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CHRISTMAS IN PEACE CONCERT 2019

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(左から木村紗綾さん、重野文歌さん、向井真帆さん。)

2019年12月25日、広島県廿日市(はつかいち)市の「ウッドワンさくらぴあ 小ホール」で行われた「CHRISTMAS IN PEACE CONCERT 2019 星空に輝く若手音楽家による平和の響き」を聴きに行きました。
このコンサートには何度も演奏を聴いたことのあるヴァイオリン演奏者の木村紗綾さん、さらに「一楽章f未完成 Violin & Cello Duo Concert」で演奏を聴いたチェロ演奏者の向井真帆さんが出演されるので興味を持ちました。
コンサートは全部で5曲あり、前半3曲は木村紗綾さん、向井真帆さん、さらにピアノ演奏者の重野文歌さんの3名が演奏し、後半2曲は弦楽アンサンブル(弦楽器による編成)「ヒロシマ・ピース・オーケストラ・ストリングス」が演奏しました。
かなり盛り上がったコンサートで、2019年に聴いた最後のコンサートでもあります



1. ヴァイオリンソナタ第21番K.304:W.A.モーツァルト



(左から木村紗綾さん、重野文歌さん。この2人で演奏しました。)

木村紗綾さんは1曲目演奏後のトークで喋るのが得意ではないので頑張ると言っていました。
今日出演するのは総勢12人とのことでした。
また重野文歌さんとは1年前に初共演したとのことで、その縁で今回もご一緒したようでした。

一楽章
物悲しそうな始まりで寂しそうでした。
タッタッタッタ!とヴァイオリンとピアノが力強くなる場面があり、そこが良かったです。
良いアクセントになっていて、ピアノもかなり上手いと思いました。


二楽章
ピアノのソロ演奏で始まり、高音で物悲しかったです。
ヴァイオリンも始まり、こちらも高音で悲しそうに聴こえました。
安らぐ雰囲気のピアノソロがあり、そこに同じく安らぐ雰囲気のヴァイオリンが入りました。
両方が合わさって悲しげですが安らぐ音色になっていました。
激しさが現れる場面もあり、同じ悲しさにも濃淡が表されていました。




(重野文歌さんトーク中。)

今日はよろしくお願いしますの後、2曲目の紹介がありました。
重野文歌さんの演奏を聴くのはこの日が初めてだったのでどんな演奏をされるのか興味深かったです。



2. 無言歌集 第6巻 作品67より 第1曲、第2曲:F.メンデルスゾーン

第1曲
凄く安らぐ音色で始まりました。
そのまま穏やかな安らぐ音色が続いて行きました。

第2曲
第1曲が終わって一度途切れてから、スピードを上げて演奏が始まりました。
こちらは華麗な音色でロマンチックな雰囲気を感じました。
メンデルスゾーンは曲が優しげであったりロマンチックという話を聞きますが、2曲とも短い曲の中にらしさを感じました。



3. ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 作品32:A.アレンスキー



(左から木村紗綾さん、重野文歌さん、向井真帆さん。ピアノ三重奏曲はピアノ、ヴァイオリン、チェロの編成で演奏されます。)




(演奏の様子。)

一楽章
悲しげな始まりで、どこか気高さもある音色の主題(クラシック音楽で、何度か演奏されるその楽章の軸になる音色)でした。
3人で凄く力強い演奏をする場面がありました。

再び冒頭の主題になります。
最初にピアノとヴァイオリンで演奏し、そこにチェロも入り、3人で凄く力強く演奏していました。
この楽章は主題の演奏が何度も繰り返されるのがとても印象的でした。
最後の方では、まずチェロが低音で主題を演奏し、次にヴァイオリンがチェロよりは高い低音で主題を演奏し、最後にピアノが高音で主題を演奏する3連続の場面があり、かなり良かったです

ピアノが物凄く良い場面があったのも印象的でした。
凄く速く、強く弾き、それでいて凄く滑らかでした。 
速く強く弾くのと滑らかに弾くのを兼ね備えた弾き方をするのは難しいと思います。


二楽章
弾むように始まり、ピアノの弾み方が凄く良かったです。
柔らかな弾力があるなと思いました。
3人の連携が良く、ピアノが弾む中でヴァイオリンとチェロは短く切るような演奏をしていました。
同じ演奏を何度か連続した場面があり、ピアノを中心にヴァイオリンとチェロが支えていて凄く良い音色でした


三楽章
チェロとピアノで悲しそうに始まります。
チェロが中心で、そこにヴァイオリンも入って行き3人で悲しそうな演奏をしました。

ピアノの音色が軽やかになります。
ヴァイオリンが凄く高音で演奏し、こちらも悲しそうではなくなりました。
そこからヴァイオリンが悲しそうな演奏になり、ピアノが掛け合うような演奏をし、チェロはピッチカート(弦を指でポロンポロンと弾く演奏)で支えていました。
最後は静かに終わりました。


