食べる機会を増やしていければと思います

ほうれん草は、代表的な緑黄色野菜です。
淡色野菜は簡単なサラダでわりと食べるのですが、緑黄色野菜はあまり食べていないです。
そこでこの日はほうれん草の胡麻和えを頼んでみました。

時にはヘルシーなものを食べて、健康に気を使っていきたいと思います

「憎悪のパレード」

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今回ご紹介するのは「憎悪のパレード」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
死ね!殺せ!人を刺す言葉のナイフはもう捨てよう。
池袋チャイナタウンに吹き荒れる、ヘイトスピーチの嵐。
本当の敵は、一体どこにいる?
日本の今がここにある。
3年半ぶりの、シリーズ第11弾。

-----感想-----
3年半ぶりとなる、池袋ウエストゲートパークシリーズの第11弾です。
池袋西一番街にある果物屋の息子で、トラブルシューターでもある真島誠の日常で起こる様々なトラブルを綴った物語。
今作は以下の四編で構成されています。

北口スモークタワー
ギャンブラーズ・ゴールド
西池袋ノマドトラップ
憎悪のパレード

今作では石田衣良さん、「憎悪のパレード」という作品で随分と強力に政治主張を出してきたなと思います。
ひとまず順番に各作品について触れていきます。

「北口スモークタワー」は、脱法ドラッグを巡る話。
池袋駅の北口に「スモークタワー」と呼ばれる、脱法ドラッグの総合百貨店となっているペンシルビルがあります。
倉科魅音という12歳の子がそのビルに放火。
そこをGボーイズのメンバーがたまたま通りかかったので火を消し、魅音をGボーイズのキング・安藤崇のところに連れていき、崇が魅音を連れて誠のところにやってきます。
この子の話を聞いてやれとのことでした。
話を聞くと、魅音は脱法ハーブを吸って暴走運転をしていた車によって祖母が重症を負い、脱法ドラッグの巣窟たるスモークタワーに強い恨みを持っていました。
止めてもまた火をつけにいくと魅音は言います。

そしてGボーイズからの正式な依頼として、スモークタワーを街から追い出すことになります。
「教授」と呼ばれる脱法ドラッグに詳しい人物とともに、誠はスモークタワーに潜入。
当然のように脱法ドラッグを売っているすごい光景に衝撃を受けていました。

「どうして麻薬を堂々と売っているのに、警察も手をだせないんだ」
「ITと同じだ。あまりに新しくて、法律が追いつかない。脱法ハーブというのは麻薬じゃない麻薬で、これまでの法律のカテゴリーにないんだ。法律にない犯罪は裁けない」

この会話が印象的でした。
ちなみに脱法ドラッグの中では脱法ハーブが一番有名らしく、たしかにニュースでもその名をよく聞くなと思います。
脱法ドラッグの巣窟と化したスモークタワーを壊滅させるべく、誠は策を練ります。


「ギャンブラーズ・ゴールド」は、パチンコの話。
冒頭で
「そいつはギャンブルではないギャンブルだ」
「一年間に20兆円を超える売上を記録するグレイゾーンの王さまだ」
「トヨタ自動車の売上も、同じく20兆円くらい。この遊技は日本最大規模の産業のひとつといって間違いない」
と紹介されていたのが印象的でした。
グレイゾーンの王さまというのがポイントで、その存在は非常にきな臭くもあります。
ちなみに私はパチンコがあまり好きではありません。

Gボーイズは池袋巣鴨大塚で12軒のパチンコチェーンを展開するジャルディーノ・エンターテインメントから「ゴト師」探しの依頼を受けていました。
ゴト師とはイカサマをして大当たりを連発させる人のことで、ジャルディーノ池袋北口店がゴト師の被害に遭っているようでした。
安藤崇率いるGボーイズが16名で客を装って池袋北口店に張り込み、崇から頼まれて誠も客のふりをして一緒にパチンコを打っていました。

この店で知り合ったのが、三橋行矢(ゆきや)というパチンコ好きの人物。
子どもの頃からギャンブルと一緒に育ったという行矢のパチンコ好きは尋常ではなく、家族よりパチンコのほうが重要という状態で、完全にパチンコ依存症でした。
この物語は前半はゴト師探しがメインで、中盤からは行矢のパチンコ依存症がメインになります。
あと、この物語では
春の数日がひねもすのたりとすぎていった。
という表現がありました。
「ひねもすのたりと」とはどういう意味なのだろうと思い調べてみたら、「終日、ゆったりと」という意味のようです。
それから「北口スモークタワー」と「ギャンブラーズ・ゴールド」の二話続けて誠は子どもから「お父さんみたい」と言われていて、シリーズ最初の頃は10代だった誠も今作では20代後半になり、段々そういう雰囲気になってきたのかなと思いました。


