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夏休み

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昨日8月8日から私は夏休みに入りました。
今年は16日までの9連休で、世間的にもお盆休みの時期を迎えています。
四季の中で夏が一番好きな私も少し外を歩くだけで汗ばむ暑さは辛く、休めるのは嬉しいです

今日は普段とは街の雰囲気が違うのが印象的でした。
人の流れ方や漂う空気が違い、どこか華やいだ楽しそうなものを感じました。
新型コロナウイルスの脅威はあってもこの雰囲気が見られたのは良いなと思いました。

私は例年なら埼玉県の実家に帰省しますが、今年は東京の新型コロナウイルスの状況が怖いので断念しました
私が東京でウイルスに感染して帰省したら実家が危機に晒されると思いました。
東京の状況がもう少し落ち着いていれば帰省したかも知れませんが、私より体力の少ない家族のことを考えると今の状況では迂闊に動けないと思いました。
「ウィズコロナ(コロナと共に生きる)」や「アフターコロナ(コロナの混乱の後)」といった言葉も登場し、以前に比べれば大した問題ではないという雰囲気もありますが、まだ特効薬がなく、感染して発症するとただでは済まないのは無視出来ないてす。

今年の夏は中国地方で瀬戸内海を眺めたりもみじ饅頭を食べたり、小説を読んだり音楽を聴いたりしながらゆっくり心身を休めます
夏休み明けに向けて、適度にウォーキングをして暑さの中で歩ける体も維持しておきたいです。
書く気力の戻ってきたブログもそれなりに書いて行ければと思います。
ゆっくり過ごしながら普段とは違う時間の流れを楽しみたいです

「むらさきのスカートの女」今村夏子

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今回ご紹介するのは「むらさきのスカートの女」(著:今村夏子)です。

-----内容-----
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し、その生活を観察し続ける。
狂気と紙一重の滑稽さ。
変わりえぬ日常。
〈わたし〉が望むものとは?
デビュー作「こちらあみ子」で三島由紀夫賞受賞。
第二作「あひる」が芥川賞候補となり、河合隼雄物語賞を受賞。
第三作「星の子」でも芥川賞候補となり、野間文芸新人賞を受賞。
唯一無二の視点で描かれる世界観によって熱狂的な読者が増え続けている著者の代表作。
2019年7月期、第161回芥川賞受賞作。

-----感想-----
今村夏子さんの小説を読むのは今回が初めてでした。
昨年の夏、書店でこの作品が芥川賞受賞作として平積みされているのが目に留まり、作者が中国地方の広島県出身ということもあり興味を持ち購入しました。
しかし当時は小説を読む気力がなくなっていた時期で、その後もなかなか気力が戻らず一年後の今やっと読むことが出来ました。
デビュー作から次々と文学賞を受賞し、ついに芥川賞受賞まで上り詰め、小説界のサラブレッドのような人だと思います

作者名の「今村」と「夏子」はとても印象的でした。
昨年の1~5月にかけて世間の注目を集めた、新潟県を中心に活動するアイドルグループNGT48で起きた暴行事件に敵方で登場した人達の名前です。
なので一瞬「えっ」と思いましたが、さすがに名前に罪はないなと思い読み始めました。

冒頭、主人公の家の近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれる人が居ることが語られます。
いつ見かけても紫色のスカートを穿いているとのことで、「むらさきのスカートの女」という呼ばれ方からも不気味な人であることが伺われました。
主人公は女性で、常にむらさきのスカートの女を観察していて自身のことは「黄色いカーディガンの女」と称しています。

むらさきのスカートの女は近所でかなり有名な存在で、この人が現れるとみんな色々な反応をするとありました。
知らんふりをする者、サッと道を空ける者、良いことあるかもとガッツポーズをする者、反対に嘆き悲しむ者(一日に二回見ると良いことがあり、三回見ると不幸になるというジンクスがある)の四つに大別されるようです。

むらさきのスカートの女にはどんなに人通りの多い時間帯でも決して誰にもぶつからずスイスイ人込みをすり抜けていく得意技のようなものがあります。
中にはわざとぶつかりに行く人もいますが成功した人は誰もいないとのことで、幽霊みたいな人だなと思いました。
また子供達の間では、ジャンケンをして負けた子がむらさきのスカートの女の肩にタッチして逃げるという遊びが流行っていて、老若男女問わず普通ではない存在と見られているのが分かりました。

主人公は毎日むらさきのスカートの女のことを観察していて、「友達になりたいと思っている」と胸中で語っていました。
私はそれを見て、さすがにただ興味があるだけで一日中観察するのは異常だと思うので、そういった思いがあって少しだけホッとしました。
しかし害を加える気がなくても友達になりたいだけで毎日観察するのはやはりまともではない気がし、そういうのは監視と言うのではと思いました。
エスカレートするとストーカーになりかねないとも思いました。

主人公の近所の公園には、「むらさきのスカートの女専用シート」と呼ばれる座る場所があります。
そして主人公は日頃の観察によってむらさきのスカートの女がどんな日にそこに座るかも分かっています。
間もなくそこに座るのが分かっていたある日、専用シートのことを知らないスーツ姿の男がそこに座りましたが、主人公は事情を話してどいてもらおうとしていました。
私はそれを見て狂気じみているなと思いました。
公園は公共の設備なので、どのシートに座るかはその人の自由です。

むらさきのスカートの女が専用シートに座って食べたクリームパンは描写を見て美味しそうだなと思いました
少し固めのカスタードクリームと薄いパン生地が特徴で、上には焦げたスライスアーモンドがたっぷり載っているとありました。
アーモンドの部分は口に入れるとパリパリと良い音がするとあり、クリームパンのしなやかな食感との良いアクセントになると思います。
そしてパン生地が薄いと自然とカスタードクリームが多めになるはずで、カスタードクリーム好きな私には嬉しいです。

主人公は何と、資金繰りが苦しくなって家賃が払えなくなっています。
むらさきのスカートの女の観察をしている場合ではないのではと思いました。
この辺りまで読んでいるうちに主人公の異様さが面白いなと思い、いったいむらさきのスカートの女への思いはどうなっていくのか気になりました。

主人公は仕事を探すむらさきのスカートの女のために求人情報紙を取って来て専用シートに置いておいてあげたりもします。
やがてむらさきのスカートの女が面接に受かって働くことになりますが、事務所に入って制服を渡される様子などが詳しく描写されていて、主人公の働く職場だと分かりました。
ホテルの部屋の清掃の仕事で、自己紹介でむらさきのスカートの女の名前が日野まゆ子だと分かりました。
それまで不気味に描かれていたのでどうなるのかと思いましたが、まゆ子は意外にも先輩達から気に入られます。
チーフ陣と呼ばれるリーダー的な人達とまゆ子が話している時に権藤チーフという人が居て、この人が主人公でした。

勤務初日の夕方、公園に行ったまゆ子は何と今まで馬鹿にされていた子供達と一緒に鬼ごっこをして遊んで仲良くなります。
その様子を観察していた権藤の「見学していただけなのに、のどがからからに渇いていた」という言葉は印象的でした。
今までは観察するとともにどこかで「行動パターンは予測出来る」と思っていたまゆ子が手の届かない遠い場所に行ったように感じたのではと思いました。

事務所の所長がまゆ子に話しかけ、チーフ陣の名前を次々と挙げ全員個性が強烈と言っている中に権藤の名前が出てこないのは印象的で、あまり存在感がないのかも知れないと思いました。
チーフ陣の中でも特に個性と発言力が強い塚田チーフがまゆ子のことを凄く信頼したのも印象的で、まゆ子が順調に働いて行けるのを決定付けました。
一方の権藤は他のチーフ達の話の輪に入れてもらえず邪険にされているのが分かりました。

所長はまゆ子の姿勢を買い、いずれチーフにしたいと思っていることを告げ、冒頭の不気味さからは考えられないようなことなのでこれには驚きました。
まゆ子がこの仕事をずっと続けたいと考えてくれているのが嬉しかったとありました。
ある人の思いが他の人に良い影響を与えるのは素晴らしいことだと思います。
権藤は変わらずまゆ子と友達になりたいと思っていますが、読んでいてその画策ぶりに狂気を感じました。
まともに話しかけてお話をしながら仲良くなっていくことが出来ず、画策をして無理やり友達になろうとするのは歪んでいると思います。

まゆ子が異例の早さでトレーニング期間を終了し、一人で部屋の清掃が出来るようになります。
休みの日の過ごし方も今までより出歩く回数が増えて活動的になり、公園の子供達からはまゆさんと呼ばれ親しまれるようになります。
働き始めて2ヶ月が過ぎようとしていて、不気味なむらさきのスカートの女は今や優秀な清掃スタッフとして一目置かれ、子供達からも親しまれ、まさに絶頂期を迎えたように見えました。
しかし栄光は長くは続かず転落が待っていました。

まゆ子が所長と付き合っているという噂が立ち、これも最初の頃のまゆ子のイメージからは考え付かないことで驚きました。
権藤は噂が本当なのか確かめようと尾行していて、凄い執着だと思いました。
この作品は最初はむらさきのスカートの女の異様さを描いた小説だと思いましたが、実際には権藤の異様さが描かれていると思いました。

やがてまゆ子が所長の愛人になり時給も不当に高くしてもらっているという噂が広まり、チーフ陣から無視されるようになります。
そしてまゆ子はきつい香水を付け爪にはマニキュアを塗るようになり、私はそれを見て外見が派手になったのとは対照的に破滅が近いと思いました。
終盤の展開は衝撃的で、まさかこんなことになるとはと驚きました。


今村夏子さんは同じ芥川賞作家でも綿矢りささんなどに見られるような秀逸な比喩表現をするタイプとは違い、作品全体の世界観で魅せるタイプの作家さんという印象を持ちました。
私は今村夏子さんの世界観なら扱う題材によってはいずれ直木賞も狙えるのではと思いました。
芥川賞は純文学小説、直木賞はエンターテイメント小説で求められるものは違いますが、両方を手に出来る可能性を秘めた作家さんな気がします。
本屋大賞もいずれ受賞しても不思議はないと思うので、これからの益々の活躍を楽しみにしています


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「サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」」(ピアニスト:森嶋奏帆)

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(森嶋奏帆さん。写真はネットより)

今回ご紹介するのは「サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」」(ピアニスト:森嶋奏帆)です。

-----曲調&感想-----
フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスの曲の演奏を、私は2018年12月の「エリザベト音楽大学 フルートオーケストラ 第30回記念演奏会」で初めて聴きました。
その時に聴いたのは「動物の謝肉祭」という曲で、演奏とナレーションが交互に進む変わった曲でもあったことから、作曲者に興味を持ちました。
どんな人物なのか調べてみると、勲章も受章して葬儀が「国葬」で行われたほどの物凄く偉大な人だということが分かりました。
また、エリザベト音楽大学では2016年にサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」が演奏されたことを知り、どんな曲なのか興味を持ちました。
一番最初に聴いた森嶋奏帆さんというピアニストによる演奏が良かったので、その演奏動画を元にご紹介します。


(ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」。ピアニスト:森嶋奏帆さん、オーケストラ:洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団)


曲全体の印象

とても爽やかな曲です
音色に清涼感があり、暑い時期にBGMとして流しておけば風鈴代わりになる曲だと思います
サン=サーンスがエジプト滞在中に作曲し、曲調にも随所にエジプトのアラビアンな雰囲気が見られます。
また「エジプト風」という愛称が付いていて、その愛称のとおり風が吹いているような音色が特に印象的で、派手さよりも「流れるような美しさ」で魅了する曲です



第1楽章(~13:07)

冒頭、ピアノのとても可憐で優しく美しい音色で始まります。
クラシック音楽で「主題」と呼ばれるメロディで、しばらくするとまた登場する、その楽章の中心となるメロディです。
ピアノに続いてヴァイオリンも主題演奏をし、こちらは特にフワッ、フワッと風がそよいでいるように聴こえます
美しさが前面に出た音色がしばらく続きます。

オーボエ、ファゴット、クラリネット、フルートの管楽器によるアラビアンな響きの演奏があります。
それを合図にピアノ中心の高音のゆったりとした演奏になります。
何かの物思いにふけっているようにも聴こえ、安らぎとともに少し寂しさを感じるのが印象的です。

ピアノが「タン、タタタ、タン」と華麗に舞踏を舞っているかのような雰囲気の演奏をします。
その後束の間、力強く情熱的な演奏になり、「華麗に舞踏」から「情熱のステップ」に変わった印象を受けます。

やがて冒頭の主題の演奏がもう一度登場します。
今度は演奏の仕方を変え、フルートを中心に管楽器が牽引し、ヴァイオリンを中心に弦楽器が呼応し、ピアノは伴奏のような演奏になります。
そこからピアノが主旋律、管楽器と弦楽器が伴奏のような演奏に回って主題演奏を繰り返していて、これらの変化によって冒頭の時よりも音色が多彩に聴こえます。

全体が管楽器を中心に少し物憂げでミステリアスな音色になります。
ピアノはしばらく「ポロロロロー」という風のそよぎのような演奏をしていき、その音色の中に濃淡があり風の吹き方が変わっています。

最後はそよいでいた風が止むかのように優しくそっと終わります。



第2楽章(13:24~25:34)

迫力とミステリアスさ、さらにはドラマチックさもある音色で始まります。
ピアノの音色が高音からどんどん下がって行くところがミステリアスさを増していて良いと思います

やがて淡い雰囲気で夢見心地のような、静かな音色になります。
その時のピアノの音色がまるで静かに木琴でも叩いているように聴こえるのが印象的です。
しばらくの間、ミステリアスさが顔を覗かせながら静かな音色が中心になります。

曲全体の中でも特に良い音色になる場面を迎えます。
穏やかに風が吹いているような爽やかで優しい音色で、気持ちが安らぎます。
同じ音色をピアノ中心、ヴァイオリン中心、ピアノ中心の順に演奏して行き、その次のヴァイオリン中心の時に一番雄大で良い音色になります
高音がとても綺麗で、風がフワーッと吹き抜けて行くようです。
気持ちを爽やかに、そして明るくさせてくれる音色だと思います。

圧倒的な爽やかさの余韻に浸るような音色の後、また静かめでミステリアスさの漂う音色になります。
ヴァイオリンを中心に弦楽器が小刻みな演奏をしてミステリアスさを際立たせます。
そのミステリアスな雰囲気のまま、静かに第2楽章が終わります。



第3楽章(25:37~31:29)

ピアノの明るくスピードのある演奏で始まります。
そこからさらに明るくなり、陽気で楽しそうな雰囲気の音色です

弾むようなリズミカルさが特徴の主題の音色が登場します。
「タッタッタータ タータタタッタッター」のリズムが特に印象的です。
最初はピアノがそのリズムを演奏しますが、その次にフルートなどの管楽器が演奏する時、ピアノはハープを高速で奏でているような柔らかい音色で伴奏をしていて、その雰囲気が良いと思いました。

「蛇使い」が思い浮かぶようなアラビアンな音色になります。
オーボエが大活躍していて、フルートなどに比べるとくぐもった響きの音色がアラビアンな雰囲気を出すのに向いている楽器だと思います。

曲の終わりが近付き、主題が再び演奏される場面を迎えます。
管楽器が次々とリズミカルに演奏をして行き、その最後をピアノが引き取って、ピアノで主題演奏をします。
ピアノの後はヴァイオリンなどの弦楽器を中心に大音量での主題演奏になり、迫力が凄いです

最後は大迫力の中、「タッ、タッ、タッ!!」で突然切るように終わるのが印象的です。
終盤で吹いた強い風がピタッと止むのが表現されているように思います。


サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」はまだ生演奏を聴いたことはないです。
派手な音色や迫力のある音色になる場面が少なくても魅了される音色の美しさが印象的で、もしこの曲が演奏されるとなればぜひ聴きに行きたいです。
きっと演奏会場に爽やかな音色の風が吹き、聴いている人もとても爽やかな気持ちになるのではと思います。
いずれどこかの演奏会で聴けることを楽しみにしています