四楽章
3人での激しい演奏で始まります。
ピアノをヴァイオリンとチェロで支え、凄く力強い演奏でした。
チェロとピアノ、ヴァイオリンとピアノでそれぞれ同じ演奏をした場面があり、もの悲しさがありながらも軽やかさも感じる音色がかなり良かったです。
どんどん高音になりながら盛り上がって行き、これもかなり良かったです。
ピアノが軽やかに演奏しているところにチェロがゆったり軽やかに入り、さらにヴァイオリンもゆったり軽やかに入って行く場面があり、一つずつ音が重なって行く雰囲気が良かったです。
最後は3人で静かに終わり、「余韻」の良い終わり方でした




(演奏終了時。颯爽とした、とても爽やかな雰囲気になったのが良かったです。コンサートの象徴的な場面だったように思います



4. 『和声と創意の試み』作品8より 協奏曲第4番「冬」:A.ヴィヴァルディ



(4曲目から弦楽アンサンブルが登場。木村紗綾さんと向井真帆さんは衣装が変わりました。)





(木村紗綾さんがソロヴァイオリンを務めます。)




(弦楽ストリングス全景。)

緊迫した不穏な雰囲気の音色で始まります。
そこからソロヴァイオリンが凄く緊迫した演奏をしました。
やがてどこかで聴いたことのあるリズミカルでドラマチックさを感じる音色になります。
ヴィヴァルディの「四季(『和声と創意の試み』に入っている「春」「夏」「秋」「冬」の4曲の総称」は、「春」が学校の卒業式で誰しも一度は耳にしそうな有名曲ですが、「夏」「秋」「冬」もそれぞれに良さがあります。

弦楽アンサンブル全体が支える中で、ソロヴァイオリンが高音で穏やかな演奏をしました。
ソロヴァイオリンが緊迫した演奏をして、チェロの向井真帆さんが支えている場面もありました。
全体での低音の小刻み演奏の場面には凄みを感じました。



(4曲目終了後にトークをする木村紗綾さんと岡田倫弥さん。)

最初に木村紗綾さんがトークをし、2人は同い年で3年前の「威風堂々クラシック in Hiroshima」で出会ったとのことです。
その時岡田倫弥さんはオーボエを吹いていて、数年後にまた出会った時に指揮者をやっていて驚いたと言っていました。
その後オーケストラを作るからソリスト(ソロ演奏者)をやってくれないかと木村紗綾さんの滞在するチェコのプラハにメールを送って来られたとのことです。

次に岡田倫弥さんがトークをし、広島には音楽大学もありますが色々な演奏者が集まる場がないのが気になっていたとのことです。
そこでオーケストラを作ろうと思い立ったとのことで、本当に作る行動力が素晴らしいなと思います。
また、私達は「盛り盛りプログラム」が大好きとのことで、このコンサートも演奏時間の長い曲が3曲目と5曲目に置かれていて、体力が切れないようにするのが大変だと思います。



5. 弦楽セレナード ハ長調 作品48:P.チャイコフスキー



(5曲目演奏前。オーケストラ全景。)

一楽章
テレビのCMなどで誰でも一度は耳にしていそうな悲しそうで神聖な雰囲気の有名メロディで始まります。
チェロの「ドレミファソラシド」の1音ずつ上げる演奏の後、また全体が冒頭の音色になります。
今度はソロヴァイオリンの「ドレミファソラシド」の後、全体が冒頭の音色になります。
有名メロディが繰り返されるうちに、曲の音色に引き込まれて行きました。

派手で力強い演奏の後、小刻みで華やかな演奏になります。
ヴァイオリン、チェロの順で、同じ音色の演奏を掛け合っていました。
全体が凄く力強くなり、その力強さが続いて行きました。
再び冒頭の音色になり、チェロの「ドレミファソラシド」の後、全体でやや悲しげな演奏をしました。


二楽章
全体での明るい演奏で始まりました。
ヴァイオリンが凄く高音の演奏をして華やかでした。
そこからまたヴァイオリンが凄く華やかな演奏をして、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが支えていました。
最後は全体がピッチカートになって終わりました。


三楽章
穏やかで伸びやかな演奏で始まり、少し悲しさも感じました。
チェロの力強く悲しげな音色がかなり目立ちました。
そこにヴァイオリンも加わり、力強いのに悲しそうな音色が印象的でした。

ヴァイオリンが凄く高音で、力強く悲しそうな演奏をします。
そこから静かで穏やかな演奏になり、音の伸びが良かったです。

スピードが上がって力強い演奏になります。
ヴァイオリンが「ドレミファソラシド」を何度も繰り返す場面がありました。
そして満を持して第一楽章冒頭の音色が再び登場します。
さらにソロヴァイオリンの「ドレミファソラシド」からもう一度第一楽章冒頭の音色になり、最後は凄く盛り上がりました




(5曲目終了時。オーケストラ全景。)



時期が12月25日のクリスマスで、ホールにもどことなく教会のような雰囲気があり、神聖さを感じるコンサートでした。
特に最後の「弦楽セレナーデ」は音色にもかなりの神聖さがあり、心が清められるようでした。
今振り返ってみるとプログラム構成も神がかっていて、2019年に聴いた最後のコンサートがこのコンサートで良かったなという思いになります。
またこの方々によるコンサートが開催されたらぜひ聴きに行きたいと思います