「西池袋ノマドトラップ」は、ノマド(遊牧民)を巡る話。
ノマドとはオフィスがなく、会社に籍も置かない、遊牧民のように移動しながら働く自由なデジタル労働者のことです。
「コワーキング・スペース」というノマドワーカーのための働き場所が池袋にできていて、共同オフィス的なカフェのような店でした。
コワーキング・スペースとは「一緒に働く空間」という意味です。

樋口玲音(れおん)というノマドワーカーが、トラブルを起こしてしまいます。
そのトラブルを起こした相手が非常にまずく、「ツインデビル」と呼ばれる、高梨裕康と友康の凶悪な高梨兄弟です。
池袋ウエストゲートパークの過去の作品にも出てきました。
弟の友康によってコワーキング・スペースが襲撃され、青ざめる玲音。
誠は玲音から話を聞き、Gボーイズとともに高梨兄弟を叩き潰す作戦を考えます。
Gボーイズのキング・安藤崇も池袋で好き勝手暴れている高梨兄弟には怒っていたようで、二度と池袋に近付いてこないように叩き潰そうとやる気満々でした。


「憎悪のパレード」は、ヘイトスピーチを巡る話。
ヘイトスピーチとは憎悪表現のことで、デモなどで「死ね!殺せ!」と過激な言葉で罵倒中傷するようなことを指します。
私が知る限り最もこのヘイトスピーチという言葉が合うのは韓国が行っている凄まじい反日デモで、あれは狂気の沙汰だと思います。
中国もしばしば反日デモを行っていて、現地にある日本のお店が襲撃されることもあり、ヘイトスピーチどころか露骨に犯罪に及んでいましたね。

「憎悪のパレード」の作中、池袋の西口と北口のチャイナタウンは反中デモに揺れていました。
「中国人を祖国日本から徹底排除する市民の会」(略称「中排会」)という団体が池袋のチャイナタウンに来て、反中デモを行っています。
この「中排会」は、現実世界での「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)をモデルにしていると思われます。
「在日特権を許さない市民の会(在特会)」も何度か池袋で反中デモを行っているので、石田衣良さんはこれを小説の題材にしたようです。

「中排会」のデモは
「チャイナタウンの中国人を殲滅しにいくぞ」
「いくぞー!」
「ゴキブリとー、シナ人はー、一匹残らずー、駆除しなければー、いけませんー」
「シナ人にー、死をー」
と、非常に過激なもので、道行く人が顔を背けて遠ざかっていっていました。
そしてこの「中排会」と対立する団体もあって、「ヘイトスピーチと民族差別を許さない市民の会」(略称「へ民会」)と言います。
「へ民会」は「中排会」のデモに通りを挟んでピタリと横についていて、「中排会」のシュプレヒコールに合わせて、
「中国人と、ともに生きよう」
「生きようー」
とカウンターのようなシュプレヒコールを上げていました。
なので両者のシュプレヒコールが混ざり合い、
「死ねー」
「生きようー」
「死ねー」
「生きようー」
とわけのわからないことになっていました

さらには「へ民会」から分派した「レッドネックス」という過激派暴力団体も出てきて、「へ民会」と合わせて、これらは現実世界での「レイシストしばき隊」をモデルにしていると思われます。
「レイシストしばき隊」は「在日特権を許さない市民の会(在特会)」のデモにしばしばカウンターとしてぶつかっていっていて、名前のとおり暴力でデモ参加者をしばくことを厭わない過激派集団のため、つい先日も8人もの逮捕者を出して騒ぎになっていました。

作中で誠とGボーイズは「へ民会」の代表である久野俊樹から、「レッドネックスが中排会に暴力を振るうとこちらの印象が悪くなるので、止めてくれ」と依頼を受けます。
誠は市民団体同士の対立に巻き込まれて、守りたくもない「中排会」を守ることになって、うんざりとしていました。
そして物語は単なる市民団体同士の対立には留まらず、池袋北口の再開発、ビルの地上げ、そこに流れ込む中国マネーが絡む複雑な展開を見せます。
「中排会」にもある目的を持って潜り込んで暗躍していた人物がいて、なかなか面白い物語でした。

ちなみに、この物語で違和感を持ったのが、中国の尖閣諸島侵略のことを指して、「岩だらけの小島でもめようが、経済成長の先輩としてもうすこし余裕を持ったほうがいい」という内容のことを誠が語っていたこと。
これはそのまま石田衣良さんの考えでもあると思います。
この認識には驚きました。
岩だらけの小島と大したことではなさそうに言っていますが、万が一尖閣諸島が陥落したら、何が起きるか分かっているのでしょうか。
かの覇権主義の国がそこで止まるとでも思っているのでしょうか。
止まるわけがないですし、次は沖縄本島が危険に晒されることになります。
そしてこの話全体を通して、そういった問題から目を反らし、よくテレビのコメンテーターが言うような偽りの平和主義論(とにかくこちらだけがひたすら我慢して、仲良くしましょう)に持っていこうとしていたのが残念でした。
中国側の暴挙には触れないようにし、無理やり「仲良く」に持っていくのは論理構成に無理があります。
残念ながら中国という国は韓国と同じく常識が通用するような相手ではないですし、こちらだけが無理やり仲良くしようとしても、仲良くできるような相手ではありません。
この部分は「とにかく何をされても文句を言わず仲良く。これに反発する声は全て右傾化とみなす」と考えていそうな石田衣良さんと、「クレーマー相手に無理に仲良くするより、アジアには他に良い国がいくつもあるのだからそちらと付き合い、中国とは距離を置いたほうが良い」と考える私とでは、だいぶ考えが違うだろうなと思います。