関連記事
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「長谷川玲奈 1st写真集 一瞬の光」

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今回ご紹介するのは「長谷川玲奈 1st写真集 一瞬の光」(著:長谷川玲奈)です。

-----内容-----
アイドル活動を経てアニメ・ゲーム・外画の吹き替え等で活躍中の新人声優・長谷川玲奈初めての写真集。
光のように過ぎ去る10代。
非凡なる光をまとい、表舞台を走り切った彼女は今、新たな艶を帯び一段と彩光を増す。
10代最後の一瞬を焼き付けた400枚の永遠がここに。

-----感想-----
一般的に長谷川玲奈さんという名前を聞いて、どんな人物なのかすぐに分かる人はまだ多くはないのが実情ではと思います。
長谷川玲奈さんは、昨年1~5月にかけて大々的にテレビなどでも取り上げられ世間の注目を集めた、新潟を拠点とするアイドルグループNGT48の山口真帆さん暴行事件において、一貫して山口真帆さんに味方し、暴行事件を山口真帆さんのせいにしたい人達と戦ってくれた人です。
最終的に、被害者でありながら半ば追い出される形でグループを卒業することになった山口真帆さんとの友情・義を貫き、自らのアイドル生命が絶たれることになっても一緒に卒業する道を選びました。


(2019年5月18日の卒業公演後、三人で手をつなぐ左から長谷川玲奈さん、山口真帆さん、菅原りこさん。
アイドルとして最後の日でした。)

舞台「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」の感想記事で同様のことを書いた時、菅原りこさんについて「義に厚い戦国大名上杉謙信が思い浮かぶくらい大変感銘を受けた」と書きましたが、”越後の龍”上杉謙信はもう一人居て、それが長谷川玲奈さんです。
グループ卒業後はクロコダイルという声優事務所に移籍し、アイドルから声優に転身して活動することになりました。


(抱き締め合う左から長谷川玲奈さん、山口真帆さん、菅原りこさん。
この姿に並々ならぬものを感じました。)

まるで上杉謙信のような立ち居振る舞いがとても印象的だったことから、私は長谷川玲奈さんという人個人にも興味を持ちました。
そして今回初の写真集が発売されることになり、元々モデル適性も高い気がしていたのでこれはぜひ見てみようと思いました


写真集全体の印象
長谷川玲奈さんの見せる表情がとても豊かです
天真爛漫な印象で、どの表情にも魅力があります。
写真集には「一瞬の光」というタイトルが付いていますが、その中でさらに「Ivory Light(白系色の光)」と「Ebony Light(黒系色の光)」があります。
撮る写真のテーマごとに章になっていて、それぞれの章が「Ivory Light」か「Ebony Light」の写真で形作られるという凝った作りになっています。


Ivory Light last summer(morning sea)
朝の海をテーマにしていて、この章は白のタンクトップにブルーのデニムショートパンツという衣装です。
冒頭の砂浜で座って遠くを見ている写真が良かったです
髪を後ろに流していて、前髪も同じように流し、そうすると爽やかさと凛々しさを併せ持ったかなり格好良い雰囲気になり、希望も感じました。
冒頭の写真では羽織っていませんが、この章では白のシースルーの羽織ものを羽織っている写真もあります。

浜辺での写真が次々登場し、打ち寄せてきた波を蹴っている写真などもあり、とても躍動感がありました。
何より本人が明るく楽しそうで見ているこちらも楽しくなります

浜辺での写真の最後、唐突にしっとりとした雰囲気になるのが印象的でした。
体育座り(三角座り)で、横からの構図で顔をこちらに向けていました。
それまでの無邪気さから一転し、大人の雰囲気が顔を覗かせたように見えました。


Ivory Light last summer(riverside)
川の近くをテーマにした章で、白のタイトスカート、ベージュのキャミソール、白のシャツという衣装でした。
長谷川玲奈さんは脚が長くて美脚という特徴があり、1枚目の鉄塔をバックにすらりと立っている全身写真の脚の長さが際立っていました


(昨年7月、ホテルのロビーにある椅子に座って微笑む長谷川玲奈さん。
この時にとても美脚だなと思いました。)

衣装コーディネイトがかなり似合っていて、スカート、キャミソール、シャツともに目立つ模様や刺繍などもなくシンプルでしたが、そのシンプルさが知的な雰囲気を醸し出していました。
こういったコーディネイトは長谷川玲奈さんのモデル適性の高さがあるから引き立つのではと思います

時折見せるはにかんだ笑顔が良かったです。
田んぼで帽子をかぶってしゃがんでいる写真のくしゃっとした笑顔も良く、無邪気さを感じました。
また、アスファルトにできた水溜まりにしゃがみ込む写真にはクールさを感じました。


Ivory Light last summer(white night)
冒頭の写真集表紙の写真と同じ衣装で、白キャミソールで髪をカジュアルなお団子にしています。
1枚目のナチュラルな笑顔が良く、明るく平和的な印象を受けました。

左手をつっかえにしてこちらを見て穏やかに頬笑む写真も良く、アーモンド形の目に引き込まれました
思いっきり笑っている写真もあり、屈託がなくて無邪気で良いなと思いました。
他にもはにかんだ笑顔、いたずらっぽい笑顔などもあり、笑顔が印象的でバリエーション豊かで天真爛漫さがあります。
そして時折見せる胸に秘めたものがありそうな表情も良かったです。


Ivory Light last summer(appointed day)
真っ白なドレスを着ていて、ウエディングドレスのようにも見えかなり似合っていました
「撮影協力」に名前の載っている新潟県胎内市(長谷川玲奈さんの出身地)の「ロイヤル胎内パークホテル」での撮影で、写真集表紙の写真の髪型に小さな可愛らしいティアラ(冠)を載せていました。


(ガオーッのポーズをする長谷川玲奈さん。ドレス姿でこの椅子に座っている写真もありました。)

新緑のもみじの木の下にたたずむ写真が良かったです。
黄緑色のもみじの葉が日差しを浴びて輝き、白のドレス姿の長谷川玲奈さんに高潔感がありました

田んぼをバックにトラックの荷台に立つ写真も良かったです。
微笑みながら前方を指差していて、田んぼ、トラックとドレスの組み合わせがシュールでした。
前方を指差すような躍動感のあるポーズは、天真爛漫さのある長谷川玲奈さんによく似合うと思います。

トラックの番号が「れ 03‐15」で長谷川玲奈さんの名前と誕生日(3月15日)になっているのが面白かったです。
とうもろこしを食べながらはにかんでこちらを見る写真も良く、いたずらっぽい雰囲気が出ていました。


Ivory Light last summer(private secrets)
新潟県胎内市にあるJR中条駅を中心に撮影していて、高校の制服の衣装でした。
白の半袖シャツにグレーのスカートで、かなり似合っていて昨年の春先まで高校生だったので違和感がないです。
髪型は学生らしくシンプルに後ろで一つに結んでいて、スクールバッグを大きく振りながら歩く様子はまさに活発な少女でした。

1枚目の写真が良く、正面からの構図で左肩にスクールバッグがあり、右手で押えそこに左手を添えていて、駅を歩く女子高生の姿です。
そして長谷川玲奈さんが持つ雰囲気によって、その姿には威風堂々や清心という言葉が思い浮かびました

最後のページの写真は夜の神社と思われ、灯籠のオレンジ色の光を浴びていました。
スクールバッグを両手で前に持ちこちらを見ている写真には神秘さを感じました。
両手で頬杖をついて物思いに耽っている写真もあり、学校帰りにはそうしたい日もあると思います。


Ebony Light next summer(old light)
神社での撮影で、赤いショート丈のワンピースと赤いヒール姿で、髪は下ろしていてワンレングス(パッツンと同じ長さに揃える)のストレートになっていました。
神社の緑色の草木や焦げ茶色の木の幹、苔むした階段の中にあって赤色はとても目立っていました。
あまりに周囲と違う色に一瞬合成ではと思うほどで、しかし間違いなくそこに存在しています。
そしてこれが構成の狙いだと思いました。
静謐な神社の雰囲気の中にあって、非現実的な雰囲気の長谷川玲奈さんに強烈に引きつけられます。

神社に向かって階段を上りながらの見返り美人の写真が良く、クールビューティーな雰囲気でした。
もう一枚印象的な見返り美人の写真があり、そちらは目に情感が宿り何かを言おうとしているように見えました。
神社で手を合わせる写真も良く、横からの構図でこちらを向いて軽く微笑んでいて、とても神聖で品があると思いました。
神聖さや品とは違うタイプの衣装でも写真を見る人にそう思わせるのは凄いことで、本人が持つ素養です


(今年6月にツイッターにアップされた、美容室で髪を切った時の写真。
品があると思います


Ivory&Ebony Light this summer(vacation)
家で夏休みをくつろいで過ごすのを中心にした章です。
白のノースリーブタンクトップに猫の柄入りのピンクのショートパンツという衣装で、髪はトップをお団子にし、それ以外は下ろしサイドにはウェーブがかかっていました。


(長谷川玲奈さんの写真集PR公式ツイッターの写真。
うちわを持ち、この写真にも夏休みの雰囲気があります

1枚目の写真に驚き、まるで別人のような表情で上品なギャルという言葉が思い浮かびました。
とても大人びて見え、こんな表情もできるのかと思いました。

かき氷器でかき氷を作って食べていく様子の写真がたくさんあり、かなり楽しそうで見ている方も楽しくなりました
見開き2ページの、寝そべりながらこちらを見ている写真は一転してじっと見つめてくる表情になっていて、かき氷の楽しそうな写真からの変化が印象的でした。

この章だけIvory&Ebony Lightになっているという特徴があり、途中でピンクのハーフパンツはそのままで、上が襟元が四角に開いた黒のタンクトップに変わります。
1枚目が膝を抱えて座りながらこちらを見つめている写真で、右手で右頬に触れながらの写真で、一気に大人びたシックな雰囲気になりました。

左からの横顔写真が特に印象的で、肩から上のアップの構図でこちらを見ていて、その目力が凄かったです。
こんなにシリアスな表情にもなるのかと驚きました。

外を歩く写真ではカジュアルでシンプルなサンダルを履いていて、その場面では笑顔を見せていました。
笑うと一転して家の近所を楽しそうに歩く少女の雰囲気になるのが印象的でした。


Ebony Light next summer(sweetroom)
黒のキャミソールワンピースで髪型はゴージャスなお団子で、ロイヤル胎内パークホテルの一室での撮影です。
1枚目は壁に寄りかかってこちらを見ているとてもシックな雰囲気でした。

白いカーテンにくるまって遊んでいる写真があり、そのカーテンを開いて登場する時の顔が印象的でした。
笑顔ですが何だかすまなそうな雰囲気もあり「泣き笑い」の表情にも見え、これも天真爛漫さを彩る良い表情だと思います。


(この章の衣装が写真集の裏表紙になっています。)

見開き2ページで、ベッドに横になってこちらを見る写真が3回ありました。
1回目はシリアスにこちらを見ていて、2回目はやや魅惑的に見ていました。
3回目は何とも言えない表情をしていて、表情がないように見えてその顔は何かを言おうとしているように見え、こちらの心の奥底を覗き込むような目が印象的でした。

ベッドに寝そべった状態でカメラから視線を外した写真が印象的で、どこか寂しさを感じました。
同じ雰囲気の写真がたまに登場していて、私は良いと思います。

ベッドにダイビングする写真もあり、連続のコマ送りのような撮り方をしていました。
とても楽しそうにダイビングしていてこちらも楽しくなります

ベッドに寝ているのを横から撮る写真で、ここでも全く別人なのではという雰囲気の写真がありました。
無邪気さとは対極のシリアスな雰囲気で、黒い衣装がその雰囲気を一際引き立てていると思います。


Ebony Light next summer(sunset)
最後は黒のへそ出しのトップスに黒のショートパンツで、黒のシースルーの薔薇の刺繍入り羽織ものを羽織っていました。
髪はナチュラルなストレートですが前髪を分けているので雰囲気が変わり、大人な雰囲気に見えました。

砂浜で海を背後に左斜め前からの構図で、長谷川玲奈さんが左斜め上を見上げている全身写真がとても良かったです。
夕方の時間帯で景色はセピア色のようになっていて、どことなくもの悲しくもありますが美しさを感じます。
写真全体の構図も良く、下側は砂浜、真ん中は海、上側は空で、同じセピア色のような雰囲気の中でそれぞれのパステルカラーが良いグラデーションになっていました

写真集の冒頭と最後がどちらも浜辺での撮影なのは印象的でした。
冒頭は白の衣装で朝の浜辺でしたが最後は黒の衣装で夕方の浜辺で、対極になっています。

背後からの構図で長谷川玲奈さんが海を見ている写真も印象的でした。
広大な海に長谷川玲奈さんの可能性が無限に広がっているように見えました。

海で水浴びをしているのがとても楽しそうで、楽しそうな表情がとても生き生きする人だと思います
海に向かって水切りの石を投げる連続写真も楽しそうに笑いながら投げていました。

浜辺に足を投げ出して座り両手を後ろにつき、くつろいだ雰囲気で横(こちら側)を向いている写真は澄んだ顔が印象的でした。
また、体育座り(三角座り)を崩した状態で左腕を左脚に載せて遠くを眺めている写真が良く、ストレートの髪が風でなびき表情にも風格があり、大人の顔だと思いました。
やや濡れ髪状態で右横からの上半身アップの構図でこちらを見つめている写真も良く、しっとりとした雰囲気で本当に表情が多彩だと思いました。

最後は正座を崩した座り方で、両手を前についてこちらを見ている写真でした。
最後の1枚を長谷川玲奈さんの特徴である生き生きとした笑顔にしなかったのは印象的でした。
表情を見ると無邪気さやもの悲しさ、楽しさなどがないまぜになった、「浜辺で遊んでいてふとこちらを見て、何かを言おうとしている一瞬を収めた写真」のように見えました。
後ろのザブーン、ザブーンと打ち寄せる波の雰囲気ともよく合っていて、この写真集がまだまだ続くのではと思わせてくれる良い終わり方だと思いました


巻末のインタビューでは、母親に「自分がされてイヤなことを人にしてはいけない」と言われて育ったとあったのが印象的でした。
長谷川玲奈さんの上杉謙信を思わせるような立ち居振る舞いを形作ったのではと思います。
事務所がサポートをしてくれて声優のレッスンをたくさん受けることができたとあり、良い事務所に入れて良かったと思いました。
マルチに活動できる声優になりたいとも語っていて、もしかしたらこの先舞台に登場したりすることもあるかも知れないと思い楽しみになりました。
そして「あなたにとっての永遠の光でありたい」という言葉が印象的で、ずっと輝き続けるという決意表明にも見えました。


「一瞬の光」には興味深い特徴があり、Ivory Lightの章には「last summer」、Ebony Lightの章には「next summer」というタイトルが付いています。
last summerは過ぎて行った夏のことなので、明るさや無邪気さといったこれまでの等身大の自身を表現し、next summerはこれからの夏のことなので、シックな大人の雰囲気になった自身を表現しているのかなと思いました。
そして一つだけあった「this summer」は今年の夏(今)で、Ivory LightとEbony Lightが両方あったことから、今は無邪気さと大人っぽさが混在しているということではと思います。
タイトルが示すように、10代後半の青春時代は一瞬で過ぎて行きます。
写真集を通してそんな一瞬の中に居る長谷川玲奈さんの様々な姿を見ることが出来て嬉しく、またこれから先の歩みで新たな一瞬の光を見せてくれるのも楽しみにしています