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プロフィール 2019年12月時点

ヴァイオリン 木村紗綾

広島市出身。3歳よりヴァイオリンを始める。15歳で渡欧。プラハ音楽院に首席入学。
第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第38回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール第1位、第2回ヴィッラフランカ・ディ・ヴェローナ国際コンクール第1位、併せて聴衆賞を受賞するなど国内外のコンクールで入賞。
ドヴォルジャーク音楽祭にて指揮者、ヤロスラフ・クルチェク氏とバッハのヴァイオリン協奏曲を共演。
2016年よりチェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミーに在籍中はプラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭等に出演。
2017年イタリアで開催されたインターハーモニー音楽祭ではコンサートミストレスを務める。
2011年度中村音楽奨学金奨学生。
2016年からは世界的指揮者、大植英次氏と威風堂々クラシック in Hiroshima、チャリティーコンサート等でソリスト、コンサートミストレスとして多数共演。
これまでに村上直子氏、石川静氏、中村英昭氏に師事、現在プラハ音楽院にてイージー・フィッシャー氏に師事する傍ら、チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者としても国内外で活動中。



ピアノ 重野文歌

呉市に生まれる。
5歳より母親の手ほどきでピアノを始め、2004年秋にヒロシマ・スカラシップ中村奨学生として英国のユーディ・メニューイン音楽院に編入。
2009年にベルリン芸術大学に入学する。
ディプロマを取得した後、2017年にドイツ国家演奏家資格を取得し卒業。
2013年アルトゥール・シュナーベルピアノコンクールにて第3位。
2014年スタインウェイ賞、2015年ユージリオ・ピアノアワードコンクール第3位、2016年モーツァルテ国際ピアノコンクール第2位等これまで数々の国際コンクールに入賞。
これまでにドイツ、イギリス、イタリア、フランス、スペイン、オランダ、トルコ、日本などで演奏し、近年ではソリスト、室内楽奏者としてヨーロッパ各国の音楽祭に招待されている。
また2011年から2017年までユーディ・メニューイン・ライブ・ミュージック・ナウ奨学生として慰問コンサートも精力的に行った。
2017年より2年間ベルリンの音楽学校で後進の指導をしたのち、イギリスに拠点を移し、現在は母校メニューイン音楽院にてピアノ科非常勤講師を務めている。
これまでにマーセル・ボデ、レナーナ・グートマン、パスカル・ドヴァイヨン、村田理夏子各氏に師事。
全日本ピアノ指導者協会演奏会員。



チェロ 向井真帆

広島県廿日市市出身。
12歳よりチェロを始める。
愛知県立芸術大学音楽学部を卒業。
2018年9月より1年間ドイツのケルン音楽大学へ交換留学を経て現在愛知県立芸術大学大学院博士前期課程2年に在学中。
第11回ベーテン音楽コンクール全国大会第1位。
受賞者コンサートに出演。
第10回セシリア国際音楽コンクール室内楽部門第3位。
第18回大阪国際音楽コンクール室内楽部門ファイナル入選。
2018年兼松信子基金奨学生。
コジマムジカコレギア第25回定期演奏会にてオーケストラと共演。
ヒロシマ・ピース・オーケストラ第2回演奏会にてソリストを務める。
第38回広島市新人演奏会に出演。
学内の選抜オーディションにより、「室内楽の夕べ」、「室内楽の楽しみ」に出演。
ヴィオラスペース名古屋2017に出演。
ジェム弦楽四重奏団としてPhoenix OSAQA2015、2016受講。
ルドヴィート・カンタ、H.C.Schweikerの公開レッスンを受講。
これまでにチェロをマーティン・スタンツェライト、花崎薫、H.C.Schweikerの各氏に、室内楽を花崎薫、天野武子、百武由紀、C.Beldiの各氏に師事。



指揮 岡田倫弥

広島市出身。
広島大学教育学部第四類(生涯活動教育系)音楽文化系コースを卒業後、同大学大学院を修了。
現在、昭和音楽大学大学院修士課程音楽芸術表現専攻(指揮)に在籍中。
第37回霧島国際音楽祭マスタークラスで高関健、下野竜也各氏の指導を仰ぐ。
また、熊本県立劇場主催の指揮者講習会にて、山田和樹氏から指導を仰ぎ、その際、横浜シンフォニエッタを指揮。
これまでに指揮を鈴木恵里奈、磯部省吾氏から学び、現在星出豊氏に師事。



弦楽アンサンブル ヒロシマ・ピース・オーケストラ・ストリングス

ヴァイオリン
木村紗綾 澁谷華純 原辺芽依 西山夏未 大田響子 山本一喜

ヴィオラ
長岡佑磨 園部真秀 山本絵里奈

チェロ
向井真帆 阿曽沼裕司

コントラバス
守谷みさき

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「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第60回広島」

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(トマジのサクソフォン協奏曲演奏後、観客の拍手に応える進正裕さん(写真中央))