石田衣良さんの考えが強く滲み出ている、なかなか興味深い話でした。


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「フルタイムライフ」

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今回ご紹介するのは「フルタイムライフ」(著:柴崎友香)です。

-----内容-----
この春、美大を出てOLになった喜多川春子。
なれない仕事に奮闘する春子だが、会社が終わると相変わらず大学の友人とデザインを続けたり、男友達にふられたりの日々。
ようやく仕事にもなれた頃、社内にリストラの噂がでて、周囲が変わり始める。
一方、昼休みに時々会う正吉が気になり出した春子にも小さな心の変化が訪れて…
新入社員の10ヶ月を描く傑作長篇。

-----感想-----
柴崎友香さんの作品を読むのは今回が初めてです。
今月17日に「春の庭」で第151回芥川賞を受賞された柴崎友香さん。
先週末に図書館に行った時、ふと柴崎さんの作品が気になったので、どんなものがあるのだろうと思いコーナーを見ていきました。
そして目に留まったのがこの「フルタイムライフ」です。
今日マチ子さんの素朴で温かみのあるカバーイラストと本の裏の内容紹介文を見て、面白そうなので読んでみようと思いました。

主人公は社会人一年目でOLになったばかりの喜多川春子。
春子はエビス包装機器という機械の会社の事務職に就いていて、経営統括部という部署にいます。
会社があるのは大阪の心斎橋なので、登場人物はほとんどの人が大阪弁です。
物語は最初が5月で、その後は2月まで1つの章で1ヶ月ずつ進んでいきます。

冒頭からオフィスでの仕事の様子が描かれていて、春子はシュレッダーで大量の書類を裁断していました。
コピー機でコピーを取ったりするシーンも多く、事務職だけあってオフィス内の事務の仕事を色々やっていました。
会社では次から次へとすごくたくさんの人が登場してきて、みんな苗字だけで「○○さん」という形容で、少ししか登場しない人ばかりなので、なかなか全員を覚えるのは難しいです
これはまさに会社での色々な人が行き来する人の流れだなと思います。
解説の山崎ナオコーラさんが「読み始めたときに、誰が誰だか分からない感覚に陥る」と書いていて、たしかにそうだと思いました。
しかしそれでも特に問題なく読めてしまうのは、それらの人物が主人公にとってものすごく重要な人物というほどではないからだと思います。
業務上あまり関わりのない人であっても話しかけてきたりといったことがあるものです。
そんな時はこの人誰だろうと思いつつも無難に話をしたりもします。

「5月」の章で、午後ずっとシュレッダーで書類を裁断していた春子が「こんなんでいいのかな」と心境を語っていた部分にはちょっと共感しました。
たしかに何も考えずひたすらシュレッダーで書類を裁断するような仕事をしていると、こう思うことがありますね。

春子は事務職で事務全般を扱ってはいますが、もともと求人票に書いてあった仕事内容は「社内報の編集・デザイン」です。
シュレッダーやコピー、パソコンの入力などの合間に、社内報を作成している様子も描かれています。
美術系の大学のデザイン科で学んでいた春子は、漠然とデザイン関係の仕事をしたいと思っていましたがなかなか上手くいかず、このままだとアルバイトになるかと思っていた卒業間近にこの求人を紹介してもらい、縁あって入社となりました。

すごく淡々と日々が過ぎていっていました。
良い意味で淡々としていて、それほど忙しくはない今の職場は春子にも合っているようでした。
プライベートでは大学時代の友達、樹里とよく一緒に行動し、好きな人に振られたり、新たに好きな人ができたりしながら過ぎていっていました。

「11月」の章で「会社が終わる時間に外が暗いと、もう一日が終わったみたいで悲しい」とあって、この気持ちはよく分かりました。
帰る時に既に夜になっているというのは、特に夏場は切なくなります

「わたし、辞めようかなと思ってる」
春子が同じ職場で頼りにしている先輩からこう切り出されて、戸惑う場面がありました。
お昼も一緒に食べるし、おやつも一緒に食べるし、むかつくことがあった時は一緒に愚痴を言っている先輩です。
会社なので退職していく人は必ずいるんですよね。
一緒にお昼を食べているグループの、他の部署の先輩も一人結婚して寿退職することになり、さらには会社もリストラをすることになり、春子は環境の変化に直面していました。
それでも淡々とした語り口の文章を読んでいると、きっとその変化にも淡々と順応していけるんだろうなと思わせてくれるものがありました

