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「猫に名言 フロイト、ユング、アドラーの50の言葉」清田予紀、南幅俊輔

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今回ご紹介するのは「猫に名言 フロイト、ユング、アドラーの50の言葉」(著:清田予紀、南幅俊輔)です。

-----内容&感想-----
この本は「主婦と生活社」という出版社から出版されています。
どんな出版社なのかネットで調べてみたら「週刊女性」やファッション誌「JUNON」などの雑誌を扱っているとのことです。
「猫に名言」は内容的にも気楽に読めるので、出版社の名前のごとく主婦をされている方がその合間に軽く何か読みたい時にも良いのではと思います。

猫の写真とともにジークムント・フロイト、カール・グスタフ・ユング、アルフレッド・アドラーの「心理学三大巨頭」の名言が書かれています。
一つの名言ごとに見開き2ページを使い、お悩みインデックス(悩みを一言で表したもの)、名言(その悩みの内容に対応する名言)、名言への解説という構成になっています。
収録されている名言はフロイトが17個、ユングが17個、アドラーが16個で合計50個です。
明確に言葉に出来る悩みがない場合でも三大巨頭の名言に触れるという形で問題なく読み進められる内容です。
どのページから読んでも大丈夫な構成になっていて、私は順番に読んでいきました。

冒頭の「はじめに」のようなページで「猫と過ごす時間は、決して無駄にならない。」というフロイトの言葉が紹介されていました。
猫は人間に寄り添いながらも一歩引いた目で私たちを観察していて、それがフロイトを始めとする精神科医にも必要な資質であることから、フロイトはこの言葉を語ったようです。
このフロイトの言葉から、猫の写真とともに名言を紹介する形になったのかなとも思いました。

またこの「はじめに」的なページでは、「心を癒す」という言葉が出てきました。
私がこれまでに読んだ心理学の本では「癒す」という言葉はほとんど出てきていなかったです。
これは深刻なダメージを受けた人の心は心理学を駆使してもそう簡単に癒せるものではないということ、そして「癒す」は軽々しく使える言葉ではないということなのだと思います。
ただし本書は猫の写真とともに名言を紹介するという気楽に読める内容なので、言葉も気楽に「癒す」を使ったのかなと思います。


まずフロイトの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P24「ほとんどの人間は実のところ自由を欲しがっていない。なぜなら自由には責任が伴うからである。ほとんどの人間は責任を負うことを恐れている。」
自由はただ「自由だ!」と叫んでやりたい放題やって済むものではなく、その行動への責任が伴います。
また自由だけを叫び責任は取らない人達もいて、私はこのフロイトの言葉を見て「報道の自由」や「表現の自由」と叫びながらやりたい放題な報道をし、後で捏造がばれた場合などにもろくに責任を取らないマスコミのことが思い浮かびました。

P28「あなたの脆い部分がいずれ強さとなる。」」
解説には「長所と短所は、実は表裏一体」とありました。
例えば「神経質な人」は「細かいことによく気がつく人」というように、短所に見えるものも見方を変えると長所になるということです。
自分自身が「長所になる」と認識してあげると、自然と長所になっていく気がします。

P36「いつの日か過去を振り返ったとき、もがき苦しんだあの日が最も美しい日々だったと気づくことだろう。」
これは人生の晩年になったらそう思えるかも知れないです。
私は昨年の9月にこの名言と似た趣旨の「記憶との付き合い」という記事を書いたことがあります。
私の場合今はまだ「最も美しい日々だった」とは思えないですが、嫌な記憶を受け止められるようにはなりました。

P38「インスピレーションが湧かないときは、こっちから途中まで迎えに行けばいい。」
この名言の解説に「3つのBの場所ではインスピレーションが湧きやすい」とあり、3つのBとは「Bed(ベッド)」、「Bath(お風呂)」、「Bus(バスなどの乗り物」です。
どれもボーっとしていられる場所であり、ボーっとしているということは意識の力が弱まり無意識の力が活性化するので、何かをひらめいたりすることがあるようです。

P42「心は氷山のようなもの。氷山は、その大きさの7分の1を海面の上に出して漂う。」
心の中で自分が理解できてコントロールできる部分がそのくらいしかないという意味です。
これは私も自分自身の全てを分からなくて当然だと思います。
そして全てを分かるのはなかなかできることではないのを分かった上で、できるだけ分かるようにしていくのが大事かと思います。