2月17日、広島県広島市のJMSアステールプラザ大ホールで行われた「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第60回広島」を聴きに行きました。
この演奏会は「新進演奏家の発掘及び育成」を目的として、厳正な実技オーディションで出演者を選抜し、プロのオーケストラと共演する機会を提供する文化庁の事業です。
広島地区では「広島交響楽団」との共演になり、若手演奏家にとってまたとない絶好の舞台です
聴きに行くのは3年連続で、新型コロナウイルスの影響でまだまだ演奏会自体が少ない中で開催してくれたことに感謝し、素敵な音色に聴き入りました



1.モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314



(ソリスト(ソロ演奏者)の川本伶美さん。)

登場時にかなりお若い印象を受けて、パンフレットを見ると東京藝術大学のまだ1年生とありました。
1年生にして早くもこのステージに登場していて、先が楽しみだと思いました。





(川本伶美さんとオーケストラで演奏中。)

一楽章
オーボエを主役にした協奏曲を聴くのは今回が初めてなので興味深かったです。
明るい音色で始まり、この明るさはモーツァルトらしいなと思いました
ソリストも入り、陽気な音色でした。
陽気な音色のソリストをオーケストラが支える演奏が続いて行きました。

陽気な雰囲気の音色に聴いている自身も乗って行きました。
音色に浮遊感があり、音が浮き上がって来るように聴こえ、自身の気持ちもふわりと浮き上がるかのようでした。
ソリストのソロ演奏の場面もあり、ゆったりとした陽気な音色で伸びが良かったです


二楽章
ゆったりとしたオーケストラの演奏で始まり、ソリストも入り、ゆったりとして少し安らぎもありました。
オーケストラに安らぎとともに明るさが出てきて、ソリストはゆったりと時に力強く伸びやかに演奏していました。
とても心地良い音色で、ゆったりとした明るさが良かったです。
ソリストのソロ演奏の場面もゆったりとして明るく、モーツァルトはやはり明るさが良いなと思います。


三楽章
少し速めに始まり、ソリストも速く陽気に演奏していました。
オーケストラとソリストで息の合った明るさだと思いました。
ソリストのソロ演奏はとても軽快に感じ、最後も全体で軽快に演奏して終わりました。



2.プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 二長調 作品19



(ソリストの若林麗さん。この方も桐朋学園大学のまだ一年生です。)




(若林麗さん演奏が始まる直前の場面。)


一楽章
プロコフィエフはピアノ協奏曲第3番が好きでよく聴きますがヴァイオリン協奏曲は初めて聴きました。
弦楽器の小刻みな演奏で始まります。
ソリストも入り、全体がややミステリアスな音色でした。
独特なリズミカルさのある音色になり、チェロとコントラバスが力強いピッチカート(弦を指でポロンポロンと弾く演奏)をしていました。

一瞬途切れてからソリストのピッチカートが目立ちます。
曲の出だしの時点では音色のイメージが掴めていませんでしたが、この時に「ミステリアスで、どこか情熱的」と思いました。
スペインが思い浮かんでくるような情熱的な音色で上手いなと思いました。
やがて全体が凄く情熱的で力強い演奏になります。

全体がミステリアスな小刻み演奏をし、フルートの伸びのある演奏が目立っていました。
ソリストも入り、かなりの高音を短く切りながら演奏していました。
最後はミステリアスに唸るような演奏で終わりました。


二楽章
ミステリアスで緊迫した音色で始まり、切れのある演奏でした。
全体が不気味な上にさらにリズミカルという独特な音色になります。
ソリストとオーケストラの緊迫した掛け合いがあり、パーカッション(打楽器)に迫力がありました。
ハープの音色が目立つ場面があり、ソリストとオーケストラの緊迫した掛け合いに華を添えていました。
緊迫した音色に華やかさも加わって終わります。


三楽章
やや静かでミステリアスなオーケストラの演奏で始まります。
ソリストも入り、全体で静かにミステリアスに演奏します。
ソリストが切れのある小刻みな演奏を続け、オーケストラがそれを引き取って一気に爆発するような演奏になります。

一旦全体がゆったりとミステリアスに演奏してからソリストの音色がかなり派手になります。
そこから全体が力強い演奏になりました。
ソリストがかなりの高音で伸びのある演奏をし、ミステリアスさの中に少し安らぎも感じる音色になって終わりました。



3.ドニゼッティ:歌劇「アンナ・ボレーナ」より”私の生まれたあのお城”
 ヴェルディ:歌劇「椿姫」より”ああ そはかの人か 花から花へ”



(ソリストの柴田優香さん。)




(柴田優香さんはエリザベト音楽大学の4年生で、音域はソプラノです。)


一曲目:歌劇「アンナ・ボレーナ」より”私の生まれたあのお城”
ゆったりした少しもの悲しいオーケストラで始まります。
ソリストも入りとても力強く歌い、オーケストラがそれを引き取ってとても力強く演奏します。
ソリストが歌ってオーケストラが引き取る演奏が何回か続きました。

やがて初めてソリストとオーケストラが両方とも凄い迫力で演奏する場面になります。
そこから一転して両方とも寂しそうな演奏になります。

ソリストが超高音で力強く歌っていて、それをスパッと切った時、空気が震えたように感じました。
唐突な静寂も音楽の一部のように聴こえ、「余韻」がとても上手いなと思いました。