リストラに揺れる社内で、みんな辞めたいと思わないのかという話になった時、「私は会社なくなるまでおる」と言っている先輩がいて、すごく印象的でした。
「なんていうか、この仕事、好きみたいなんですよね。おもしろいでしょ?」とも言っていて、こんなふうに仕事をはっきりと好きと言えるくらい充実しているのは素晴らしいと思います。

春子が語っていた心境の中で、すごく良いと思ったのが以下の言葉です。
必要なのは、なにかするべきことがあるときに、それをすることができる自分になることだと思う。
するべきことが来た時、それをする決断をすることもそうでしょうし、するべきことができるように、力を付けておくこともそうだと思います。

そして同じページで
明日の朝起きて会社に行っても同じように思ってるかどうかはわからない
とも言っていて、これはウケました(笑)
人の心は常に揺れ動いていますから、これはほんとにそのとおりだと思います。
色々考えながら、進んでいければそれで良いのではないでしょうか。
そうしているうちに春子も、もうじき頼りにしている先輩がいなくなってしまう職場で、リストラによる組織改編に揺れる会社で、自分の働き方を確かなものにしていけるのではと思います


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「何者」

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運良く図書館で巡り会った一冊です。
今回ご紹介するのは「何者」(著:朝井リョウ)です。

-----内容-----
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」
就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……
自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。
この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。
影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。
第148回直木賞受賞作。

-----感想-----
御山大学に在籍する5人の就職活動の物語です。
語りは二宮拓人による一人称。
拓人は大学の「劇団プラネット」でかつての友・烏丸ギンジとともにツートップを張っていましたが、現在は引退しています。

拓人とルームシェアで同居しているのが神谷光太郎。
OVERMUSICという学生バンドのヴォーカルで、冒頭の学園祭で引退ライブをやっていました。
明るくおちゃらけたところがあり、ムードメーカー的な存在です。

アメリカ留学から帰ってきたのが田名部瑞月。
光太郎と瑞月は以前付き合っていました。
ちなみに拓人も瑞月のことが好きで、何度も瑞月への伝えられない想いが綴られていました。

彼氏、彼女で同棲しているのが宮本隆良と小早川理香です。
小早川理香が瑞月と友達で、それがきっかけとなってこの5人が集まることになりました。
5人は全員ツイッターをやっていて、それぞれアカウントを交換しました。
以後、この5人に烏丸ギンジを加えた6人のツイート(つぶやき)が物語によく登場します。
烏丸ギンジは大学を中退して劇団「毒とビスケット」を立ち上げていて、拓人がギンジのことを気にしているため、ツイートが登場するようです。
拓人が頻繁にギンジのツイッターでのつぶやきを見ているということだと思います。

ほどなくして12月になり、就職活動が始まります。
「12月1日に就職サイトがオープンするからね。やっぱそっから本格始動って感じだよ」とあったのですが、これはリクルートのサイトのことを言っているのかなと思います。
最初から凄く気合いが入っているのが理香と瑞月で、光太郎は何も準備していないと言って焦っていて、拓人はどこか冷めた感じ、隆良は就職活動自体しないと言っていました。

隆良の持論は凄く痛々しかったです。
「俺は就活しないよ。去年、一年間休学してて、自分は就活とか就職とかそういうのに向いてないなって分かったから。いま?いまは、いろんな人と出会って、いろんな人と話して、たくさん本を読んでモノを見て。会社に入らなくても生きていけるようになるための準備期間、ってとこかな。原発があんなことになって、この国にずっと住み続けられるのかもわからないし、どんな大きな会社だっていつどうなるのかわからない。そんな中で、不安定なこの国の、いつ崩れ落ちるのかわからないような仕組みの上にある企業に身を委ねるって、どういう感覚なんだろうって俺なんかは思っちゃうんだよね。いまちょうどコラムの依頼とかもらえるようになって、人脈も広がってきたところ。ていうか逆に聞きたいんだけど、いまこの時代で団体に所属するメリットって何?」

これに対し、拓人は以下のように分析していました。
個人の話を、大きな話にすり替える。そうされると、誰も何も言えなくなってしまう。就職の話をしていたと思ったら、いつのまにかこの国の仕組みの話になっていた。そんな大きなテーマに、真っ向から意見を言える人はいない。こんなやり方で自分の優位性を確かめているとしたら、隆良の足元は相当ぐらぐらなんだろうな、と俺は思った。

話のすり替えはまさにそのとおりで、いきなり原発を出してきて、この国は危ない、危ない国の企業に所属する意味はない、よって所属しない俺こそが正しい、というような主張をしています。
私が特に痛々しいと思ったのが、最後の「逆に聞きたいんだけど、いまこの時代で団体に所属するメリットって何?」の部分。
これは質問をしているというより、何で団体になんか所属するの?と相手を馬鹿にしている意味合いが強いです。
ここで思うのが、本当に自分の行動に自信があるのであれば、わざわざこんなことを言って必死に防御壁を作って、自分を優位に立たせようとはしないだろうということ。
自信がないから、何とかして自分を優位に立たせたくて、こういう発言になるのだと思います。