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夏の終わりと秋の訪れ

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9月も後半を迎え、最近は朝晩目に見えて涼しくなりました。
朝起きて窓を開けた時に入って来る空気が印象的で、真夏の時期は外の空気を入れつつ冷房もつけていたのが、昨日や今日は外から入って来る空気の涼しさだけで快適に過ごせました
最高気温も真夏日(30度以上)にならない日が続くようになり、すっかり秋だなと思います。
空にも秋らしく薄い雲が高い位置に出るようになりました。

6月下旬に今年初めて聞こえたニイニイゼミの小さな鳴き声も、7月30日の中国地方梅雨明けの日、それまでより遥かにたくさん鳴いたクマゼミの鳴き声も、今ではすっかり聞こえなくなりました。
かろうじて鳴いているツクツクボウシも数は少なく、鳴き声も心なしか元気がないように聞こえます。
既に空は秋色で最高気温も下がって来ているため、「夏の名残りの最後」のようにも見え寂しく感じます。

8月の半ば頃から目立つようになった秋の虫の鳴き声は今、爽やかになった空気に乗り朝晩をより涼しく感じさせてくれています。
そんな秋の虫も10月になり寒さが目立つようになると一気に数が減ってくるので、鳴き声のピークは初秋の9月のうちなのではと思います。
たくさん鳴き声が聞こえる期間もあと少しと思うとセミと同じで寂しく感じ、それと同時に本格化する秋を意識します。

今年は十五夜が10月1日、十三夜が10月29日で、どちらも10月にあります。
その頃には今よりさらに空気も澄んで、晴れればとても綺麗な月が見られると思います
そして中国地方も十三夜の頃には紅葉が見られるようになっていると思います
秋の虫、綺麗な月、紅葉と魅了されているうちにどんどん秋は進んで行くのだなと思います。
はっきりと顔を現した「秋」の進みに置いて行かれないように、しっかり付いて行きながら楽しみたいと思います

「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦

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今回ご紹介するのは「四畳半タイムマシンブルース」(原案:上田誠、著:森見登美彦)です。

-----内容-----
炎熱地獄と化した真夏の京都で、学生アパートに唯一のエアコンが動かなくなった。
妖怪のごとき悪友・小津が昨夜リモコンを水没させたのだ。
残りの夏をどうやって過ごせというのか?
「私」がひそかに想いを寄せるクールビューティ・明石さんと対策を協議しているとき、なんともモッサリした風貌の男子学生が現れた。
なんと彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。
そのとき「私」に天才的なひらめきが訪れた。
このタイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってくればいい!
小津たちが昨日の世界を勝手気ままに改変するのを目の当たりにした「私」は、世界消滅の危機を予感する。
史上最も迂闊な時間旅行者(タイムトラベラー)たちが繰り広げる冒険喜劇!
「宇宙のみなさま、ごめんなさい…」

-----感想-----
この作品は「サマータイムマシン・ブルース」という演劇作品を原案にしています。
森見登美彦さんの小説でタイトルに「四畳半」が付くのは「四畳半神話大系」「四畳半王国見聞録」に続いて3作目となります。
作品の舞台は京都、主人公は大学3回生の「私」で、「四畳半神話大系」の時と同じ主人公のようです。
「京都に住む大学生」が主人公なのは森見登美彦さんの作品の王道だと思います

物語の最初の2文に「ここに断言する。いまだかつて有意義な夏を過ごしたことがない、と。」とあり、自信満々な雰囲気で悲観的なことを言っているのが森見登美彦さんらしいと思いました。
あまりの暑さで今年も有意義な夏を過ごせない無念さを「嗚呼、夢破れて四畳半あり。」と言っていて、「国破れて山河あり(国が滅びても山や川は変わらずにある)」のパロディにしていたのが面白かったです。

「私」が住んでいるのは下鴨幽水荘という四畳半アパートで、森見登美彦さんの作品に何度も登場しています。
森見登美彦さんは正方形の「四畳半」にかなりのこだわりがあるようで、何らかのアパートの部屋が登場する時は大抵四畳半です。
「私」の隣の部屋には樋口清太郎というおおらかで世の中を達観した雰囲気の人物が住んでいて、他の作品にも登場することがあります。
「四畳半にウッカリ墜落した天狗」「樋口氏のごとき天狗的人物」といった描写もあり超人のように見られています。

「私」には小津という悪友がいて、小津も他の作品に登場することがあります。
小津の不気味さの描写が面白く、次のようにありました。
「夜道で出会えば、十人中八人が妖怪と間違う。残りの二人は妖怪である。弱者に鞭打ち、強者にへつらい、わがままであり、傲慢であり、怠惰であり、天の邪鬼であり、勉強をせず、誇りのかけらもなく、他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える。およそ誉めるべきところが一つもない。」
「残りの二人は妖怪である」が面白く、そして全部が酷い言われようだなと思いました

下鴨幽水荘には「私」の住む209号室にだけ先住民が大家に無断で設置したクーラーがあります。
ところが真夏の8月11日、小津がクーラーのリモコンにコーラをこぼして壊してしまい、部屋が物凄く暑くなります。
物語の冒頭はその翌日の8月12日で、「私」が部屋で小津に文句を言い、小津が反論して二人でじゃれ合いのような言い争いになっているところに、明石さんという二人の一年後輩の女子がやって来ます。
登場シーンが面白く、言い争う二人を見て「仲良きことは阿呆らしきかな」とクールに言っていました。
明石さんと小津は学内映画サークル「みそぎ」に所属していて、明石さんはクールな佇まいとは裏腹に全くクールではないポンコツ映画を作ることで知られています。
そして二人とも樋口の弟子を名乗っていて、特に小津はよくアパートの樋口を訪ねて来るのでそのついでに「私」を訪ねることがあります。

映画サークル「みそぎ」は城ケ崎という男がボスをしていて、「私」は尊大な態度で振る舞うこの男が嫌いです。
また、近所の歯科医院に務める羽貫さんという陽気な女性も登場し、樋口、城ケ崎、羽貫の三人は古くからの友人とのことです。

森見登美彦さんの文章には「偉そうでありながら滑稽」の他に「古風」という特徴もあります。
隣の部屋の樋口を「隣室の怪人」と表現していたのは面白かったです。
「怪人」表現は他の作品にも登場することがあり、私が読む作家さんでは変わった人のことを怪人と表現するのは森見登美彦さんだけです。
さらに他の作品にも登場する「先刻ご承知」という言い回しがこの作品にも登場していました。
また京都についての印象的な言葉もよく登場していて、今作では「下鴨神社糺(ただす)ノ森」や「五山送り火」などが登場しました。

明石さんが誰かと五山送り火見物に行くことを知り「私」と小津は驚きます。
「私」は明石さんから見た自身を「路傍の石ころ的存在」と思っていて、明石さんのことが好きでそこからの脱却を目指しています。
「路傍の石ころ的存在」も「夜は短し歩けよ乙女」という森見登美彦さんの作品で初めて見た面白い表現です。

アパートに全体的にモッサリした雰囲気の若い男が現れます。
モッサリ君はアパートの住人ではないのになぜか樋口のことを知っていて、しかし樋口はモッサリ君のことを知らず不思議がっていました。

「私」、小津、樋口、城ケ崎が近所の銭湯「オアシス」に行った時に次の言葉がありました。
我々は広い湯船につかってポカンとした。
短い文章の中に森見登美彦さんの特徴がよく出ていて、「我々は」の部分は少し偉そうにも見えますが「ポカンとした」で途端に間抜けな雰囲気になり、独特な文章を形作っています。

やがてアパートの物置きにタイムマシンのようなものが現れます。
その段落の終わりの文章が良く、次のようにありました。
やがて明石さんがぽつんと言った。
「タイムマシンだったりして」
恥じらうように小さな声だった。
物干し台の風鈴がちりんと鳴った。夏であった。
以前も段落の終わりに似たような、線香花火が消えていくような雰囲気の文章を見たことがあり、森見登美彦さんは段落の区切り方も上手いと思います。

小津が試しにタイムマシンを操作してみると「私」達の前から姿が消え、やがて戻って来てタイムマシンが本物だと分かります。
そして「私」達はタイムマシンで昨日に行き、リモコンを持ってくればまたクーラーを使えるようになると思い立ちます。
樋口、羽貫、小津の三人がまず先発で昨日に行くことになりましたが、「思いつくかぎり最悪の人選だった」とあり波乱が予感されました。

再びモッサリ君が現れ、タイムマシンに乗って25年後の未来から来たことを明かします。
モッサリ君は田村と言い、下鴨幽水荘のみんなでタイムマシンを作ったとのことです。
田村の父親も「私」達と同じ時代に京都に居て銭湯オアシスに通っていたとあり、父親が現在での誰なのかが気になりました。

「私」達は田村と話すうちに、リモコンを昨日から持って来るとリモコンにコーラがこぼれた結果としての「今日」が存在しなくなり、「私」達が消滅してしまうのではという懸念を抱きます。
そして「今日」の消滅はそのまま全宇宙の消滅になるのではという考えになります。
タイムマシンは帰って来ますが樋口達が乗っておらず、昨日が変われば全宇宙が消滅する危機を感じた「私」と明石さんも昨日に行くことになります。

昨日にタイムトラベルしてクーラーのリモコンで騒動になるのはくだらないことですが、宇宙が滅びかねない危機があるので「滑稽な緊張感」のような面白い雰囲気になっていました。
この作品では「今日」の中で謎の部分がありますが、タイムマシンで行った「昨日」で謎が解けていくのが面白かったです。
昨日と今日をタイムトラベルするので全く同じ文章が繰り返される構成になっていた場面は「既視感」が印象的でした。

「私」が大嫌いなはずの城ケ崎に共感した場面も印象的でした。
ともに逆境に立ち向かう仲間というものは、立場や性格の違いを超えて強い絆で結ばれるものである。
これは逆境に立ち向かっている間は共通の目的があるので、立場や性格が違っても共感する場合があるのだと思います。
そして逆境を切り抜けると共通の目的はなくなり、再び立場や性格の違いが顕著になるのではと思います。

終盤では田村の正体が明らかになり、「未来は自分で掴み取るべきもの」という良いことを言っていました。
この作品は終わり方が美しく、「成就した恋ほど語るに値しないものはない。」という言葉がとても印象的でした。
言葉自体が森見登美彦さんらしい偉そうな雰囲気が出ていますが、時空を越えた言葉でもあり、タイムトラベルを題材にしたこの作品を象徴していると思いました。


森見登美彦さんは好きな作家ですが1年近く読書が思うように出来なかった時期もあり、作品を読むのはかなり久しぶりになりました。
久しぶりに読む作品が森見登美彦さんの王道的な作品だったのは良かったです。
楽しく読むことができ、独特の文章を読んでいるうちに小説を読む楽しさを感じました
しばらく森見登美彦さんの作品を読めなかったうちに発売された作品が他にもあるのでいずれ読んでみたいと思います


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「DIVER-特殊潜入班- 第二話」

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(演技をする山口真帆さん。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのはドラマ「DIVER-特殊潜入班- 第二話」です。

-----内容-----
兵庫県内で5人の女子大生が相次いで自殺した。
匿名の通報により、全員が烏鷺谷(うろや)大学の学生・小野原光生(鈴木仁)が主宰するグルメサークルに所属していたことが分かり、兵庫県警本部長の阿久津(りょう)が、伊達(安藤政信)に潜入捜査チーム「D班」での捜査を命じる。
兵悟(福士蒼汰)が学生になりすまして構内を偵察していると、グルメサークルに興味があるという井川エリ(山口真帆)と出会う。
早速、兵悟はエリと一緒にサークルの会合に参加するが、サークルでは、一見、食に関する知識を学ぶ、健全な活動が行われている様子。
だが兵悟の推測によると、裏で主宰メンバーたちが暗示にかかりやすい人物を選別しているという。
しかし、小野原の狙いまでは分からない―。
このサークルの実態とは…。
さらにサークルの会合では、ある男が兵悟の動きを探っていた。
それは、身勝手な行動が多い兵悟を監視するため、伊達がひそかに送り込んだD班の新メンバー・将(野村周平)だった。
「何が正義で、何が悪か?」潜入捜査官チーム、通称”D班”が組織犯罪の闇に立ち向かう!

-----感想-----
9月29日、ドラマ「DIVER-特殊潜入班-」の第二話が放送されました。
「DIVER-特殊潜入班-」は身分を隠して犯罪組織に入り込み、組織の闇を暴く捜査官の物語です。
昨年アイドルから女優に転身して活動し始めた山口真帆さんが、第二話のゲストで登場すると知り興味を持ちました。
山口真帆さんのドラマ出演は今年1月の「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」の第一話ゲストに続いて二度目、また今年9月には舞台「走れメロス ~文豪たちの青春~」にも出演しています。

冒頭、暗い屋内で女性が息を切らしながら、丸い飴玉のようなものを食べるシーンで物語が始まります。
食べると息切れが収まっていて禁断症状に見えました。
すぐに女性は飛び降り自殺をして亡くなってしまいます。




(左から阿久津洋子(りょう)、黒沢兵悟(福士蒼汰)、佐根村将(野村周平)、伊達直哉(安藤政信))

D班の班長である伊達直哉の上司で兵庫県警本部長(県警トップ)の阿久津洋子から、女子大生の自殺者がこの半年間で、兵庫県内だけで5人目と語られます。
今回亡くなったのは烏鷺谷大学の学生で、5人は通っていた大学はバラバラですが、同じ高級風俗店に勤務していた共通点があります。
この場面を見ていて安藤政信さんもりょうさんもかなり演技が上手くて驚きました。
一つの台詞を言っている中にもしっかり濃淡がありました。




(犯罪組織に入り込むので、捜査官は危険と隣り合わせになります。)

阿久津洋子は伊達直哉に烏鷺谷大学のことを調べるように言います。
さらに匿名で通報が入り、5人とも烏鷺谷大学の学生が主催するグルメサークルに所属していたことが分かります。
グルメサークルを主催しているのは小野原光生(鈴木仁)という参議院議員の息子です。
サークルは週に何回か会合を開いていて、物語の主人公、黒沢兵悟が大学で潜入捜査をします。




(黒沢兵悟に声を掛ける井川エリ(山口真帆))

黒沢兵悟が問題のグルメサークル「ワールドグルメキャンプ」のポスターを見ていると、「これー、興味ありますよね?」と井川エリが声をかけてきます。
にこやかに声をかけていて甘い雰囲気が出ていました。
一人ではなかなか行く勇気がなくて、もし良かったら一緒に行かないかと言い、黒沢兵悟は「良いですよ」と承諾します。
黒沢兵悟の雰囲気が伊達直哉と話していた時の不遜な態度から、はにかんだ穏やかな大学生の雰囲気になったのが印象的で、流石に潜入のプロだと思いました。

二人が席についた時、黒沢兵悟の左手の腕時計にカメラ付き通信機が仕込まれていて驚きました。
カメラに映った映像はD班のメンバーの居る部屋にリアルタイムで送られ、闇医者の皆本麗子(片瀬那奈)とIT担当の宮永壮一(浜野謙太)が見ていました。
やがて小野原光生が現れて挨拶をし、爽やかな好青年に見えました。




(微笑む井川エリと黒沢兵悟。山口真帆さんの笑顔の良さが発揮された場面だと思います。)

北海道産の小麦粉とアメリカ産の小麦粉で作られたパンの重さを両手に持って比べることになり、井川エリが「微妙に違うよね」とここでも甘い雰囲気で黒沢兵悟に聞いていました。
そのパンを食べてみてくださいと言われ、黒沢兵悟は皆本麗子と宮永壮一の「食べるな」という忠告を聞かずに食べます。

グルメサークルでビュッフェパーティーが始まり、黒沢兵悟は楽しむふりをしながら周囲を見回します。
その目の演技が潜入捜査官というより闇世界の住人の雰囲気が出ていて上手いと思いました。