二曲目:歌劇「椿姫」より”ああ そはかの人か 花から花へ”
オーケストラが「バババ、バーン!」と物凄く力強く演奏して始まります。
ソリストも入り、高音で力強かったです。
オーケストラはところどころに「合いの手」のような音色を入れてソリストを支えていました。
ソリストのゆったりとした歌をオーケストラが支え、やがてゆったりとした歌い方にやや陽気さも入って行きます。

ソリストの雰囲気が変わってややスピードを上げ、オーケストラはミステリアスな演奏で支えます。
ソリストが力強い歌声になり、明るい雰囲気もあり、最後は全体が陽気に楽しそうな音色で終わりました。



4.トマジ:サクソフォン協奏曲



(ソリストの進正裕さん。昭和音楽大学大学院の2年生で、私はこの人の演奏が聴きたくて足を運びました。)

一楽章
ミステリアスなオーケストラで始まります。
ソリストも入り、ゆったりとミステリアスに演奏し音の伸びが良かったです。
ソリストとオーケストラで伸びやかに、そしてミステリアスに演奏します。

ソリストの演奏がスピードを上げ、オーケストラも続きます。
そこからオーケストラだけでとても雄大に、ミステリアスに演奏します。

ソリストがミステリアスな演奏をし、そこからスピードと迫力を増し、オーケストラも力強く支えていました。
ミステリアスな上に力強いので、音色に重厚感があります。

ところどころ、パーカッションの「バーン!」という音色が良く、席から姿は見えませんでしたがシンバルかなと思いました。
ティンパニ(大型のドラムのような楽器)の作る、音色の「底」の部分を支える音も良いと思いました。

一楽章を聴いている時点で、ソリストが物凄く上手いと思いました。
ずっとミステリアスな音色ですが、ミステリアスさを保ちながらゆったりしたり大迫力になったりスピードを上げたりと、様々な変化を上手く付けていました。
ソリストの音色が大迫力になり、オーケストラもそれを引き取って大迫力な演奏をします。

ソリストが、パーカッションが静かな音で支えるだけのほぼソロ演奏になる場面があり、響きがとてもミステリアスでした。
今度はオーケストラが大迫力に演奏し、ソリストも入り、小刻みに演奏します。
管楽器は息を使って演奏するので、息を止めたり吐いたりを高速で行う小刻み演奏は大変だと思います。
ソリストが迫力を増してからピタッと止まり、オーケストラがそれを引き取って大迫力に演奏する演奏が何度もあったのも印象的でした。


二楽章
管楽器の少しひょうきんな響きの速い演奏で始まり、ソリストも入りこちらも速い演奏でした。
全体で速い演奏をして行きます。

ソリストの演奏にコミカルさが出るようになります。
やはり速い演奏で、オーケストラも速い演奏で支えていました。
そこからソリストの演奏がゆったりと伸びやかになります。

ソリストがどんどん音を下げて行き、下がりきったところでオーケストラが引き取って大迫力に演奏します。
息の合ったコンビネーションだと思いました。
それぞれの音のリズムは全く違いますが、「連続した音楽」という印象を強く持つ良い演奏でした。

オーケストラが静かな演奏になり、その中でハープが目立ちます。
ハープの音はゆったりとしたさざ波のような印象があり、たまに目立つととても心地良く感じます。

全体で凄く盛り上がる演奏をし、途中からオーケストラだけで盛り上がる演奏を続け、ミステリアスにも聴こえました。
再びソリストが入り、コミカルで速く、ミステリアスな演奏をしました。
この曲には終始ミステリアスな雰囲気があります。

全体が物凄い盛り上がりになります。
ゆったりとしていますが大迫力の音色で、最後も物凄い盛り上がりで終わりました。




(進正裕さん演奏が終わって客席に礼をしている場面。)




(進正裕さん一度退場してから拍手に応えて再登場し、オーケストラも立ち上がって全員で拍手に応える場面。
これにて今年の「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ」が終演となりました。)


今年は最終演奏者の後、拍手に応えて演奏者全員で再登場する場面がなかったです。
また昨年と同じく演奏者全員による、観客が帰る時のお見送りもなく、何とか演奏会が開催されましたが新型コロナウイルスの影響は依然として大きいと思いました。
早くこういった大規模なコンサートが気兼ねなく開催できるようになってほしいなと思いました。


今回の演奏会、4人とも上手かったですが中でも最後に登場した進正裕さんはかつて何度か演奏を聴いたこともあり印象的でした。
エリザベト音楽大学の2018年度卒業演奏会にも出演されていて、卒業後は大学院進学で神奈川県に行かれ、私は約2年ぶりに生演奏を聴きました。
やはり上手く、2年の間にさらに上手さが増したように感じ、別の地域に旅立たれた人がこうして演奏会という舞台に舞い戻ってきて、それを聴きに行けるのは素敵なことだと思いました。
そしてどの演奏者さんも今回の広島交響楽団との共演が大きな経験になり、今後更に活躍するのがとても楽しみです



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プロフィール

川本伶美(オーボエ)