拓人は「昼はカフェ、夜はバーというスタイルのチェーン店」でアルバイトをしています
これは「PRONT」のことを言っているのだと思います。
ここで一緒に働いている「サワ先輩」は御山大の理系の大学院の一年生で、拓人はだいぶお世話になっています。
物語の後半で印象的な場面のある人です。

この作品は拓人の一人称なだけあって、拓人が相手の話を聞きつつ心の内側で感じていることが、かなりリアルに描き出されています。
上記の隆良の発言への分析などがそうでした。
拓人が見ている人の言動への心のざわつきがしばしば描かれていて、読んでいるほうも心がザワザワしてきます
またこの作品では「何者かになれる」「何者にもなれない」というように、「何者」という言葉がよく出てきます。

拓人は心の中ではかなり色々なことを考えていますが、実際に話すときは言葉を選んでいて、真の心の内はほとんど見せていません。
そんな拓人が自分というものを作らずに話せる相手が瑞月さんで、これが瑞月さんに惹かれる理由なのかなと思います。

理香もなかなか際どい就職活動をしていました。
ツイッターにはメールアドレスからアカウントを検索できる機能があるのですが、理香はこれを使って面接の前にOB訪問した時に教えて貰ったアドレスからツイッターのアカウントを検索し、ツイッター上で「今日は御社の面接に行ってきます。どんなお話をさせてくださるのかすごく楽しみです」とアピールしていました。
光太郎が拓人にこの話をして、二人とも理香のその方法に引いていました。
これは理香としては「使えるものは全て使い、全力でぶつかる」という就職活動への強い攻撃的姿勢の表れだと思います。
問題は相手がどう思うかで、アドレスからツイッターのアカウントまで検索してアピールしてくるとは意識の高い子だなと思うか、そこまでするかとドン引きするかはどちらになるか分からないです。
理香の就職活動は強い攻撃的姿勢で一貫していて、面接の際に話す時

「私は留学をしていましたが〜」
「私は海外の企業でインターン経験がありますが〜」
「私が学際の実行委員の広報班長をしていたころの経験からすると〜」
「私がカンボジアに学校を建てるプロジェクトに参加していた経験をもとに話せば〜」

と、話す時に必ず自分のアピールをしてから話し出していました。
これも聞いている面接官にウザがられる可能性があり、諸刃の剣です。
まさに目一杯まで、マイナスに作用するかも知れない領域まで攻撃的姿勢を高めて就活に当たっていっていました。

面白かったのが、料理を作っていた光太郎が
「パスタに使うインスタントのミートソースはカレー粉が入っていないだけで、キーマカレーの材料とあとは一緒」
と言っていたこと。
そうしてミートソースにカレー粉を入れて、その他チーズやナスを加えたりしてキーマカレーを作ってしまいました。
しかも意外と美味しいらしく、周りからは好評でした。
読んでいたら何となく食べてみたくなりました(笑)

そしてこの物語で屈指の見所だったのが、瑞月さんがある人物に語る(諭す)場面。

「私たちはもう、たったひとり、自分だけで、自分の人生を見つめなきゃいけない」

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから」

斜に構えていることに対する、物凄く説得力のある言葉の数々でした。
この部分は数ページに渡って続く、名場面でした。
ぜひこの作品を読むことがあればこの部分に注目してほしいなと思います。

そして最後、すごく印象的だったのが以下の言葉です。
「自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ」

就職活動であれこれと武装してみたところで、何者にもなれるわけではなく、自分はあくまで自分です。
現状の自分自身と向き合い、理想の自分とのギャップを受け止めて、受け入れて、理想の自分に近付くべく努力できたとしたら、就活もその先の社会人生活も、きっと良い結果になると思います。


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盛夏

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7月の後半から連日暑い日が続いています
関東では7月22日に梅雨明けが発表されました。
今年は冷夏になるとの予報だったので、スムーズに梅雨が明けてくれるか心配だったのですが、ほぼ平年どおりに梅雨明けしてくれて良かったです。

その後長期天気予報は一転して、冷夏から猛暑の予報に変わりました。
梅雨明け以降、東京では連日よく晴れ、33度くらいまで気温が上がる日が続いています。
夏らしい水色がかった青空に入道雲がモクモクと出て、夕方には雷雨があったりと、いかにも真夏といった日々です