井川エリが「また来週もこの会が開催されるらしいから、一緒に参加しない?」と聞き、黒沢兵悟が「うん、そうだね」と言うと「ほんと?やったー!」と喜びます。
終始可愛らしく甘い雰囲気で、こんな美人さんに甘い雰囲気で来られたら一般の人はなかなか断れないかも知れないなと思いました。




(戦う黒沢兵悟と佐根村将。)

グルメサークルの中に一人不審な男が居て、黒沢兵悟と男子トイレで激しい戦いになりやがて男を取り押さえます。
男は佐根村将(野村周平)といい、伊達直哉の指示で動いていた味方だと明らかになりますが黒沢兵悟は協力する気は全くないです。

その夜、黒沢兵悟、佐根村将、皆本麗子、宮永壮一でグルメサークルについての話になります。
黒沢兵悟はとても態度が大きく、佐根村将に役に立たないから出て行けと言い、宮永壮一にも偉そうな態度を取っていました。
しかしとても頭が良いようで、グルメサークルで行われていたことが「スタンフォード催眠感受性スケール」という、暗示にかかりやすい人を選別するものだと見抜きます。
皆本麗子が「早くしないと次の犠牲者が出る」と言っていました。
さらに、佐根村将が「一緒に居た女の子(井川エリ)も危ないんじゃないか」と言うと黒沢兵悟は大笑いし、「あいつは引きだよ」と言います。
声を掛けてきた人が偶然高級バッグを持ち、200万円以上する時計を付けているなんてことがあるか?と言い、よく見ているなと思いました。
皆本麗子が「相当悪事を働いて稼いでいるってことか」と言うと、黒沢兵悟は見当外れなことを言っていた佐根村将に「わーったろ?お前には無理なんだよ」と不遜に言い、佐根村将は出て行きます。

出て行った佐根村将のところに伊達直哉がやって来ます。
佐根村将は伊達直哉に頼まれ、匿名で通報したのが誰なのかを調べていたことが明らかになります。

2回目のグルメサークルの会合が開催されます。
今回はABC三つのカップが用意され、小野原光生に出汁が入っているので飲み比べてみて、一番美味しかったものを前に出してと言われます。
通信機で宮永壮一が「味違うの?」と聞くと黒沢兵悟は「全部一緒だよ。全部水だ」と答えます。
しかしどれかのカップを前に出す人が続出し、これが「ABCは味が違う」という暗示をかけ、騙されやすい人を選別しているのだなと思いました。
黒沢兵悟は迷っているふりをして一つを前に出します。




(モニター越しに会合の様子を見る井川エリ。それまでの甘えた雰囲気から一転して悪の組織の女性幹部の雰囲気になります。)

黒沢兵悟の様子を井川エリが、悪女顔でハンバーガーを食べながらモニター越しに監視していて驚きました。
「やっぱこの人、ハマりやすいかもなー。誘おっかなー」と不気味な笑顔で言っていて、豹変ぶりが印象的でした。
この場面を引き立てるためにそれまでの場面をことさら甘い雰囲気にしていたのかも知れないと思いました。




(不気味に微笑みながら「誘おっかなー」と言う井川エリ。山口真帆さんの演技が新たな一面を見せたと思います。)

やけに甘い雰囲気の人は腹に思惑があると思った方が良いのかも知れないと思いました。
小野原光生に飴で一度口の中をリフレッシュしてと言われ、今度はお茶の飲み比べで一番濃厚だと思うものを選んでと言われます。

匿名で通報したのは立花という非常勤講師で、伊達直哉が話をします。
冒頭で亡くなったのは立花のゼミの子で、同じサークルの人が5人も亡くなっているのに大学側が動かないのは、小野原光生の父親が地元選出の国会議員だからだと言います。

グルメサークルの会合が終わって黒沢兵悟が外に出て歩き始めると、目の前を歩いていた女性が具合が悪くなって倒れそうになります。
黒沢兵悟が助けますがその時に何か異変を察知していました。
すると小野原光生がやって来て「あっちで休みましょう」と女性を連れて行きます。




(黒沢兵悟に声をかける井川エリ。)

今度は井川エリが「佐藤君!」と声をかけてきて、「やっぱ間に合わなかったかー。だったらご飯行かない?」と誘い、黒沢兵悟は「え、急だね」と戸惑った素振りを見せます。
「ダメー?」と聞かれ、「今日はちょっと…」と言うと、佐根村将が高校の時からの同級生のふりをして近付き、それなら俺と行かないかと誘います。
井川エリは当初「あなたには言ってないんだけど」と冷たい雰囲気でしたが、佐根村将の腕時計を見て金づるになると見たのか良いよと言います。

その夜、黒沢兵悟、伊達直哉、皆本麗子、宮永壮一で話をします。
黒沢兵悟は倒れかけた女性の様子から、薬物の影響だと言います。
出汁や飴の中に入っていたと思われ、宮永壮一が「でも兵悟君は大丈夫じゃないか」と言うと「薬物くらい慣れてる」と答えていて、やはり闇世界の人だなと思いました。
ただし皆本麗子が検査すると黒沢兵悟は陰性になり、なぜなのかとなります。
すると佐根村将がボロボロになって現れ、ぼったくりバーに連れて行かれてボコボコにされたと言います。
さらに、ボコボコにされてしばらく店の前に倒れていると、倒れかけた女性と小野原光生がその店に入って行くのを見ます。
女性は少しボーッとした様子だったと言い、ぼったくりバーで高額な請求をされ、男性は払えなければボコボコにされてお払い箱になり、女性は風俗に沈められる構図が浮かび上がります。
小野原光生達は風俗への女性の紹介料で稼いでいて、薬物漬けにすれば被害を訴えにくくなり、そして薬物欲しさにまた借金を抱えることになります。
黒沢兵悟は「負の連鎖にはめていくってことか」と言っていました。
佐根村将がボコボコにされた時の様子をボイスレコーダーに記録していて、それが傷害の証拠となりバーに伊達直哉率いる兵庫県警が逮捕状を持って踏み込みます。

立花が伊達直哉を訪ねて来て再び話をし、娘を持つ父親としてこれ以上犠牲者を増やすわけにはいかないので出来る限り協力すると言います。
立花がワールドグルメキャンプの部室の鍵を開け、黒沢兵悟と佐根村将が忍び込みます。
金庫に大量のお金があるのを突き止め、飴もあったのでサンプルに持って行きます。
お金の一部を「ほらよ」と渡す黒沢兵悟に、佐根村将が「亡くなった彼女たちが稼いだお金をよく取れますね」と言うと、「世の中騙される奴が悪いんだ」と言います。
これは違うなと思い、やはり騙す人が悪いと思いました。

金庫に8800万円あり飴からはコカインが検出されたことを伊達直哉が阿久津洋子に報告します。
小野原光生の逮捕状を取るにあたり、父親が国会議員であることから県警トップの阿久津洋子の身を心配すると、次のように言います。
「(逮捕する)それは正義でしょう?ならば躊躇なくやるべきよ。国会議員がいくら喚こうが、事実は変わらないでしょ。忖度するような警察官は、すぐにでも辞めるべきね」
堂々たる態度で印象的な場面でした。
台詞に胆力があり、りょうさんの演技はかなり上手いと思いました。

3回目のグルメサークルの会合が開催され、黒沢兵悟と佐根村将が行きます。
井川エリも現れますが佐根村将にはよそよそしい態度でした。
黒沢兵悟が井川エリと二人で話し、「あいつ酔っ払って何も覚えてないんだってさ」と言うと少し安心した様子で、自身は喧嘩が起きる前に先に帰ったと言います。
ただし前回までのような甘い雰囲気はなくなりぎこちない笑顔になっていて、動揺が隠せていませんでした。

AとBの飴を食べ比べているところに伊達直哉率いる兵庫県警が突入すると、驚きの展開が待っていました。
黒沢兵悟という人の悪を潰すためなら手段を選ばない狂気を感じた場面でした。

佐根村将がお前は人を殺すために潜入をやっているのかと詰め寄ると、黒沢兵悟は「狩るか、狩られるかだ」と言います。
黒沢兵悟がなぜダークになったのか幼少期の回想で明らかになり、「俺は、騙す側の人間になる」と言っていて、現在の姿を形作る言葉だと思いました。

終盤、検査に引っかからない麻薬の謎が明らかになります。
また、黒沢兵悟が実は小野原光生達の命を助けてあげていた可能性が浮かび上がり、これは意外だなと思いました。
根っからの悪人ではないのかも知れないと思いました。




(山口真帆さんが所属する芸能事務所「研音」の大先輩、りょうさん。元々はモデルとして活動し、現在では演技力の高い女優と評されています。)

注目していた山口真帆さんの演技は、悪女に豹変する場面と気まずそうな雰囲気の場面が印象的で、今後に向けて演技の幅が広がったのではと思います。
先輩方との差を感じたのは、「罪のない嘘」での菅原りこさんと同じく台詞の緩急でした。
特にりょうさんや安藤政信さんなどは一つの台詞の中でもスピードが変わったり声のボリュームが変わったりして凄く上手いと思いました。
これは経験を積みながら身に付けて行くもので、特にりょうさんは事務所の大先輩でもあり、芸能活動の途中から女優になった点も共通していて、その姿から得るものがたくさんあるのではと思います。
同年代では松岡茉優さんも途中から女優に転身して若手きっての実力派女優になっており、似た境遇での大成功例は心強いです。




(頬杖をついて穏やかに微笑む山口真帆さん。)

山口真帆さんは派手さと上品さを併せ持つ美人な佇まいに加えて「利発」な印象もあり、教師や弁護士のような知的な役柄にも向いている気がします。
まだまだ女優として駆け出したばかりの存在で、台詞の緩急のような演技力も経験を積むごとに上げて行けると思います。
山口真帆さんのこれからのさらなる活躍を楽しみにしています


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エリザベト音楽大学 2019年度卒業演奏会

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(卒業演奏会でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1楽章を演奏する浦川莉緒さん。)

3月8日、広島県広島市にあるエリザベト音楽大学の卒業演奏会を聴きに行きました。
コロナウイルスの影響で何もかもが自粛になる前に聴くことが出来た、最後の演奏会でもありました。
卒業演奏会は音楽を学ぶ学校ならではの演奏会で、事前の審査で優秀な成績を修めた人だけが立つことが出来る舞台です。
これまで学んできたことの集大成を学生の代表として見せる場でもあり、昨年に続いて門出の素敵な演奏会を聴きに行ってみました




卒業演奏会は大学内にある「セシリアホール」で行われます。
写真は以前撮ったもので、これまでに何度もセシリアホールで演奏会を聴かせて頂きました。





1.声楽専攻(ソプラノ)の徳弘梓弓さんと、ピアノ伴奏の元迫洋さん。

シュトラウス:万霊節(Allerseelen)
木下牧子:おんがく
小林秀雄:すてきな春に




徳弘梓弓さんは2018年5月、世界平和記念聖堂に写真を撮りに行った時に遭遇したエリザベト音楽大学の大学祭で貰ったパンフレットに学生会長として名前が載っていたのを覚えています。
その人が卒業演奏会に登場したのを見て歌の実力も凄い人だったのだなと思いながら、当時のパンフレットが頭の中に思い出されました。
「この人はあの時の…!!」という場面に出くわすと気持ちが盛り上がります

1曲目「万霊節」を神聖な雰囲気でゆったりと歌い、さすがにソプラノという高い声が印象的でした。
2曲目「おんがく」は同じくゆったりでも今度は力強く歌い、この2曲目が凄く上手く感じ、良い声の人だなと思いました。
3曲目「すてきな春に」はどこかで聴いたことがあるなと感じ、颯爽とした歌い出しと声の力強さが印象的でした。





2.管弦打楽器専攻(ヴァイオリン)の浦川莉緒さんと、ピアノ伴奏の中島詩織さん。

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 二長調 作品35より 第1楽章




私は浦川莉緒さんが出演するのを期待して2019年度卒業演奏会に足を運びました。
事前に誰が出演するのか分かっていませんでしたが、何度も演奏会で演奏を聴いてとても上手い人だと分かっていたので、必ず出演すると思いました。
貰ったパンフレットに名前があるのを見た時は「やはり」という気持ちになり、来て良かったと思いました

まさか私の好きな曲でもあるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(オーケストラと一緒に演奏する曲)が聴けるとは思っていなくて驚きました。
ピアノは「一台でオーケストラに匹敵する」と言われるほど出せる音が豊富にあるので、オーケストラの代わりとして伴奏を務めることが出来ます。
ヴァイオリンとピアノでの演奏用に曲は短めにアレンジしていて、冒頭ヴァイオリンの演奏前にピアノの演奏が始まる時、浦川莉緒さんが体をゆったりと揺らしながらリズムを取っていたのが印象的で、大舞台でも落ち着いていて流石と思いました。
演奏はやはり上手く、卒業演奏会の厳粛な雰囲気の中で華麗な音色を楽しませてもらいました





3.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の田代萌水さん。

ラフマニノフ:楽興の時 作品16より 第5曲、第6曲




ラフマニノフはピアノ協奏曲第2番と第3番が特に有名ですが、これまで聴いてきた演奏会ではピアノ単独での曲が演奏されることもありました。
「楽興の時 第5曲」はゆったりと始まり安らぐ音色で、「第6曲」は対照的に力強く迫力のある音色で緊迫感もありました。
好対照な演奏が印象的で、それぞれの表現を楽しませてもらいました。





4.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の岡崎清香さん。

シューマン:謝肉祭 作品9




聴いていた限りでは、一つの演奏を終えて次の演奏を始めるのに間を空けた回数が12回もありました。
そしてそれぞれの演奏ごとにスピーディーになったりゆったりしたりと変化が印象的でした。
派手な雰囲気やミステリアスな雰囲気、明るい雰囲気、軽やかな雰囲気、安らぐ雰囲気になったりもして、めまぐるしく様々な音色が姿を現しました。
六つ目の演奏の時、速いスピードでの「タンタンタン タタタン!」というリズムの演奏が良いと思いました。
かなり上手いと感じ、またどこかの演奏会でこの曲を演奏してほしいなと思いました





5.管弦打楽器専攻(クラリネット)の谷口里菜さんと、ピアノ伴奏の末政優衣さん。

バッシ:ヴェルディの《リゴレット》によるコンサートファンタジア




この人もかなり上手いと思いました。
ややミステリアスに始まり、そこからややコミカルな演奏になりました。
音の伸びが良く、躍動感が凄かったです
クラリネットの独奏があり、音をピョロロロローと唸らせるのが上手かったです。
最後もかなり良く、スピードも凄くて盛り上がりました。





6.鍵盤楽器専攻(オルガン)の菅原菜穂子さん。

レーガー:《神はわがやぐら》によるコラール幻想曲 作品27




(演奏時の全景。銀色の小さな煙突のように見えるのは全てパイプオルガンの「パイプ」です。)



神聖な雰囲気で始まり、一気に音が力強くなる場面がありました。
神の祝福のような音色だと思いました。
聴いていてパイプオルガンは柔らかい音が四方八方に広がっていくイメージがあるなと思い、その音が心に染み入って来ます。





7.声楽専攻(ソプラノ)の龍緋花里さんと、ピアノ伴奏の中島詩織さん。

ロッシーニ:フィレンツェの花売り娘
ベッリーニ:オペラ《清教徒》より〈あなたの優しい声が…来てください、愛しい人〉

「フィレンツェの花売り娘」は明るい曲で、声にも明るさがありました。
終盤にソロ演奏があり、凄く大きな声でそれでいて華やかだと思いました。
「オペラ《清教徒》より〈あなたの優しい声が…来てください、愛しい人〉」はやや控えめな雰囲気の曲でした。
最後が盛り上がり、大声量になっていながら踊っているようでもあり、大声量でも華やかさや踊っているような雰囲気をはっきり出せるのはこの方の強みな気がしました。