広島県出身。3歳よりヴァイオリン、7歳よりピアノ、14歳よりオーボエを始める。
広島県瀬戸内高等学校を卒業後、東京藝術大学に入学。現在1年在学中。
これまでにオーボエを板谷由起子、和久井仁の各氏に、現在、吉井瑞穂氏に師事。
室内楽を須川展也氏に師事。
第41回ハイスクール・ミュージック・コンサート最優秀賞受賞。
第36回中国ユース音楽コンクール管楽器部門最優秀賞受賞にて記念演奏会に出演。
第29回日本クラシック音楽コンクール全国大会オーボエ部門第3位(第1位、2位なし)。



若林麗(ヴァイオリン)

広島市出身。3歳よりヴァイオリンを始め、桐朋学園子供のための音楽教室(広島教室)に入室。
第67回、第69回全日本学生音楽コンクール大阪大会小学校の部、中学校の部入選。
第25回日本クラシック音楽コンクール全国大会ヴァイオリン部門中学校の部第4位。
第9回べーテン音楽コンクール全国大会弦楽器部門中学校の部第1位。
第11回べーテン音楽コンクール全国大会弦楽器部門高校の部第1位。
第1回桐朋ジュニアコンクール in 広島にてグランプリ受賞。
第33回広島サマーコンサートにてヤマハ賞受賞。
いしかわミュージックアカデミー、霧島国際音楽祭、京都フランスアカデミー、ニース夏期国際音楽アカデミーなど国内外にてマスタークラス受講。
2020年3月、桐朋女子高等学校音楽科卒業、成績優秀者による卒業演奏会に出演。
現在、桐朋学園大学音楽学部1年在学中。
これまで村上直子、浦川宜也、篠崎功子の各氏に師事。



柴田優香(ソプラノ)

山口県岩国市出身。エリザベト音楽大学演奏学科声楽専攻に特別奨学生として入学。現在4年在学中。
来年度には5年プログラム生(早期卒業制度)として大学院卒業予定。
エリザベト音楽大学ザビエル賞受賞。
岩国優秀文化賞受賞。
第25回日本クラシック音楽コンクール優秀賞受賞にて、全国大会出場。
第70回全日本学生音楽コンクール入選。
第59・60・63・64回山口県学生音楽コンクール金賞受賞。
第12回東京国際声楽コンクール大学生部門第5位。
広島シティーオペラ主催オペラ『ジャンニ・スキッキ』ラウレッタ役でオペラデビュー。
花キューピットオープンにて国歌独唱。
これまでに岡村美瑳、赤川優子、枝松瞳、折河宏治の各氏に師事。



進正裕(サクソフォン)

1996年島根県浜田市生まれ。
3歳からピアノを、12歳からサクソフォンを始める。
エリザベト音楽大学演奏学科管弦打楽器サクソフォン専攻を卒業。
同大学卒業演奏会に出演。
第21回大阪国際音楽コンクール木管楽器Age-U部門において第1位を受賞、第30回日本クラシック音楽コンクールサクソフォン部門大学の部において第2位(最高位)を受賞、第1回東京国際管楽器コンクール木管ソロ部門において第3位を受賞。
その他、国内のコンクールにおいて多数入賞を果たす。
第16回サクソフォン新人演奏会、第35回ヤマハ管楽器新人演奏会に出演。
サクソフォンを有村純親、大森義基、正田桂悟、室内楽を赤坂達三、小山弦太郎、宗貞啓二、即興演奏を平野公崇の各氏に師事。
現在、昭和音楽大学大学院修士課程に在学中。
(株)クライスエムイー『まなぶ音ライン』講師。



末廣誠(指揮)

桐朋学園大学修了。
1989年、N.リムスキー=コルサコフのオペラ『サルタン王の物語』の日本初演において訳詞及び指揮を担当し、高い評価を受ける。
以降オペラを数多く手がけ、豊富なレパートリーを誇っている。
バレエでも多くの作品に参加しており、舞台作品における技量は各界から厚い信頼を得ている。
1990年ハンガリーにおいてサボルチ交響楽団を指揮。
同年、ワイマールで開催された国際セミナーでイェーナー・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、チューリンガー・アルゲマイネ紙に”真にプロフェッショナルな指揮者”と称賛される。
1991年、第4回フィッテルベルク国際コンクールにおいて第1位ゴールドメダルとオーケストラ特別賞を併せて受賞する。
翌年よりポーランド国立放送交響楽団をはじめとする各地のオーケストラに招かれ、クラコフ放送交響楽団の首席客演指揮者に就任。
また、国立シレジア歌劇場においてヨーロッパにおけるオペラデビューを果たし、定期客演指揮者として多くの作品を指揮している。
帰国後は群馬交響楽団を経て1995年から1999年まで札幌交響楽団指揮者を務め、多岐にわたる活動を続けている。
2016年には、ウィーン楽友協会合唱団のモーツァルト「レクイエム」を指揮し大好評を得た。
高いレベルの演奏を引き出す手腕には定評があり、今後の活躍が期待されている。
また、執筆活動のほか演奏会の司会や企画にもその才能は遺憾なく発揮されている。
レッスンの友社よりエッセー「マエストロ・ペンのお茶にしませんか?」を刊行。

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木村紗綾さんオンラインヴァイオリンリサイタル ~クラシックで満ち満ちて~