セミも7月20日頃からミンミンゼミ、アブラゼミが出てきて盛大に鳴いていて、まさに盛夏となっています
関東のセミといえばニイニイゼミ(他のセミより一足早く、6月下旬頃から登場)、ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ(明け方と夕方に鳴きます)、ツクツクボウシ(他のセミより少し遅れて、8月上旬頃から登場)の5種類が有名です。
近年はこれに加えて、西日本に生息するクマゼミの鳴き声もたまに聞くようになってきました。
ジャワジャワジャワジャワと聞きなれない鳴き声が聞こえてきたら、それがクマゼミです。
温暖化の影響で段々東日本にも進出してきているらしく、埼玉県にある私の実家でも昨年帰省した時にクマゼミの鳴き声を聞きました。

花火大会も各地で行われて最盛期を迎えています。
毎年7月最後の土曜日に行われる隅田川花火大会も、今年は昨年のように雷雨に見舞われることもなく、97万人が見に来て大盛況だったようです

私は昨日、髪を切りに行ってきました。
久しぶりに横浜の美容室に行ってきました。
夏真っ盛りで連日暑いですし、さっぱりとできて良かったです。
8月は上旬のうちに立秋を迎えますが、この暑さを見ると、まだまだ猛暑は続くだろうと思います。
私も暑さに負けずよく食べよく寝て、夏を楽しんでいこうと思います

「また会う日まで」

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今回ご紹介するのは「また会う日まで」(著:柴崎友香)です。

-----内容-----
好きなのになぜか会えない人がいる……
OL有麻は25歳。
あの修学旅行の夜、鳴海くんとの間に流れた特別な感情を、会って確かめたいと突然思いたつ。
有麻のせつない1週間の休暇を描く話題作!

-----感想-----
梅雨が明ける前の7月、月曜日から、物語は始まります。
主人公は大阪で働く仁藤有麻(ゆま)。
有麻は一週間の休暇を取って、東京にやってきました。

最初有麻は東京メトロ表参道駅の銀座線と半蔵門線のホームにいました。
電車からホームに出た後、地上に出るために一度階段を降りるのですが、「地下鉄から地上に出るのになんで降りるんだろう」と言っていて、たしかにそうだなと思いました(笑)

有麻は「しょうちゃん」と待ち合わせていて、部屋に泊めてもらうことになっていました。
しょうちゃんの名前は祥次と言い、大学の写真部で一緒だった男友達です。
しょうちゃんは写真の仕事をしていて、有麻も仕事は違いますが趣味で写真は撮っています。

明治通りの交差点や表参道の坂などが出てきて、何度も歩いたことがあるので場所の想像がしやすかったです。
同潤会のアパートがあった場所が作中では工事中になっていましたが、ここには現在表参道ヒルズが建っています。
表参道と明治通りの交差点も鉄板が敷かれて工事中になっていましたが、これも現在は工事が終わっています。
読んでいたらまだ工事をしていた時、鉄板の上を歩いていたら下から振動が伝わってきたのを思い出し、懐かしくなりました^^

李花ちゃんという、二つ上で二年前まで有麻の勤めている会社の東京営業所にいた子も出てきました。
今はテレビや雑誌に出る仕事をしています。

火曜日になると、有麻が東京に来た目的が明らかになります。
有麻は高校以来久しぶりに岩井鳴海という人に会おうとしていました。
恋心とは少し違うようですが、何やら特別な感情があるようです。
ちなみに物語は月曜日、火曜日、水曜日と一日ごとに進んでいきます。

「ほんとうは私が思ってもみないような景色のところがたくさん集まって東京っていう街なんだろうと思う」という有麻の言葉は印象的でした。
しょうちゃんが行ってきた「浮間舟渡(うきまふなど)」という地名は東京在住の私も知りませんでした。

有麻は無事に鳴海君と再会を果たします。
しかしここから、物語に妙な人物が絡んでくるようになりました。
凪子という変わった子がいて、鳴海のことが好きなのか何なのか、たまに鳴海の家の前で待っていたりします。
鳴海曰く「害のないストーカーみたいなもの」とのことでした。
凪子は鳴海と一緒に居た有麻のことも気になるようで、あれこれ聞いてきたりして接点が出来ていきます。

作中で出てきた、江戸時代には武士と町人はそれぞれ居住区域が分かれていたということ、そしてそれが現在も町の読み方に表れているというのは興味深かったです。
「御徒町(おかちまち)」のように町をまちと読む場合は武士の町、「○○町(ちょう)」という読み方の場合は職人などの町人の町とのことです。
ただ調べてみたら神田神保町(かんだじんぼうちょう)は武士の町だったというように、必ずしもそうとは限らないようです。

有麻は最初しょうちゃんの部屋に泊まったのですが、次は鳴海君の部屋に泊まり、その次は李花ちゃんの家に泊まっていました。
泊まり歩いているのが、私はこういう滞在の仕方はしないので珍しく感じました。

物語は、なんといったことのない日常を描いたものです。
大きなことは何も起きないし、日常の中での会話が中心です。
そこに所々興味深いことが書かれていて、物語のアクセントになっていたように思います。