8.管弦打楽器専攻(サクソフォーン)の廣本穂乃さんと、ピアノ伴奏の小林知世さん。

トマジ:サクソフォーン協奏曲

廣本穂乃さんの演奏は他の演奏会で聴いたことがあり、上手い人なのが分かっていました。
ゆったりした雰囲気で演奏が始まり、ややミステリアスになってから力強くなりました。
高音の伸びがとても良く、やがてかなり激しい雰囲気になって行きました。
ミステリアスさと力強さが交代で現れる場面の演奏が良いなと思い、終わりが近づくとスピードと迫力が出てかなり良かったです。





9.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の加々見祐典さん。

ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品36(1931年版)



加々見祐典さんの演奏も他の演奏会で聴いたことがあり、やはり上手い人なのが分かっていました。
ショッキングな雰囲気で演奏が始まり、そこからスピードが出て音色も華やかでした。
とても上手いと感じ、そして作品世界に深く入り込む演奏者でもあるなと思いました。
そこからは一瞬途切れてまた始まってを繰り返す独特な曲調になりました。
その間、盛り上がったりゆったりとした雰囲気になったり、最後の方では力強くもなり、様々な雰囲気を楽しませてもらいました。



10.卒業生合唱(コロナウイルスの影響で中止)

松下耕:きょうこそ神がつくられた日(詩編 118編) オルガン:中川千慧
イェイロ:Ubi caritas
松下耕(詩:山崎佳代子):出発  ピアノ:室川桃子 指揮:寺沢希

昨年の卒業演奏会では聴けた卒業生合唱が、今年はコロナウイルスの影響で中止になりました。
卒業生全員がステージに上がっての合唱になるので、三密を回避するにはやむを得ないと思いますが、卒業生にとっては無念だったと思います。
一日も早く特効薬ができ、コロナウイルスに演奏会を妨害されることがなくなってほしいと思います。



卒業して演奏家の道を突き進む人も居れば、音楽関係の会社に行く人も居たり、あるいは別の業種に行く人も居ます。
全ての学生にこれまで学んできたこととこれからへの思いがあり、卒業演奏会は門出への一つの区切りになると思います。
この舞台に立った人が学生達の代表として渾身の演奏をするのはもちろん、この舞台に立てなかった人も、その演奏から感じ取るものがあるのではと思います。
学生の演奏会の中でもやはり卒業演奏会は特別な印象があり、神聖な雰囲気の中で行われる素敵な演奏会をぜひまた聴きに行きたいです



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エリザベト音楽大学 サクソフォンラージアンサンブル 第22回定期演奏会

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昨年の2月11日、広島県広島市のエリザベト音楽大学に「サクソフォンラージアンサンブル 第22回定期演奏会」を聴きに行きました。
サクソフォンは「サックス」という愛称で親しまれる管楽器で、オーケストラで馴染み深いヴァイオリンやフルート、クラリネットのような楽器に比べると登場は遅く、1840年頃にベルギー人のアドルフ・サックスによって発明されました。
そのためクラシックコンサートでオーケストラの編成に入ることや、サクソフォン用のクラシック系の曲もありますが、ジャズやポップスで演奏されることもよくあり、独自の立ち位置を持つ楽器です。
その音色は柔らかく、この演奏会でも華麗に響き渡っていました




瀬戸内を中心に活動するアイドルグループSTU48の瀧野由美子さん(サクソフォン演奏が得意なアイドルとして知られている)も、かつてエリザベト音楽大学サクソフォンラージアンサンブルで活動していました。
第20回定期演奏会の出演者欄には当時1年生だった瀧野由美子さんの名前が載っています。
音楽大学の出身であり、音楽センスはアイドルの中でもトップクラスなのではと思います。



1.組曲ト長調「ドン・キホーテのブルレスケ」

作曲:G.F.テレマン
編曲:金本 理久
指揮:宗貞 啓二



(指揮者登場前。)

サクソフォン用に編曲されたものを楽章を抜粋して演奏しました。
この曲はパーカッション(打楽器)やコントラバス(オーケストラでは低音で音の土台を作っている)は登場せず、完全にサクソフォンだけでの演奏でした。




(指揮者の宗貞啓二さんが登場し、演奏が始まります。)

明るく壮大な演奏で始まり、スキップしているかのようでした。
スピードが速く滑らかで滑り台を滑っていくような演奏だとも思いました。
ドラマチックな音色もありました。

高音でのゆったりした演奏になります。
「ターラー」という特徴的な音色がよくあったのが印象的でした。
それぞれを別の人が吹いて呼応する形で、「タタタタタタ」→「ターラー」という演奏もあり、全く違う音色同士での呼応は良いアクセントになっていたと思います。

この曲は演奏布陣の真ん中にソプラノサクソフォンがいて、後半その音が目立つ場面がありました。
高くゆったりとした音で、そのソプラノサクソフォンを周りが支える演奏をしていました。



2.アランフェス協奏曲

作曲:J.ロドリーゴ
指揮・編曲:宗貞 啓二
ギター:上垣内 寿光



(演奏前。今回はパーカッションとコントラバスもいます。)




(向かって左側のチューニング(演奏前の音の調整)。アルトサクソフォンがいます。パーカッションは他の演奏会でも良い演奏をしていた安倍聖人さんという方です。)




(向かって右側のチューニング。テナーサクソフォン、バリトンサクソフォン、バスサクソフォン(低音になるにつれ、楽器が大きくなる)がいます。)




(真ん中のチューニング。ソプラノサクソフォンがいます。
サクソフォンだけでソプラノからバスまで音域を網羅していて、オーケストラのような音に厚みのある演奏が可能になります。
また、右から5人目の進正裕さんは学部生として最後の定期演奏会でした。)




(ギターソリストの上垣内(かみがいち)寿光さん登場。
ギター協奏曲の生演奏はこの時初めて聴き、とても興味深かったです。)


第1楽章
ギターの明るい演奏で始まりました。
サクソフォンも始まり、どんどん力強くなり、明るく伸びがありました。
南の島が思い浮かぶようなギターの演奏があり、陽気さが良かったです
パーカッションの鉄琴だったと思いますがその音が良かったのも印象的でした。
やがて全体がドラマチックな音色になり凄く良かったです


第2楽章
ギターの物悲しそうな演奏で始まりました。
4年生の進正裕さんのソプラノサクソフォンのソロ演奏も入り、こちらも物悲しそうでどことなく必殺仕事人のテーマの冒頭が思い浮かぶようなメロディでした。
ギターと進正裕さんが物悲しそうな演奏をし、他のサクソフォンがやはり物悲しそうな音色で支えていました。

全体が力強く、凄く悲しい雰囲気になりました。
「タララー タララーララ ラララー」のメロディが形を変えながら繰り返されました。
ギター独奏の場面もあり、物悲しさと迫力を併せ持った音色が良かったです。
ギターが止まっている中でタララーのメロディをサクソフォン全体が一斉に力強く演奏する場面もあり、こちらも迫力の中にやはり物悲しさがあって良い音色でした。


第3楽章
ギターの明るく軽やかな演奏で始まり、サクソフォンも同じく明るく軽やかな全体演奏で続きました。
第3楽章はとてもリズミカルな演奏なのが印象的で、最後まで明るくリズミカルでした




(演奏終了時。)




(ギターソリストの上垣内寿光さんと指揮者の宗貞啓二さんが花束を貰っています。)



3.バレエ音楽「恋は魔術師」

作曲:M.de.ファリャ
編曲:宗貞 啓二
指揮:大森 義基
メゾソプラノ:山口 水蛍

指揮者の大森義基さんは「一楽章f未完成 I LOVE MELODY SAXOPHONE LIVE」でサクソフォン演奏を聴いたことがあり、非常に上手かったです。




(演奏前。ソプラノサクソフォンが向かって左側になり、布陣が変わりました。)




(演奏前。3曲目はピアノ(室川桃子さん)が登場しました。)




(演奏前。メゾソプラノ(ソプラノの次に高い声域)のソリスト、山口水蛍さんも登場しました。)

凄く力強い演奏で曲が始まり、そこからコントラバスの不気味な演奏だけになり、そこにサクソフォンも不気味な演奏で入って行きました。
全体が不気味な雰囲気で、そのまま力強くなります。
進正裕さんのソプラノサクソフォン演奏が目立っていて、この曲では何度も目立つ場面がありました。
ソリストの山口水蛍さんが歌う場面になり、聴けば引きつけられる良い歌声だと思いました。
長い曲でもあり、歌う時は椅子から立ち歌い終わったら座ります。

ピアノがピッチカート(ヴァイオリンなどの弦を指でポロンポロンと弾く演奏)のような演奏をしていたのが印象的でした。
ピアノとサクソフォンが呼応し、ピアノが「タン」、サクソフォンが「ボボーウ」という演奏を繰り返していました。
ある章ではサクソフォンの不気味な演奏で始まり、進正裕さんのソプラノサクソフォンがそれとは違う音色で入っていました。

全体がどこか不気味でミステリアスで探検でもしているように感じる場面もありました。
「火祭りの踊り」という多くの人がどこかで聴いたことがあるようなメロディの章では、「ターターターター タータター」というメロディの演奏が凄く良かったです。

終盤、山口水蛍さんが歌い終わると全体が演奏するのが繰り返されました。
歌の迫力が増し、響きが凄く良く、空気が揺れているように感じました。
最後は全体が力強くなり、鐘の音のパーカッションが印象的で、祝福しているようで感動的でした




(花束を貰うソリストの山口水蛍さんと指揮者の大森義基さん。)




(二人が退場しても鳴りやまない拍手。)




(二人が再登場し、ソリストありでのアンコールが演奏されました。)

曲名は分かりませんでしたが3曲目の余韻に浸るようなゆったりとした雰囲気でした。
歌、ピアノ、パーカッションが目立ち、サクソフォンは穏やかに演奏していました。




(演奏後、4年生の進正裕さんが間もなく卒業と紹介がありました。)




(花束を受け取る進正裕さん。渡しているのは1年後に「エリザベト音楽大学 2019年度卒業演奏会」に登場することになる廣本穂乃さんという方です。)




(花束を持ち客席に礼をする進正裕さん。)




(卒業の挨拶をする進正裕さん。)




ギターソリストの上垣内寿光さんがもう一度登場し、全体で2回目のアンコール演奏をしました。
タンゴのような雰囲気で始まり、カスタネットのパーカッションが印象的でした。
凄くゆったりとした演奏で音色が綺麗で安らぎました。
ここでも進正裕さんのソプラノサクソフォンが目立っていました。


3回目のアンコールもありました。
2018年秋にクラシックなどの演奏会を聴き始めてから、こんなにアンコールがあったのは初めてでした
凄く速い曲で明るい気持ちになりました




(最後のアンコールを終え、感動的な雰囲気で演奏会が終わりました。)


ラージアンサンブルという形でのサクソフォン演奏はこの時初めて聴き、まるでオーケストラのようで良いものだと思いました。
この演奏会にはとても素敵な演奏会として印象に残った「Trio Riviere(トリオリヴィエール)」のうち2人(進正裕さん、安倍聖人さん)が登場し、どちらも上手い人だと分かっていたので気持ちが盛り上がりました。
そして送り出される4年生にたくさんの見せ場と挨拶の場が用意され温かく送り出されたのを見て、良い活動団体だと思いました。
今年開催された第23回定期演奏会も聴きに行っていて、これからもぜひ聴いてみたいと思います



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2019年2月時点

指揮者紹介

宗貞啓二
サクソフォンを水野昱子、石渡悠史、故大室勇一の各氏に師事し、1975年国立音楽大学を武岡賞を受賞し卒業。
同年読売新人演奏会、皇居内桃華楽堂新人演奏会に出演。
在学中、第42回毎日音楽コンクール第1位入賞。
1976年渡仏、フランス国立ボルドー音楽院にてサクソフォンをJ.M.ロンデックス氏に、室内楽をR.ペレ氏に師事、いずれも一等賞を得て卒業。
ボルドー市栄誉賞を受ける。
現在、エリザベト音楽大学、洗足学園音楽大学の各講師。


大森義基
1991年昭和音楽大学を特別賞を受賞し卒業。
在学中に第7回日本管打楽器コンクール入賞。
1992年渡仏、翌年パリ・レオポールベランコンクール第1位入賞。
1994年パリ国際音楽コンクール第2位及び審査員特別賞受賞。
同年、フランス国立セルジーポントワーズ音楽院を審査員全員1位の主席で卒業。
これまでにソロアルバム「ヴァカンス」「ア・ラ・パリジェンヌ」「ミント」「ナイチンゲールとバラ」をリリース。
サクソフォンを市川豊、故大室勇一、宗貞啓二、ジャン=イヴ=フルモーの各氏に支持する。
現在昭和音楽大学、エリザベト音楽大学、桜美林大学芸術文化学群音楽専修の各講師。


ソリスト紹介

上垣内 寿光
エリザベト音楽大学を飛び級し大学院修了。
その後、広島中村奨学金を得て渡独。
ドイツ国立カールスルーエ音楽大学卒業、ディプロマ取得。
ドイツ国立ワイマール・リスト音楽院、演奏家課程修了。
名古屋ギターコンクール優勝、大阪ギター音楽大賞最優秀賞、九州ギターコンクール第2位(1位なし)、山陰ギターコンクール第2位(1位なし)、日本ギターコンクール第3位、2004年度イタリア・ガルニャーノ国際ギターコンクールファイナリスト、2007年度第22回イタリア・ロベレドーロ国際音楽コンクールギター部門第2位(1位なし)など数々のコンクールに入賞。
第149回日本演奏連盟新人演奏会にて広島交響楽団と共演。
日本をはじめドイツ、イタリア、スイスなどヨーロッパのみならず韓国、中国、インドなどアジアでも演奏活動を展開する。
現在エリザベト音楽大学で教鞭をとる傍ら、卓越したプロ演奏家をあらゆるシーンにコーディネートする(株)クライスミュージックエンターテインメントの代表取締役も務める。


山口水蛍
エリザベト音楽大学声楽専攻卒業、同大学院修士課程を主席、総代にて修了。
声楽を長崎美穂子、桂政子の各氏に師事。
同大学在学中に専門課目奨励賞および学長表彰を受賞。
卒業演奏会出演。
第24回エリザベト音楽大学大学院新人演奏会出演。
第5回東京国際声楽コンクール 大学生部門第1位 東京新聞賞受賞。
平成25年度後期はつかいちさくら賞受賞。
第19回さくらぴあ新人コンクール第1位 さくらぴあ大賞受賞。
新進演奏家育成プロジェクト第22回広島オーケストラ・シリーズオーディション合格、広島交響楽団と共演。
これまでにオペラ「リータ」リータ役、「椿姫」アンニーナ役などで出演。
現在、合唱団の歌唱指導や指揮、またオペラやミュージカルの舞台などで音楽の魅力を伝える活動を行っている。


エリザベト音楽大学サクソフォン・ラージアンサンブル

学部生4年 進 正裕
学部生3年 岡田 咲姫  金本 理久  桐本 萌絵  坂本 さくら  谷本 百衣  廣本 穂乃
学部生2年 梅本 舜也
学部生1年 田中 啓悟  廣瀬 奏一朗
ピアノ 室川 桃子
コントラバス 能見 義史
パーカッション 小川 裕雅  安倍 聖人

賛助出演 宮田 麻美  加藤 和也  前田 悠貴  平井 千香子  福田 ひとみ  山本 愛子  宇津 優輔  森山 葵  柳瀬 萌  増田 結子  小田 桃子  李 愛梨