ここからユングの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P56「ある人の足に合った靴がほかの人にも合うとは限らない。すべてのケースに適合するような人生のレシピはないのです。」
人生のマニュアルについての名言です。
解説に「客観性を装った周囲のアドバイスも、その人の主観や偏見が入っているので鵜呑みにはできない」とありました。
たしかにその人にとっては良い方法だったとしても、それがこちらにも合うとは限らないと思います。

P58「私たちがこの世に生を享けている唯一の目的は人生という暗闇に自分で灯をつけること。」
全く何もしないでいれば人生は暗闇のままなので、自分自身の手によって灯をつけ、見える範囲を増やしていきます。
人生を楽しくしていきたいと思わされる名言です。

P63「あなたが向き合わなかった問題は、いずれ運命として出あうことになる。」
これは重い言葉だと思います。
私も運命と出会っても何とかなるように備えをしておこうと思います。

P64「他人に対して感じる“いらだち”や“不快感”は、自分がどんな人間なのかを教えてくれる。」
これはユング心理学の本に出てくる「シャドウ(影)」のことです。
例えば「謙虚な人は、傲慢な人の言動に不快感を覚え、それはその人が自分の中にある傲慢さに気づきたくないから」となります。
自分が不快なこととして押さえ込んでいることを相手が平気でやっているため、見ていて不快になるということです。

P72「アドバイスが救いになるかというと、それははなはだ疑わしい。でも、それほど害はないだろう。なぜなら、毒にも薬にもならないからだ」
アドバイスはあくまでその人にとって有効なことなので、それが他の人にも効くとは限りません。
アドバイスを鵜呑みにするのではなく、自分に合う解決法を見つけていくことが大切です。
そしてユングのこの表現はジョークが入っていてなかなか面白いと思いました。


ここからアドラーの名言の中で印象的だったものを紹介していきます。

P95「重要なことは人が何を持って生まれたかではなく、与えられたものをどう使いこなすかである。」
これは過去に読んだアドラー心理学の本にも載っていた言葉で、良い言葉だと思います。
「自分にはあれがない、これがない」とないものにばかり目を向けて悲観したり、持っている人を妬んだりするのではなく、自分が持っているものに目を向けてあげられる人でありたいです。

P105「人生が困難なのではない。あなたが人生を困難にしているのだ。人生はきわめてシンプルである。」
未来について悩み頭を抱えてしまうと、人生は困難になってしまうようです。
「現在」はとても大事なので、未来に思い悩むより、今できることをコツコツやるほうが良いと思います。

P111「あなたを支配しているのは遺伝やトラウマではない。どんな過去であれ、未来はあなたがつくるのだ。」
遺伝やトラウマを理由に過去にこだわる限り、自分を変えていくことはできないという意味です。
アドラーは「あなたは“変われない”のではない。“変わらない”という決断を自分でしているだけだ」と言っています。
過去に読んだアドラー心理学の本では「変わらずにいたいという目的を達成するために、トラウマを作り上げている」とありました。
アドラー心理学の特徴としてトラウマの全否定があり、トラウマなどないと言い切っています。
そして過去に読んだアドラー心理学のレビューで書いたように、これだと女性が男性から酷い目に遭わされて激しいトラウマになり心身症を患っているようなケースでも、「あなたは自分が変わらずにいたいという目的を達成するために、トラウマを作り上げている」と言うことになり、これはいくら何でも酷いと思います。
私はどんな心理学も万全ではないと思っていて、これはアドラー心理学の欠点の一つだと思います(もう一つは体育会系理論になりがちな点です)。

P117「自分が不完全であることを認める勇気が必要だ。人間は不完全だから努力するのである。」
この勇気は大事だと思います。
不完全であることは全然恥ずかしくないですし、むしろ当然のことだと思います。
不完全さを認めた上で理想とするものに向かって完成度を上げていけば良いと思います。

P119「できない自分を責めている限り、永遠に幸せにはなれないだろう。」
これについては小さなことでも良いので、できたことに対して自分自身を誉めてあげるようにすると良いと思います。
誉めることで少しずつ自信が付き、それがやがて幸せにつながっていくと思います。


というわけで、猫の写真とともに心理学三大巨頭の名言をじっくりと読んでいきました。
猫の写真もどことなくそれぞれの名言を連想させるようなものになっていました。
気軽に読める内容なので気になる名言はまた後で読んでみようかなと思います。


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