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「あるキング」

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今回ご紹介するのは「あるキング」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
この作品は、いままでの伊坂幸太郎作品とは違います。
意外性や、ハッとする展開はありません。
あるのは、天才野球選手の不思議なお話。
喜劇なのか悲劇なのか、寓話なのか伝記なのか。
キーワードはシェイクスピアの名作「マクベス」に登場する三人の魔女、そして劇中の有名な台詞。
「きれいはきたない」の原語は「Fair is foul.」。
フェアとファウル。
野球用語が含まれているのも、偶然なのか必然なのか。
バットを持った孤独な王様が、みんなのために本塁打を打つ、そういう物語。

-----感想-----
内容紹介文にあるように、今までの伊坂幸太郎さんの作品とは違っていました。
伊坂幸太郎さんの作品といえば、複数の物語が同時に進行していって、やがてそれらの物語が絡まり合い、うなりを上げて動き出すという展開がよくあります。
巧妙に張り巡らされた伏線が後半で思いもよらぬ形で現れて驚かされるといったこともよくあります。
しかしこの作品ではそれら伊坂作品の王道的展開にはならないです。
この作品は「伊坂幸太郎第二期」と呼ばれる期間に入るのですが、第二期では伊坂さんの王道的展開ではないものを実験的に書いているとのことです。
現在は第二期が終わったらしく、本来の作風に戻っています。

この作品は山田王求(おうく)という天才野球選手の、0歳から23歳までの物語です。
王求はまさに王になるために生まれてきたかのような、生まれながらの天才でした。
王求の父親の名は山田亮、母親の名は山田桐子。
物語の冒頭、桐子は臨月を迎えていました。

仙醍市という、仙台市をモデルとした架空の都市に、「仙醍キングス」というプロ野球球団があります。
地元仙醍市の製菓会社「服部製菓」が運営していて、毎年最下位か良くても5位という弱小球団です。
桐子はこの仙醍キングスの南雲慎平太監督に思い入れがありました。

桐子が出産をした日、南雲慎平太監督が敵チームの打者の打ったファウルボールが激突しそうになり、それを避けようとした際にベンチに頭をぶつけ、その衝撃が原因となり死亡。
この時の対戦チームは「東卿ジャイアンツ(読売ジャイアンツがモデルと思われます)」だったのですが、南雲慎平太監督に思い入れのあった桐子はこの日以来、東卿ジャイアンツの名前が出ただけで目の色が変わるくらい、東卿ジャイアンツが大嫌いになりました。

王求の名前の由来は、「将来、キングスに求められる存在なのだから、王に求められると書いて王求」です。
亮と桐子の二人とも、名前をつける時点で既に王求が将来プロ野球選手になり、仙醍キングスで活躍するのを全く疑っていませんでした。

物語には頻繁に黒色のロングコートを羽織り、頭には黒のチューリップハット、靴も黒の黒ずくめの魔女みたいな三人組の女の人が出てきます。
この三人が頻繁に王求の周辺に現れるのです。
三人は「めでたいねえ。おまえは王になるのだから」と王求が将来野球の王になるのを分かっているかのような、予言めいたことを言います。

王求は12歳の小学六年生の時点で、既に天才バッターとしてその名を轟かせていました。
プロ野球選手による野球教室では、プロのピッチャーの手加減無しの全力投球を打ち返し、ホームランにしてしまいました。
地元の少年チームの試合でも打席に立ってまともなボールが飛んでくれば全てホームランにしてしまうような怪物ぶりで、あまりに凄すぎるため、頻繁に敬遠されたり、味方チームからも煙たがられたりもしていました。
また、両親の王求がプロ野球選手になることへの愛情は半端ではなく、狂気じみたものを感じるほどでした。

王求の人生は予め決まっているかのごとく、黒ずくめの魔女みたいな女の人達の予言じみた言葉によって、導かれていきます。
そしてその言葉は、王求を順風満帆な野球人生には導きませんでした。

「真の王は、舗装された道を歩むべきではありません。そう思いませんか」

と、不吉な未来を予言しています。
実際に王求の野球人生は途中で大きく躓くことになります。

この作品では、一度登場した人物が再び王求の前に出てくることが多いです。
登場人物自体が一種の伏線のようになっていて、一度出てきた人物がまた出てくるのかなと気になりました。

旅行に行く日の天候が、晴れなのか雨なのかはコントロールできない。どうにもならないことを鬱々と悩み、天気予報に一喜一憂するくらいであれば、どんな天気であっても受け入れて、雨が降れば傘を差し、晴れたなら薄着をしていこう、と構えているほうがよほどいい。

「雨なんて降ってない」と言い張るよりも、豪雨を認めた上で雨具を身に着ければいいのだ。

王求21歳の章で出てきたこれらの言葉は印象的でした。
天気だけでなく他のことについても言えることだなと思いました。

またこの作品では「おまえは」という表記で、何者かが王求を見ている語り口で物語が語られています。
この人物は最後に明らかになります。

最初から最後まで独特な雰囲気を持つ不思議な物語でしたが、他の伊坂作品とは大きく異なる作品として楽しく読むことができました。


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「きょうのできごと」

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今回ご紹介するのは「きょうのできごと」(著:柴崎友香)です。

-----内容-----
ある晩、友人の引っ越し祝いに集まった数人の男女。
彼らがその日経験した小さな出会い、せつない思い。
5つの視点で描かれた小さな惑星の小さな物語。
書下ろし「きょうのできごとの、つづきのできごと」収録。
行定監督映画化!