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ブログ開設から5000日

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昨日でブログの開設から5000日になりました。
2007年2月25日にブログを始めてから13年8ヶ月が経ちました。
13年8ヶ月と言えば、生まれてきた赤ちゃんが中学一年生か二年生になる年月です。
そんなに長い間ブログを続けられたのかと、しみじみとした気持ちになり、流れた月日に驚きます。

前回の4000日から今回の5000日までの間に、gooブログの仕様が大きく変わりました。
他の人の記事の発信に気付きやすくなったのはツイッターの「リアルタイム性」を、コメント欄はLINEの「流れの分かりやすさ」を意識したと思われ、文字のフォントもそれまでとは変わり、全体的に「お洒落な雰囲気」にしたように見えました。
それまでのほのぼのとした雰囲気のgooブログが好きだった私は、一気に流行の最先端に行った新しい仕様に慣れるのに時間がかかりました。
最近やっと慣れてきて、今の仕様を使いこなしていこうという気持ちが出てきました。

ブログを始めた2007年は、たくさんのブログサービス(gooブログやアメーバブログなどのこと)がありました。
やがてツイッターやフェイスブック、インスタグラムなど様々な情報発信ツールが台頭すると、ブログはかつてのような一強ではなくなりました。
13年8ヶ月の間にいくつものブログサービスが終了し、時代の流れを感じました。
その中でgooブログは生き残ってくれて、私はそれが嬉しいです。
gooブログは時代の流れとともに様々な試行錯誤をしていて、中でも昨年春の仕様変更でお洒落な雰囲気になったのは今までで最大の変化でしたが、これから先も新たな層に興味を持ってもらえるかを考えると、間違ってはいなかったと思います。

私も13年8ヶ月分の年を取りました。
今年は3ヶ月くらいブログを書く気力の出なかった時期もあり、その後もなかなか昔のように活発には書けない日々が続き、若かった頃との差を感じます。
それでも最近は書く意欲が戻ってきていて、数は少なくても丁寧に記事を書くことを心掛けています。
書いた記事を読んだ人がgooブログというブログサービスを知り、自身も記事を書いてみようかなと思ってくれるような記事をたまにでも書けたら良いなと思います。
これからも繁栄していってほしいブログサービスであり、そしてこれからもお世話になっていきたいと思います

秋の進み

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11月を迎えました。
気象庁の区切りでは9~11月が秋で、早くもその最後、晩秋になりました。

秋は空が綺麗で、雲の少ない青空になる日が多いです
そして空気が爽やかで、気持ちも爽やかに外を歩くことが出来ます。

気温は10月中旬頃からどんどん下がって行きました。
最近は最高気温が20度を下回る日も見られるようになり、晩秋になったのを実感します。
朝起きた時窓に結露が現れるようにもなりました。
寒い時期ならではのもので、これから春になるまで毎日のように現れると思います。

初秋の頃はたくさん聞こえていた秋の虫の鳴き声もほとんど聞こえなくなりました。
今聞こえるのは風が吹いた時に木々の葉がサワサワサワと揺れる音で、その音もこれから落葉樹の葉がなくなれば寂しいものになります。
夏から冬にかけて、自然界の音がどんどん少なくなっていくのが印象的です。

紅葉は見頃を迎えました
名所には行けていませんが市街地でも桜やもみじの赤、銀杏の黄色の葉が青空に映えて綺麗で、気持ちも爽やかになります。
綺麗な紅葉を見ながら残り少なくなってきた秋を楽しみたいです

エリザベト音楽大学 打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~

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(打楽器コンサートのステージに立つ左から山内菜央さん、上條拓未さん、吉永有紗さん、萩原佳菜さん、向井沙世さん、安倍聖人さん。)

昨年の2月23日、広島県広島市のエリザベト音楽大学ザビエルホールに「打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~」を聴きに行きました。
一昨年11月の「エリザベト音楽大学 院生アンサンブル「ライツェント・グランツ」」の演奏会でTrip!メンバーの遠藤ふみさんが演奏されていて、Trip!コンサートへの興味がかなり強まりました。
出かけたコンサートで別のコンサートへの興味が湧き、そちらにも足を運ぶのは地域に根差したコンサートならではの面白さだと思います。
打楽器のみのコンサートを聴くのは初めてで、どんな雰囲気になるのか興味深かったです


1.KU-KA-ILIMOKU:クリストファー・ラウズ



(左から大咲拓人さん、上條拓未さん、小川裕雅さん、安倍聖人さん。)

ステージには様々な楽器があり、持ち場の移り変わりが速く、あっという間に変わっていました。
迫力と力強さがあり凄く体に響く音でした。




(左から大咲拓人さん、上條拓未さん、小川裕雅さん。)




(左から上條拓未さん、小川裕雅さん、安倍聖人さん。)




(上條拓未さんトーク中。)




(小川裕雅さんトーク中。
打楽器アンサンブルの音楽監督をしていて、広島ウインドオーケストラ打楽器主席奏者でもあります。)

打楽器は曲ごとに配置の転換が必要なので、その間に喋って間を持たせるとのことです。
2曲目はマリンバという「木の音盤」の楽器を使う曲と紹介がありました。



2.Fuga y misterio(フーガと神秘):アストル・パンタレオン・ピアソラ



(安倍聖人さん。)

演奏者が1人ずつ出て来て、1人増えるごとに音が変わって行きました。
とてもリズミカルで気持ちが明るくなる軽やかな音色でした




(左から吉永有紗さん、安倍聖人さん。)




(左に吉永有紗さん、右奥に山内菜央さん、手前に安倍聖人さん。)




(左奥に遠藤ふみさん、手前に吉永有紗さん、右奥に山内菜央さん、手前に安倍聖人さん。
ついに4人揃いました




(吉永有紗さんと遠藤ふみさん。
2人とも他の演奏会で演奏を聴いたことがあり、良い演奏者だと思います。)




(安倍聖人さんトーク中。
緊張しないように、ステージから見えるお客さんは「じゃがいも」と思うようにしているというのがウケました。)



3.Ordering-Instincts:ロバート・ディロン



(左から板倉七海さん、遠藤ふみさん、高山桃奈さん、向井沙世さん。)

「バチ」を叩いているような演奏が続いたのが印象的です。
一音一音が短い乾燥した雰囲気の音になるので、その音での演奏は難易度が高いのではと思いました。
その他、太鼓や鉄琴、ベルを叩くような音もあり、それらの音が次第に姿を現して行きました。
何かがうなるような音もあり不気味に感じたのと、短い音がとてもリズミカルに聴こえて良いなと思いました。




遠藤ふみさんのトークがあり、打楽器アンサンブルでは工作部長が4年生の安倍聖人さんで、ゆるキャラ部長が同じく4年生の山内菜央さんと紹介がありました。



4.Catching Shadows:イヴァン・トレヴィーノ



(左から山内菜央さん、上條拓未さん、吉永有紗さん、萩原佳菜さん、向井沙世さん、安倍聖人さん。)




(左に山内菜央さん、右に上條拓未さん。)

夢の中に居るような音色のマリンバで、どこかドラマチックに感じました。
安倍聖人さんのソロマリンバがありました。
山内菜央さんが入り他の人も演奏を始め、ゆったりとした音色でした。

今度は山内菜央さんのソロマリンバがあり、安倍聖人さんが入り他の人も演奏を始め、こちらもゆったりした夢のような音色でした。
やがて凄く盛り上がり雰囲気がとても良いと思いました。



5.Marimba Quartet:ケシー・カンジェローシ



(左から大咲拓人さん、山内菜央さん、藤野真奈美さん、神谷百子さん。
神谷百子さんは打楽器アンサンブルの指導をしていて、東京藝術大学にマリンバ受験者として初めて合格した歴史の開拓者のような人です。)

マリンバ4人の演奏で、躍動するような音色でした
凄く低く伸びる音が速い演奏の底の部分にあり、どうやって出しているのか気になりました。
神谷百子さんと山内菜央さんはマリンバを叩くバチを4つも持っていて、自在に叩けるのが凄いなと思いました。




(神谷百子さんと高山桃奈さんでトーク中。)

神谷百子さんがエリザベト音楽大学に来られて9年で、神谷百子さんの提案でこの演奏会が始まったとのことです。



6.OKHO:ヤニス・クセナキス



(左から遠藤ふみさん、安倍聖人さん、藤野真奈美さん。)

ジャンベという太鼓3台での演奏で、3人それぞれにソロの場面がありました。
太鼓なのでとてもよく響き、力強い演奏でした。
平手で叩いたり凄いスピードで叩いたり、バチで叩いたりもしていて変化を楽しめました。




(暗い中で演奏しました。)



(荻原里香さんと山内菜央さんでトーク中。
荻原里香さんは打楽器アンサンブルの指導をしていて、広島ウインドオーケストラの首席ティンパニ奏者です。)

荻原里香さんによると神谷百子さんは7曲目の作曲者に会ったことがあり、せっかちな人で曲にも現れているとのことでした。



7.MAG7:マイケル・バリット



(左から山内菜央さん、藤野真奈美さん、奥に隠れていますが吉永有紗さん、板倉七海さん、奥に荻原里香さん、手前に向井沙世さん、高山桃奈さん。)

山内菜央さんのマリンバソロ演奏で始まりました。
他の人も演奏を始め、凄く速い演奏になりました。

神秘的な音色になります。
鉄琴なども登場し、ゆったりとした演奏に変わりました。

マリンバの叩き方が木の棒になった場面が印象的で、そんな叩き方もあるのかと驚きました。
凄い迫力のドラム叩きの後、マリンバを今度は素手で叩き、それにも驚きました。
宙に浮かんでいるようなふわりとした音色もありそれも良かったです。




(小川裕雅さん、安倍聖人さん、山内菜央さんでトーク中。)

小川裕雅さんからこの春4人卒業すると紹介があり、うち2人は中国からの留学生とのことでした。
また安倍聖人さんと山内菜央さんの2人は卒業試験で優秀な成績を修め、3月10日に行われる卒業演奏会に出演すると紹介がありました。
私はこの言葉を聞き、卒業演奏会が俄然楽しみになりました




(卒業する4人で演奏。
左から山内菜央さん、安倍聖人さん、どちらがどちらかは分かりませんでしたが邓斌さんと李一寧さん。)

アベマリアの旋律を引用した「リーズ」を演奏していました。




(邓斌さんと李一寧さん)




(山内菜央さん、安倍聖人さん。)




(アンコールの準備をする間、来年度最高学年になる吉永有紗さんがトークをしていました。
自身も着ている「Trip!Tシャツ」を紹介していました。)




(最後は全員登場して「宝島」を演奏しました。)

「宝島」はかなり盛り上がりました。
楽しい雰囲気の演奏の中、吉永有紗さんが演奏者1人ずつ名前をコールしていき、会場中が大盛り上がりでした


打楽器のコンサートがこんなに楽しいものだとは知りませんでした。
そして打楽器のコンサートはヴァイオリンやフルートなどによるクラシックコンサートとはまた違った選曲になるのが分かって興味深かったです。
太鼓を叩くような「リズム」の演奏とマリンバを叩くような「音色」の演奏がありどちらも良いと思います。
今年のTrip!コンサートは新型コロナウイルスの影響でマスク必須での開催になり、マスクが買い占めで手に入らなかった私は聴きに行けませんでしたが、ぜひまた聴きに行きたいと思います



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2019年2月時点

【音楽監督】
小川 裕雅

東京藝術大学卒業。
打楽器を有賀誠門、岡田知之、菅原淳、安本由美子の各氏に師事。
第7回浜松国際管楽器アカデミーにおいてライナー・ゼーガース氏のクラスを修了。
エリザベト音楽大学専任講師、広島大学教育学部教育学研究科客員准教授。
広島ウインドオーケストラ打楽器首席奏者。
西日本打楽器協会副理事長。


【指導】
神谷 百子

第3回ルクセンブルグ国際打楽器コンクールソロマリンバ部門優勝。
東京藝術大学にマリンバ受験者として開学以来初合格後、同校を経てジュリアード音楽院卒業。
YAMAHA、Resta-Jay Percussions アーティスト。
エリザベト音楽大学客員教授、洗足学園音楽大学打楽器コース統括教授、東京音楽大学客員教授、国立音楽大学講師。


【指導】
荻原 里香

京都市立芸術大学卒業。
広島ウインドオーケストラ首席ティンパニ奏者。
打楽器アンサンブル「A-UN」、Crazy Classixメンバー、岡山フィルハーモニック管弦楽団打楽器奏者。
島根大学・エリザベト音楽大学非常勤講師。
一般財団法人ケンシン地域振興財団より第28回県民文化奨励賞受賞。


《エリザベト音楽大学打楽器アンサンブル研究会有志》

院  2年 邓斌 李一寧
   1年 遠藤ふみ
学部 4年 安倍聖人 山内菜央
   3年 吉永有紗
   2年 上條拓未 大咲拓人 片山央圭 高山桃奈 向井沙世
   1年 板倉七海 藤野真奈美 萩原佳菜

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「エリザベト音楽大学 フルートオーケストラ 第30回記念演奏会」
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「エリザベト音楽大学、広島大学 「Ensemble PAZZO 2nd season」コンサート」
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「楓子さんワンマンライブ『それでいいんだ』」
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「広島女学院 第22回クリスマスチャリティーコンサート」
「広島プロミシングコンサート2018」
「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 第1楽章」(ソリスト:川本冴夏)
「安田女子中学高等学校 第8回復興支援チャリティーコンサート」
「木村紗綾さん ヴァイオリン・サマーコンサート」
「コール・ビビッド 6th Concert」
「若狭南美さん 卒業記念ピアノリサイタル」

エリザベト音楽大学 2018年度卒業演奏会

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(卒業演奏会の最後、卒業生全員でアイルランド民謡「O ダニーボーイ」合唱時。)

昨年の3月10日、広島県広島市にあるエリザベト音楽大学に2018年度卒業演奏会を聴きに行きました。
私は2018年10月からクラシックのコンサートをよく聴くようになり、その時のコンサートがエリザベト音楽大学の卒業生によるものでした。
その後もエリザベト音楽大学の学生が行うコンサートにもたくさん足を運び、やがて卒業の時期になり、聴いたことのある人達が卒業演奏会に登場することを知りました。
卒業演奏会は一つの区切りでもあり、今まで演奏会で縁のあった人が何人も登場するということで、ぜひ聴いてみたいと思い足を運びました




(卒業演奏会。文字だけでも厳粛で神聖な雰囲気が伝わってきます。)




(卒業演奏会が行われたエリザベト音楽大学セシリアホールのステージ。)




(ステージが明るくなり、いよいよ卒業演奏会が始まります





1.管弦打楽器専攻(サクソフォーン)の進正裕さんと、ピアノ伴奏の中田万結さん。進正裕さんは、



「エリザベト音楽大学 Autumn Concert」


「エリザベト音楽大学 「Trio Riviere ~トリオ リヴィエール~」コンサート」


「エリザベト音楽大学 サクソフォンラージアンサンブル 第22回定期演奏会」

を経て、卒業演奏会に登場です




ラーション:協奏曲 作品14より 第1楽章

アルトサクソフォンで演奏しました。
流れるような綺麗なメロディで、音の響きがかなり良かったです
とても力強い高音が印象的でした。
サクソフォン独奏の場面があり、ややミステリアスな雰囲気でした。





2.声楽専攻(ソプラノ)の古江梨乃さんと、ピアノ伴奏の鹿取裕美子さん。

木下牧子:竹とんぼに
團伊玖磨:紫陽花
ヴェルディ:オペラ《運命の力》より「神よ、平和を与えたまえ」




「竹とんぼに」はどこかもの悲しい雰囲気があり、かなり良い声でした。
「紫陽花」はかなり迫力があり、高音の響きが凄く良かったです
「オペラ《運命の力》より「神よ、平和を与えたまえ」」は少し悲しく、しかし迫力が凄い箇所もありました。