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(写真は木村紗綾さんトーク中の場面)

2月26日、広島県広島市のゲバントホールで行われた「木村紗綾さんオンラインヴァイオリンリサイタル ~クラシックで満ち満ちて~」を聴きに行きました。
ゲバントホールは原爆ドームの近くにあり、訪れるのは今回が初めてです。
新型コロナウイルスの影響もあり会場のお客さんはチケットの申し込み先着30人限定で、席もバルコニー席だけでした。
オンラインでリアルタイム配信もされ、コロナ渦での新たな形のコンサートを模索していて、幸運にも先着30人に間に合った私はバルコニー席から演奏を楽しませてもらいました





(開演を待つステージ。バルコニー席からはこのように見えていました。)




(ゲバントホールはこういった造りになっていて、今回のリサイタルは上階のバルコニー席にのみ、30名限定でお客さんを入れていました。)
写真左下では配信スタッフさんが動画配信をしていました。)



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【コンサートに想いを寄せて】

新型コロナウイルスの影響により、今までの様に同じ空間で生で演奏を聴いていただけることは少なくなりましたが、配信という形でも演奏会ができますことをとても嬉しく思います。
このような配信コンサートという新しい試みにより、遠くにお住まいの方にも演奏を聴いていただけることを、大きな出会いのチャンスと思い、心を込めて演奏いたします。
今回の演奏会は「クラシックに満ち満ちて」と題しまして、ブラームスのヴァイオリンソナタやラヴェルのツィガーヌなど、たっぷりとヴァイオリンとピアノの音色に浸っていただける曲を選びました。
少しでも皆様の人生のワンシーンに繋がる演奏となれば幸いです。
2021年 新春 木村紗綾
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(木村紗綾さん青いドレスで調弦をする場面。コンサート前半は青いドレスで登場しました。ピアニストは重野友歌さん。)


1.タルティーニ:ヴァイオリンソナタ ト短調「悪魔のトリル」

-----パンフレットの解説-----
イタリア バロック音楽の作曲家、そしてヴァイオリニストであったタルティーニ。
この曲が『悪魔のトリル』と呼ばれるようになったのはこのような逸話が残されている。
作曲に行き詰っていた21歳のタルティーニはある夜、夢をみた。
それはタルティーニが悪魔と契約を交わし、魂を引き渡すことで悪魔がヴァイオリンで美しいソナタを弾くというもの。
そのソナタはこの世のものとは思えないほど、鮮やかなトリルがたくさん散りばめられた曲であった。
感動のうちに目が覚めたタルティーニは、急いで夢の中で悪魔が弾いていたメロディを楽譜に残した。
それがこの「悪魔のトリル」である。
「トリル」というのは2つの音を交互に速く鳴らす奏法で、冒頭から終盤のカデンツァまで華麗なトリル、そして超絶技巧が詰まっている。
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ゆったりとした物悲しい音色で始まります。
そこからリズミカルで明るい音色に変わりました。
さらに今度は情熱的で熱を帯びた音色になり、ピアノと合わさって奏でられた音色は情熱のタップダンスのようでした。
終盤のソロヴァイオリンでの演奏も情熱的で熱い音色になり、曲の中でどんどん音色が変わって行ったのが印象的でした。

1曲目の後のトークで、15歳でチェコに渡って初めてのレッスンがこの曲だったと言っていました。
そういった思い出の曲は、曲の音色とともに当時のことが思い出されたりもするのではと思います。
また今回はフランス料理のフルコースを1.5回分くらいのクラシック盛り沢山のプログラムにしたとのことです。
2曲目はその箸休めとして選んだとのことで、音色から癒やしを感じてと言っていました。



2.シューマン :「3つのロマンス」より第2番 作品94-2

-----パンフレットの解説-----
ドイツ ロマン派を代表するシューマンは、交響曲から歌曲、ピアノ曲など幅広い分野の作品をたくさん残している。
1849年にオーボエとピアノのために書かれたこの曲は、ロマン派全体を見渡しても最も重要なオーボエ作品と評されるほど、オーボエ奏者にとって重要なレパートリーで、人気があるためクラリネット、フルートやヴァイオリンにも編曲され演奏機会も多い。
またこの曲はシューマンが妻クララへのクリスマスプレゼントとして作曲したと伝えられている。
3つのロマンスの中でもこの第2曲は長調の美しい旋律が特徴的だ。
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まさにゆったりとした癒やしの音色でした。
聴いていて気持ちが安らぎます。
そして癒やしから情熱の音色になった場面が印象的で、ハッとするような変化が良かったです