-----感想-----
「フルタイムライフ」「また会う日まで」に続く三冊目の柴崎友香さんの作品です。
この作品はデビュー作ということで興味を持って読んでみました。
物語は以下の6編で構成されています。

「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」3月25日 午前3時
「ハニー・フラッシュ」3月24日 午後6時
「オオワニカワアカガメ」3月25日午前4時
「十年後の動物園」3月24日 午後1時
「途中で」3月25日 午前3時
きょうのできごとのつづきのできごと

3月24日から25日にかけて京都に引っ越した友人の引っ越し祝いに集まった7人の男女。
盛大な飲み会になり、真夜中まで続いていました
章ごとに、それぞれ別の人物の視点で物語が描かれています。

最初の章では冒頭から車の中での軽い会話が続いていました。
先に読んだ二作と同じくこの作品も登場人物は大阪弁でした。
最初の章は「けいと」という女の子が語り手です。
助手席で寝ていて、目が覚めたところから物語は始まります。
運転しているのは中澤という男で、後部座席にはけいとの友達で中沢の彼女の真紀がシートに横になって寝ています。
友人宅での飲み会からの帰り道、時刻は午前3時。
けいとと中沢の会話は小学校からの長い友達だけあって軽妙で、他愛もない会話を楽しく読ませてもらいました。

二番目の章では、最初の章で後部座席で寝ていた真紀が語り手になります。
時刻は3月24日の6時へと遡ります。
この章では、三人が行ったのは「正道くん」という人の家だったということが分かります。
飲み会の詳細も分かり、けいとと真紀は随分とたくさん飲んでいました
そしてけいとはこの飲み会で「かわちくん」という正道の後輩が好きになったらしく、勢い込んで話しかけていました。
真紀のほうはなぜかお風呂場で西山という男の散髪をしてあげていました。
これが酷い仕上がりで、この時は西山が酔っ払って判断力がなくなっていたから良かったものの、後々騒ぎになります。

三番目の章では中沢が語り手。
帰り道、車を運転している中沢に正道の家に残っているメンバーから電話がかかってきました。
真紀に酷い髪型にされた西山が、真紀たち三人が帰った後に少し酔いが醒めて髪型の酷さに気づき、やけ気味に再び酒を飲んで酔いが回り、暴れ出していました
同じく真紀が散髪をした「かわちくん」のほうは比較的マシな髪型に仕上がっていたため(かわちくんはルックスも良いらしいです)、それに嫉妬した西山はかわちくんに絡み、完全にタチの悪い酔っ払いになっていました。

四番目の章ではかわちくんが語り手。
時系列は3月24日の午後1時。
かわちくんは付き合っている彼女とデートをしていました。
しかしかわちくん、「正道さんの引っ越し記念飲み会があるから」と言ってデートを早めに切り上げようとして彼女を怒らせてしまいます。
飲み会に行くのを遅くすれば済むのにかわちくんにはそれができないらしく、そのわりにデートのほうは早く切り上げようとしていて、その態度に彼女さんは怒っていました。
飲み会のほうにはそんなに気を使うのに、私とのデートには全然気を使わないのか、というわけです。
正道の家での飲み会ではけいとがかわちくんに好印象を持って好きになっていましたが、この話ではかわちくんの意外な一面が印象的でした。

五番目の章では正道が語り手。
時系列は3月25日午前3時。
けいと、真紀、中沢の三人が帰って、男四人が正道の家に残っている時の物語です。
西山が酔っ払って暴れている様子が詳しく描かれています。
西山は酔っ払うと他の人に携帯で電話をかけさせたりするらしく、これは私も酔っ払った先輩がそういう行動をしているのを見たことがあるので様子がよく分かりました。
やはりお酒は人に迷惑がかからない範囲で飲むようにすべきだと思います。

最後の「きょうのできごとのつづきのできごと」は特殊な物語でした。
物語は二つに分かれていて、二つ目のほうの語り手は柴崎友香さん本人で、映画の撮影現場を見に来ていました。
そしてこの話の中で柴崎友香さん本人が「飲み会に集まった大学生たちのなんでもない1日の話」と言っているように、この作品は大学生たちのなんでもない1日を題材にしています。
そこを、飲み会に集まったメンバーそれぞれの視点で時系列も少しずつずれて構成することで、面白い物語になっていました。
ある時同じ場所に集まったメンバーにもそれぞれのエピソードがあるというのがとても上手く表現されていると思いました


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