3.管弦打楽器専攻(打楽器)の安倍聖人さんと、ピアノ伴奏の谷崎友美さん。安倍聖人さんは、



「エリザベト音楽大学 大学祭」(この時は指揮者で登場)


「エリザベト音楽大学 第77回定期演奏会」


「エリザベト音楽大学 「Trio Riviere ~トリオ リヴィエール~」コンサート」


「エリザベト音楽大学 サクソフォンラージアンサンブル 第22回定期演奏会」


「エリザベト音楽大学 打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~」

を経て、卒業演奏会に登場です




(安倍聖人さんが一番多く演奏会で縁がありました。)




セジョルネ:《マリンバと弦楽のための協奏曲》より 第2、第3楽章

第2楽章
マリンバの独奏で始まり、凄みがありました。
ピアノも入り、次第に音程が上がって行く場面が良かったです。
マリンバも音程が上がって行きました。
この演奏がもう一度繰り返され、マリンバもピアノも迫力があって凄く良かったです

第3楽章
マレット(マリンバを叩くもの)を変えました。
ピアノもマリンバも力強く始まりました。
マリンバのリズミカルな演奏が目立ち、またピアノの「タン!」という演奏にマリンバが力強くリズミカルな演奏で合わせるのがかなり良いと思いました





4.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の久都内美嵯子さん。久都内美嵯子さんは、



「エリザベト音楽大学 創立70周年記念演奏会」

を経て卒業演奏会に登場です




ラヴェル:《鏡》より Ⅰ.夜蛾 Ⅳ.道化師の朝の歌

Ⅰ.夜蛾
ミステリアスで不穏な雰囲気で始まり、音色が不気味でした。
ずっと不穏な雰囲気がありました。

Ⅳ.道化師の朝の歌
ややリズミカルに始まり、そこからとてもリズミカルな演奏になりました。
スピードがあり、指を滑らす演奏が良かったです





5.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の重谷萌瑠(める)さん。重谷萌瑠さんは、



「エリザベト音楽大学 第77回定期演奏会」(コンクールで優秀な成績を収めた人の表彰式に登場)

を経て、卒業演奏会に登場です
上手いという評判を聞いてもいて、一度聴いてみたいと思っていた人で、この卒業演奏会でついに叶いました。




リスト:スペイン狂詩曲 S.254

迫力ある不穏な始まりでした。
高音の撫でるような演奏が良かったです。
「タタターン タタタンタンターン」というメロディが何度もあり、次第に音程を上げて行きました。
スペインらしい情熱的な音色で良いと思いました




力強さ、リズミカルさ、滑らかさ、どれも良く、凄く上手いと思いました。
この人の演奏を聴いてスペイン狂詩曲という曲が好きになりました






6.声楽専攻(バリトン)の秋村和希さんと、ピアノ伴奏の末政優衣さん。




ヴェルディ:オペラ《ドン・カルロ》より「私です、カルロ様」

バリトンの歌声に深みと迫力があり、ピアノは穏やかに合わせていました。
穏やかに歌っていましたが叫ぶように歌った箇所もあり、一気に迫力が出た変化が良かったです。





7.管弦打楽器専攻(打楽器)の山内菜央さんと、ピアノ伴奏の若狭南美さん。山内菜央さんは、



「エリザベト音楽大学 打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~」

を経て、卒業演奏会に登場です
若狭南美さんは、


「エリザベト音楽大学 フルートオーケストラ 第30回記念演奏会」


「エリザベト音楽大学 「Trio Riviere ~トリオ リヴィエール~」コンサート」


「若狭南美さん 卒業記念ピアノリサイタル」

を経て、卒業演奏会に伴奏で登場です






安倍圭子:プリズム・ラプソディ

マリンバの力強く打ち付ける演奏で始まり、ピアノも始まり、そこから二人ともやや不穏な音色で演奏しました。
マレットを片手に3本持っての演奏は初めて見ました。
ピアノとマリンバが呼応しながら演奏する場面もありました。
最後はスピードも迫力も圧倒的で凄く良かったです





8.声楽専攻(ソプラノ)の藤原晴珠さんと、ピアノ伴奏の猪田桂子さん。

プッチーニ:太陽と愛
ドニゼッティ:オペラ《アンナ・ボレーナ》より「あなたは泣いているの?…私の生まれたあのお城」




「太陽と愛」はゆったりしたメロディで、その中でソプラノが力強くなる箇所がありました。
「オペラ《アンナ・ボレーナ》より「あなたは泣いているの?…私の生まれたあのお城」」はややミステリアスな歌い出しで、やがて凄く高く力強い歌声になります。
最後の凄く高い歌声が特に良いと思いました。





9.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の小林桃子さん。

スクリャービン:ピアノソナタ 第5番 作品53




迫力のある始まりでした。
ややミステリアスで高音が目立っていました。
スピードがかなりあり、リズミカルさもありました。
やがて凄いスピードと迫力になり上手いと思いました
一番最後、右手で刀でスパッと鍵盤を切るようにして演奏を終えたのが印象的でした。





10.卒業生合唱

ブルックナー:アヴェ マリア(アカペラ)
ブルックナー:グラドゥアーレ「この場所をつくりたもうたのは神である」(アカペラ)
B.チルコット編曲:O ダニーボーイ(アイルランド民謡)  ピアノ:廣川由香子 指揮:榊原哲







最後の最後、廣川由香子さんが伴奏で登場しました。廣川由香子さんは、



「エリザベト音楽大学 Autumn Concert」


「エリザベト音楽大学 第77回定期演奏会」(ピアノソリストで登場)


「エリザベト音楽大学 創立70周年記念演奏会」

を経て、卒業演奏会に伴奏で登場です

「アヴェ マリア」はとても神聖な雰囲気の曲でした。
「グラドゥアーレ「この場所をつくりたもうたのは神である」」も神聖な雰囲気の曲で、力強くなる箇所もありました。
「O ダニーボーイ」は少し悲しくもありながら安らぐ雰囲気で、卒業にピッタリな曲かも知れないと思いました


演奏会で縁のあった人が卒業演奏会に登場するのを見ると、万感の思いになります。
2018年10月からの5ヶ月ほどでしたが、卒業演奏会に登場するまでの活躍を知っているので、それぞれの演奏会での勇姿が思い浮かびました。
「今日この日の演奏を区切りに巣立って行くのだな」と思い、少し寂しくもなりました。
卒業演奏会での個人演奏が叶った人も、そして叶わなかった人も、これからの未来がより良いものになっていくことを祈ります



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「エリザベト音楽大学、広島大学 「Ensemble PAZZO 2nd season」コンサート」
「エリザベト音楽大学 サクソフォンラージアンサンブル 第22回定期演奏会」
「エリザベト音楽大学 打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~」
「エリザベト音楽大学 2019年度卒業演奏会」
「一楽章f未完成 FLUTE VIOLIN CONCERT」
「一楽章f未完成 「永遠につづく音」コンサート」
「一楽章f未完成 「イル・ピアッチェーレ ひろしま」コンサート」
「一楽章f未完成 I LOVE MELODY SAXOPHONE LIVE」
「一楽章f未完成 弦楽四重奏コンサート」
「一楽章f未完成 Violin & Cello Duo Concert」
「楓子さんワンマンライブ『それでいいんだ』」
「第9回 ハートフルコンサート」
「威風堂々クラシック in Hiroshimaコンサート」
「広島女学院 第22回クリスマスチャリティーコンサート」
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ネットでの「偉そうな人」への対処

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ブログやツイッターなどをしていると、妙に言動が偉そうな人を見かけることがあります
偉そうな人には主に次の二通りあるように思います。

1.個人で偉そうにする人
2.周りに対して偉そうにする人

1番の「個人で偉そうにする人」は、あくまで個人のことなので、まあ言いたいように言って頂けば良いのではないかと思います。
まずいのは2番の「周りに対して偉そうにする人」で、「まったくあなたはなっていない、こうしなさい」「まったくあの人達はなっていない、こうすべきだ」のような物言いのことです。
こういった物言いをされた人は、「この人いったい、何様のつもりなの?」と激怒することになるのではと思います。

現実世界でどのような地位や名誉を持つのかは分かりませんが、ネットの世界でそれは威力を発揮出来ず、周りとの関係は「対等」です。
これをわきまえず、周りに対して上から目線で偉そうな物言いをすると、トラブルになるのだと思います。
また世の中には、自身を上に置き、周りを下に置いた形でないと物が言えないタイプの人も居るのだろうなと思います。
舐められたくない、自身を優位に立たせたいといった思いがあるのかも知れませんが、その物言いが周りからどう見えるかは重要な点です。

また「こうしなさい、ああしなさい」と他人の方針を自身の思い通りにコントロールしようとするのは、「サイコパス」か「世間知らず」のどちらかではと、私は思います。
私の場合の見分け方として、上から目線の物言いをするのとは別の場面、例えば誰かの心境に動揺が走った時、「私はあなたのことを心配しています」と言葉巧みに近付き、「心配しているので、こういったことをしてくれませんか?」と考え方や行動を操ろうとするようならサイコパスではと思います。
そしてそういったことにはあまり関心を示さず、ひたすら周りへの偉そうな物言いに邁進するようなら世間知らずかなと思います。
サイコパスは単純な上から目線の物言いに加え「周りを操ること」に重きを置くでしょうから、より狡猾な印象があります。

「世間知らず」とは世間を知らない人、対等な関係の人との付き合い方をわきまえていない人のことなので、「自身と周りは対等(上から目線は御法度)」がなかなか理解出来ないのかも知れません。
そういった人はもしかしたら、「周りに命令するのが当然の環境で育った」のような事情があるのかも知れませんが、不快さではサイコパスに引けを取らないものがあります。

これらの偉そうな物言いをする人とどう付き合うかですが、私は関わらないのが一番良いと思います
無理に相手にせず、世の中にはそういう人もいるのだなと割り切り、距離を置いて関わらないようにするのも大事なことだと思います。
場合によっては関わらないといけないこともある現実世界と違い、関わるのも自由、関わらないのも自由なのがネットなので、関わりたくないものには関わらないようにして快適に楽しんで行きたいです

真冬の訪れ

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昨日、今日と物凄く寒くなりました。
朝起きた時からこの冬一番の寒さで、部屋の気温が昨日は12度台、今日は11度台まで下がりました。

12月に入ってからこれまでの間、意外と暖かい日が続いていました
最高気温も15度前後の日が多く、コートの下が真冬の寒さの時より一枚少なくても過ごせていました。
そこから一気に昨日今日と最高気温が5度くらいまで下がり、朝だけでなく帰宅時も寒さに身を縮ませながら歩くことになりました。
寒いと早足になり、タッタッタッタッと一歩一歩を踏み出すスピードが先日までよりも明らかに速くなりました。
また今日は夜中に雪が降ったようで、朝外に出ると辺りがうっすら雪化粧していて驚きました
凍て付く寒さで身を縮めましたが、雪化粧した景色を見て束の間朝の忙しさを忘れて静謐な気持ちになりました

週間予報を見ると、昨日今日の寒さはこれから少し緩むものの、最高気温15度くらいの日々には戻らないようです。
今回の寒波が真冬を連れて来たのだと思います。
これからしばらくはコートの下も厚く着込んで過ごすことになると思います。

自身の気持ちも、つい先日まで木々に少し残った紅葉を見て晩秋の名残を感じていたのが、寒波によって一気に冬モードになりました。
気付けば今年の冬至まであと5日、クリスマスまであと9日に迫り、やはりそれくらいの時期になると真冬がやって来るのだなと思います。
クリスマスの先には大晦日、そして年越しが待っています。
新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年も残りわずかとなり、コロナだけでなく真冬の寒さにも気を付けながら過ごして行きたいです

新型コロナウイルスと健康な体作り

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ツイッターで流れてきたツイート(呟き)によると、新型コロナウイルス予防にビタミンDが効果があるかも知れない、という説が出回っているようです。
※あくまで「かも知れない」という情報を見ただけなので、盲信はせず、様々な情報を見てご自身でお考えになり、ご自身で方針をお決めになってください。

私の場合はこの話を見て、本当なのか実際には新型コロナウイルス予防に関係ないのかよりも、「ビタミンD」というところに興味を持ちました。
ビタミンDは食べ物から摂る他に、太陽の光を浴びることで体内で自動的に作られます
なので晴れた日に外を歩くのが好きな私は無理なくビタミンDを作ることが出来ます。
元々ビタミンDは体内に吸収されにくい「カルシウム」を吸収しやすくして骨を丈夫にしてくれる効果もあるので、新型コロナどうこうに関係なく私にはそれだけでも十分です

ただし今は冬の時期で日が短く、平日は通勤で朝夕にそれなりの時間外を歩きますが、ほとんど日差しを浴びられないです。
冬場は日差しを浴びる時間が少なくなりがちなので体内のビタミンDも減りやすくなるだろうなと思います。
なので最近はその分休日にしっかり歩くようにしています。

しっかり歩くことで体力も付けることが出来ます。
治療薬やワクチンの開発が進んではいても依然として新型コロナウイルスは大きな脅威なので、万が一に備え体力は上げておいたほうが良いと思います。
ただし歩き過ぎて体が疲れるとかえって体調を崩しやすくなり本末転倒な気がするので、程々にウォーキングするくらいが丁度良いのだろうと思います。
日差しを浴びてビタミンDを作り、体力も上げて健康を守って行きたいです

2020年大晦日

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もうすぐ2020年が終わろうとしています。
一年納めの12月は途中まで暖かい日が多く、まだ晩秋が続いているかのようでしたが、後半になると寒い日が増えて冬らしくなりました
冬至を迎え、クリスマスイブとクリスマスを迎え、あっという間に大晦日になり年越しを迎えようとしています。

今年は何と言っても新型コロナウイルスに振り回された一年でした。
実家にはお正月の滞在以来、ついに一度も帰省しないまま一年が終わろうとしています。

振り返ってみると、1月前半の頃はまだ現在のような大事になるとは思っていなかったです。
ところがある日、世界で初めて新型コロナウイルスが確認された中国からの観光客をたくさん乗せた客船を日本が無防備に入港させるニュースをツイッターで見て、嫌な予感がしました。
その頃は船も飛行機もまともな対策もなく海外から日本に入れていたので、そういったルートでどんどん感染が広がるのは時間の問題だったのではと思います。

私の場合はクラシックの演奏会によく出掛けるので、演奏会を通じて新型コロナウイルスの影響がどんどん影を落として行くのを実感しました。
2月から3月上旬にかけて、予定していたのより大きなホールでの開催にしてソーシャルディスタンスを確保できるようにしたり、マスク必須での開催にするなど、苦心しながら何とか開催しているのが分かりました。
やがて開催自体出来なくなり、演奏会、コンサートが街から姿を消しました。
最近は再び何とか開催する動きを見せていますが、やはり影響は大きく受けています。
一日も早く新型コロナウイルスの混乱が収まり、かつてのように開催出来るようになってほしいです。

ブログはなかなか思うようなペースでは書けず、記事の更新は少なくなってしまいました。
それでも2月から5月にかけて3ヶ月くらい休んでからは続けて来られたので良かったです。
来年はぜひ週に1~2回更新出来るくらいのペースを取り戻したいです
平日はツイッターメイン、休日はブログメインのように、上手く使い分けられたらと思います。

読書もなかなか読めない期間があってから、今年再開することが出来ました。
まだまだ本来のペースに戻っていませんが少しずつ戻して行けたらと思います。
感性を育むのに読書は良いと思います

大変な一年でしたが、無事に大晦日まで来られて良かったです。
ブログや読書も思うように進めるきっかけは掴めた気がします。
そして2021年はぜひ新型コロナウイルスの混乱も収まり、落ち着いた一年になってくれることを願います

新年のご挨拶

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新年明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします
良い一年になることをお祈り致します。

今回のお正月休みは新型コロナウイルスの影響で帰省出来ませんでした。
帰省の際は感染者数がとても多い東京を通るので、万が一新型コロナウイルスに感染すると体力のある私は大丈夫かも知れませんが、家族は危ないと考えました。
普段どおりの生活で年末年始を過ごすことになり、特に年末は年を越すという実感がなかなか湧きませんでした。
それでも大晦日は年越しそばを食べたい気持ちになり、お昼と夜それぞれお店で美味しいそばを頂きました
気持ちが「年越しらしい物」を求めたのかなと思います。

始まったばかりの2021年は東京を中心に、新型コロナウイルス感染者数が天井知らずに増えています。
ついに1月8日から東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に再び緊急事態宣言が出されることになりました。
私的には今年はぜひ昨年より新型コロナウイルスの混乱が収まってほしいと思います。

今年はブログを書くペースを少しずつでも取り戻して行きたいです。
まだ記事に出来ていないクラシック演奏会や、フォトギャラリーに出来ていない景色の写真がたくさんあり、これから読みたい小説もたくさんあります。
そういった一つ一つへの情熱を取り戻せる年に出来たら嬉しいです
コロナの閉塞感はありながらも、日々を楽しむことは忘れずに行きたいと思います

年末年始の体力強化とダイエット

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今回のお正月休みは12月25日から1月4日まででした。
その間、ウォーキングをしてダイエットと新型コロナウイルスに備えての体力強化をすることにしました
スマートフォンに万歩計が付いているので歩いた歩数を記録して行きました。
それぞれの日ごとの歩いた歩数は次のとおりです(端数切り捨て)。

12月25日 19000
12月26日 18000
12月27日 13000
12月28日 20000
12月29日 12000
12月30日 10000
12月31日 22000
01月01日 18000
01月02日 20000
01月03日 20000
01月04日 18000

1日につき必ず10000歩以上歩くことを意識しました。
目安として10000歩歩くのに1時間と少しかかっていて、それだけ歩くとそれなりに脂肪を燃焼出来ている気がします。
合計すると11日間で190000歩歩きました。

普段の年だとお正月休みに餅などをたくさん食べて休み明けは体が重くなりがちでした。
それが今回は帰省出来ないのは残念でしたが、たくさん歩いたおかげで体が締まって動きやすい状態になっているのは良かったです
体力も向上して休み明けの通勤もスムーズに歩けました。
この調子で休みの日を中心にしっかり歩き、ダイエットと体力強化を続けて行けたらと思います

「戸村飯店 青春100連発」瀬尾まいこ

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今回ご紹介するのは「戸村飯店 青春100連発」(著:瀬尾まいこ)です。

-----内容-----
大阪の超庶民的中華料理店、戸村飯店の二人息子。
要領も見た目もいい兄、ヘイスケと、ボケがうまく単純な性格の弟、コウスケ。
家族や兄弟でも、折り合いが悪かったり波長が違ったり。
ヘイスケは高校卒業後、東京に行く。
大阪と東京で兄弟が自分をみつめ直す、温かな笑いに満ちた傑作青春小説。
坪田譲治文学賞受賞作。

-----感想-----
大阪の庶民的な中華料理店の二人の息子が主人公ということで、大阪弁がたくさん登場するのはもちろんのこと、会話にも大阪的なノリがたくさん見られました
ヘイスケとコウスケの父が店主を務める戸村飯店はラーメンやチャーハンが主なメニューの庶民的なお店で、安くて美味しいのでそこそこ繁盛しているとありました。
物語は第1章から第6章まであり、それぞれコウスケの視点とヘイスケの視点の物語が交代で進んで行きます。


第1章の語り手は高校2年生のコウスケで、高校の学年末テストが終わってもうすぐ卒業式の時期に物語は始まります。
コウスケはクラスメイトの岡野から兄のヘイスケへのラブレターの代筆を頼まれます。
コウスケはヘイスケと仲が悪いですが、岡野の頼みを断れずにラブレターを手伝うことになり、岡野のことが好きと胸中で語っていました。

ヘイスケは4月から東京の専門学校に行きます。
小説のことを学び小説家になると言っていますが、コウスケは本当に小説家になる気があるのか疑っています。
ヘイスケのことを「最低な人間」と評していて、要領の良い立ち回りを嫌悪していました。
第1章を読んだ時点では私もヘイスケは最低な人だなと思いましたが、読み進めて行くうちにヘイスケが抱えてきた悩み、そしてヘイスケが持つ良さが見えてきます。

季節が「春」になる時の空の描写が良いと思いました。
ついこの間まで殺風景だった空も、少しずつ淡い色に変わっている。
もう完全に冬が終わるのだ。
いい季節だな。
情緒なんてものを持ち合わせてない俺でもそう思う。
晴れた日の冬の空は澄んだ青色になり、色のグラデーションがあまりないのに対し、春の青空は淡い色合いをしています。
またコウスケは冬の澄んだ青空を「殺風景」と表現していて、冬は雲のほとんどない日がよくあるので見方によっては殺風景とも言えるなと思いました。
コウスケは自身を「情緒なんてものを持ち合わせてない」と言っていますが、この場面を見てそんなことはないと思いました。

戸村飯店は出前もしていて、コウスケが出前を届けに行くと飴やチョコをくれる人が多いです。
これは大阪らしい雰囲気だと思いました。
私が昔大阪に住んでいた時も、ある駅の前で露店を出してたこ焼きを売っていた人は、買いに行くとお願いしなくても気前良くおまけしてくれることがよくありました。

コウスケは手伝える時はお店を手伝っています。
そういうものだと昔から思っていたとあり、全く手伝わないヘイスケとは大きく違います。
ヘイスケは常連客からもお店を放って用もないのに東京に行くボンボンだと思われていて、ある日広瀬のおっさんという常連客に「お前はなってない」という具合に詰め寄られていました。
誰が相手でものらりくらりとかわして行くヘイスケですが、お店の常連客からも目を付けられていたら居たたまれないなと思いました。

コウスケは一緒に住んでいても本当の兄がどんな人間なのか分からずにいます。 
ある時ふとヘイスケがこの夏、コウスケのふりをして書いてくれた太宰治の「人間失格」に書かれていた言葉を思い出します。
「僕も主人公と一緒だ。僕だって、生まれてきてすみませんと思っている。人間失格とまではいかないけど、この家の、この町の人間としては、失格なのかもしれない」
これはヘイスケ自身の思いなのかも知れないと思いました。


第2章の語り手はヘイスケになります。
4月になり、ヘイスケは東京にある花園総合クリエータースクールという専門学校のノベルズ学科に入りました。
「今まで、その場所に順応していると感じたことは一度もない」と語っていて、大阪の住んでいた町の雰囲気にも馴染めず息苦しさを感じていたことが明らかになります。
またヘイスケが花園総合クリエータースクールに入ったのは、1ヶ月経って自身に合わなかったら入学金返金で辞めることが可能だったからとありました。
「俺は小説家を目指したことはなかった」とはっきり語っていて、コウスケの予想が当たっていました。
「ただ家を出られさえすれば、なんでもよかったのだ。」とあり、そうまでして出たかったのかと驚きました
コウスケからヘイスケに語り手が変わるとコウスケの視点とは全く違うヘイスケの姿が見えてきて興味深かったです。

ヘイスケは大阪の人ではありますが、会話にオチを付けたり周りを笑わせるのは苦手にしています。
「キャラクター構成発想講座」で講師の岸川先生から自分で作ったキャラクターで履歴書を埋めてという課題を出され、周りが奇抜な履歴書を作る中、ヘイスケは自身の生い立ちをモデルにしたごく普通の履歴書を書いてしまいます。
ところが岸川先生がそれを読み上げると他の人達からは大ウケしてヘイスケは戸惑います。
「ここで、こういう普通の履歴書持って来るあたり、やるよね」と、狙ったわけではないですがみんなにウケていました。

ヘイスケは家城(いえき)さんというクラスメイトの女子に連れられて来た「カフェレストランRAKU」で戸村飯店のほうが良い食材を使っていると気付きます。
その様子は料理を的確に分析していて、コウスケが語り手の第1章ではちゃらんぽらんで駄目な兄として描かれていましたが、やはり料理店の息子だなと思いました。
ヘイスケはRAKUでアルバイトをしたいと言い、店長の品村も乗り気になり採用されアルバイトが始まります。
一週間ですっかり要領を得ていて流石に器用な人だと思いました。

RAKUのバイト仲間のマキちゃんに「気取ってないね」と言われてヘイスケは喜びます。
「戸村飯店で、俺はしょっちゅう「気取ってる」「ええ格好しい」「すましとる」と、言われた。」とあり、ヘイスケの無理のない自然な形での立ち居振る舞いは、大阪よりも東京向きなのだろうなと思いました。
「馬鹿笑いをして阪神タイガースを心底愛してないと、戸村飯店ではええ格好しいなのだ。」とあるのも印象的で、大阪的なノリの良さがないとそう言われるようです。

花園総合クリエータースクールをすぐに辞めるつもりでいたヘイスケですが、何と岸川先生から告白されて付き合うことになります。
岸川先生は今までほとんど話したこともないのにヘイスケが早々に学校を辞めるつもりでいることも見抜いていて、鋭い人だと思いました。


第3章の語り手はコウスケです。
戸村飯店の常連客達がヘイスケがいないのを寂しがっていて、これは意外でした。
「主役ではないがあいつがいないと場が締まらない」といった言葉があったのが印象的で、今まではいけ好かないと思っていたのが、いなくなってみると存在の大きさを感じたようでした。

「七時を過ぎてるのにあほみたいに明るい空。時間の猶予がまだたくさんある気がする。夏が真ん中に向かっていく。俺が一番好きな季節。」
7月の夏休み直前の頃と思われ、「夏が真ん中に向かっていく」は良い表現だと思いました。
「真ん中」は気候の面でも気持ちの面でも特に夏らしくなる時期で、そこに向かっていく時期はワクワクします

合唱祭でコウスケのクラスは「大地讃頌」を歌うことになり、コウスケが指揮を務めます。
最近気になっていた曲なのでこれは印象的でした。

コウスケは「大地讃頌」でピアノを弾く北島と仲良くなり、家に泊まりに行った時にヘイスケとも毎日同じように寝ていたことを思い出します。
北島はお坊ちゃん的雰囲気を持つ爽やかな好青年で、夕飯にビーフストロガノフが出てきて食べたことのないコウスケは面食らっていました。
コウスケの家にも行きたいと言う北島にコウスケは次のように言います。
「家中、中華のにおいやし、家族中あほみたいなことしゃべっとるし、ガラの悪いおっさんらが入り浸ってるし。だいたい、ストロガノフもゴルバチョフも一生食卓に並ばんような家やねん」
すると北島は「おもろそうやん」と言い、コウスケにとってはとても自慢出来ないと思っているような家でも、全く違うタイプの北島からは魅力的に見えるのだと思います。

一学期終業式の日、北島が戸村飯店に泊まりに来ます。
北島がコウスケが岡野を好きなのは全校生徒みんな知ってるんちゃうん?と言うとコウスケは動揺していて、この会話が面白かったです。
またコウスケ達が通っている高校の名前は野川高校と分かりました。


第四章の語り手はヘイスケです。
ヘイスケは岸川先生と付き合いアリさんと呼ぶようになりました。
アリは8歳年上とあるので27歳だと思います。
専門学校を辞めてカフェRAKUでのアルバイトに専念し、すっかり板に付いていました。
「ヘイスケがアルバイトをしてからRAKUに来る女性客が増えた」とありましたが、当のヘイスケは「女の人にしか人気ないんはあかんなあ。しかも、若い女の人だけっていただけんね」と言い、「老若男女に好かれないとあかんやん」と言っていました。
最初はちゃらんぽらんなイメージのあったヘイスケですが、お店を繁盛させるためには特定の層だけでなく様々な層から好かれないといけないという真摯な思いを持っていることが分かりました。

東京では関西のノリが大いにウケるから「おおきに」や「毎度」などを積極的に使うようになったとあり、ヘイスケが順応性の高さを見せていました。
店長の品村はアルバイトの意見でも素直に聞き入れて「ありがとう」と言う人で、これは意外と凄いことではと思います。
世の中には自身より職位が下の人の意見を軽く扱う人も居る中で、品村は「誰の意見か」よりも「どんな意見か」で物を考えられる人なのだと思います。

小学校一年生の時の回想があり、ある日ヘイスケとコウスケが二人揃って父親から包丁を渡されジャガイモを切ることになりました。
長男でもありさらにコウスケと違って父親に似て手先が器用なヘイスケは期待に応えたいと思っていました。
ところが気負いからか指を切ってしまい、後日もう一度二人揃ってジャガイモを切ることになった時も指を切ってしまい、以来ヘイスケは戸村飯店の厨房に入らなくなりました。

10月半ば、戸村飯店常連の竹下の兄ちゃんがいきなり東京にやって来て今日一日付き合ってくれと言います。
今度の土曜と日曜に東京に家族旅行に行き、ディズニーランドに行くのでヘイスケに案内してもらって先に下見をしようとしていました。
第1章では竹下の兄ちゃんもヘイスケを良く思っていないように見えたので、親しげに訪ねて来たのはとても意外でした。

竹下の兄ちゃんはヘイスケが自身を苦手にしているのを見抜いていました。
さらにヘイスケをのことを「軽そうに見えるがほんまは慎重派」と言い、よく見ているなと思いました。
二人の会話が弾んでいるのが印象的で、こんなに弾むのかと驚きました。

ヘイスケは悪い意味で理論的で、この人にはこうして、あの人にはこうして、と一人で頭の中であれこれ考えて先読みして動いていて、「一人よがり」に見えました。
ただし第4章の最後、関係がぎくしゃくしてしまっていたアリとの場面で変化が見られたのは良かったです


第5章の語り手はコウスケです。
二学期終盤に行われた最後の三者面談でコウスケが店を継ぐと言うと父親が激怒します。
コウスケが「俺の考え方の何があかんねん。店継ぐって言うとるやろ」と反発すると父親は「誰が店継いでええって言うた?」と言い、これは父親に腕を認められてからにしろということだと思いました。
さらに事前相談なしで突然「継ぐ」と言っても良い気はしないと思われ、物事には順序があるのだと思います。
教師にも父親にも大学進学を勧められコウスケは戸惑います。

コウスケは進路の相談をしにヘイスケに会いに行きます。
大嫌いなはずのヘイスケに頼ったのが印象的で、土壇場で進路が暗礁に乗り上げそれだけ困っていたのだと思います。
東京に行ってヘイスケと話す中で「兄貴がすってたのはごまばかりではなかったのかもしれない」と胸中で語る場面があり、ヘイスケを見る目がそれまでとは変わりました。


第6章の語り手はヘイスケです。
ヘイスケは品村からRAKUの正社員にならないかと誘われます。
そんな中、春休みの終わりの頃ラジオから流れてきた曲がきっかけで突然大阪に帰りたい気持ちになります。
かつて嫌っていた場所を懐かしんで帰りたくなる心境の変化が印象的でした。
「戸村飯店に集まる人の素晴らしいところ。~」と苦手にしていた人達の良さを語っていたのも印象的で、この心境になったのが嬉しかったです。


第1章から第6章まで、1年の時間が流れました。
その中でヘイスケ、コウスケそれぞれが序盤とは大きく違う心境になって行ったのがとても印象的でした。
ヘイスケは念願叶って戸村飯店を出て行ったことで、コウスケも念願叶ってヘイスケがいなくなったことで、それぞれが新たな日常を過ごす中で、かつて嫌いだった物の見えていなかった良さを見出していました。
二人とも門出を迎えていて、ぜひその先が良い人生になっていってほしいなと思う素敵な終わり方でした


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