3.ブラームス:ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調作品108

-----パンフレットの解説-----
バッハ、ベートーヴェンに並び「ドイツ三大B」の1人でも知られるブラームスは、1886年から1888年にかけて、夏の休暇をスイスのトゥーン湖畔の避暑地で過ごし創作活動に専心した。
1888年に完成したこの曲を含む晩年の傑作の多くは、この土地で作曲された。
第3番は前2作とは異なり、4楽章で構成されている。
悲壮感漂う旋律の中にもうちに秘めた深い力強さを併せ持つ表情豊かな第1楽章、G線で奏でられる、美しくどこか懐かしさを感じさせる第2楽章、孤独、悲しさ、もろさが描かれた第3楽章、そして自らを鼓舞するかのような情熱的でドラマティックな第4楽章で締めくくる。
友人の死などにより「死」というものを紛れもない現実の出来事として見つめなければならなくなったブラームスの人生観が映し出された作品である。
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演奏前のトークで、今回のリサイタルではプロコフィエフのヴァイオリンソナタ第2番が一番弾きたい曲で、では前半の最後をどの曲にしようかを考えた時、この曲が思い浮かんだと言っていました。
1楽章は悲しみ、2楽章は懐かしみ、3楽章はこれからどうしたらいいのか、4楽章は情熱の気持ちが表現されている曲と言っていました。

1楽章は悲しそうな音色からヴァイオリンとピアノでショッキングな雰囲気になった場面が印的的でした。
2楽章はしっとり、ゆったりな音色で、まさに何かを懐かしんでいるような音色で安らぎがありました。
3楽章は演奏のテンポが上がり、「焦った気持ち」のようなものを感じました。
ピッチカートの時が印象的で、力強くて音に「底」から沸き出てくるような迫力があり、ピアノも弾むように軽やかに弾いていて両方合わさって良い音色になっていました
4楽章は激しい音色になり、迫力が凄かったです。
気持ちが爆発しているような響きで、友人の死に際し、そこからまた前に進もうとする時、そういった気持ちになることはあると思います。





(木村紗綾さん赤いドレスで調弦中の場面。後半は赤いドレスに衣装替えしました。)


4.プロコフィエフ:ヴァイオリンソナタ第2番 ニ長調 作品94bis

-----パンフレットの解説-----
今年生誕130周年を迎えたロシア人作曲家プロコフィエフ。
この作品は元々フルートソナタとして1993年に書かれ、初演は大成功をおさめた。
その初演を聴いたロシア人ヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフの勧めにより、戦時下のモスクワでヴァイオリンソナタへと書き換えられた。
初演は、オイストラフ自身によって行われ、友人でもあったヴァイオリニストのヨーゼフ・シゲティに献呈された。
まるで夢の中にいるかのような神秘的とも思える旋律から始まる第1楽章、ヴァイオリンとピアノが激しく対話する第2楽章、半音階を多く用いた叙情的で透明感溢れる第3楽章、そして劇的で力強く行進曲のような第4楽章と様々なキャラクターが見えるソナタだが、全楽章を通して美しいメロディで溢れた作品である。
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1楽章は「明るいけだるさ」のような音色に感じ、時に速い音色、激しい音色にもなりました。
2楽章はヴァイオリンもピアノも激しくなり、「掛け合い」が派手な音色で凄く良かったです。
3楽章はゆったりとした安らぐ音色になりました。
そこから情熱的な音色にもなり、ピアノの支え方も良くて良い雰囲気になっていました。
4楽章は賑やかになり、派手な音色で躍動感があってかなり良かったです





(木村紗綾さんトーク中の場面。)



5.ラヴェル:ツィガーヌ

-----パンフレットの解説-----
近代フランスを代表する作曲家ラヴェル。
彼の作品にはスペイン音楽やジャズなど、様々な地域の音楽語法が積極的に取り入れられている。
ツィガーヌとは、フランス語で「ジプシー」を意味する。
この作品はハンガリーの民族的な舞曲である「チャルダッシュ」というジプシーの舞曲の様式に基づいて書かれており、チャルダッシュは、テンポの遅い前半部分、情熱的で速い後半部分の2つの要素で構成されている。
ツィガーヌでは冒頭4分ほどを無伴奏ヴァイオリンが、フラジオレットやピチカートなど技巧を駆使し、エキゾチックに哀愁高く奏でる。
後半はピアノと共に、クライマックスに向かって超絶技巧を披露しながら劇的で華麗に締めくくられ、演奏会のフィナーレにふさわしい作品となっている。
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ヴァイオリンのソロ演奏で始まり、不穏で妖しそうな響きがありました。
やがてピアノも入り、入り方がキラキラと輝く宝石のような響きでした。
ヴァイオリンの音色も華やかで宝石のような音色になり、両方合わせて物凄く華麗な音色になりました。
まさにフィナーレに相応しい音色だと思いました


アンコールはタンゴの有名曲「ポル・ウナ・カベーサ(カルロス・ガルデル作曲)」が演奏されました。
クラシックとは違うジャンルの曲を選んでいて、フィギュアスケートの浅田真央さんがこの曲で演技しているのを見て興味を持ったとのことです。
演奏会でも何度か聴いたことがあり、最初の穏やかな音色からタンゴらしい情熱的な雰囲気になる場面が特に良かったです



木村紗綾さんの演奏を生で聴くのは昨年2月の「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラシリーズ 第54回広島」以来、一年ぶりでした。
元々音に「切れ味の鋭さ」という特徴があるように思っていて、久しぶりに生演奏を聴いて改めてそれを思いました。
新型コロナウイルスの影響でまだまだ演奏会が少ない中で開催してくれて嬉しかったです。
新たにチェコ ピルゼンフィルハーモニー管弦楽団アシスタント・コンサートミストレスにも就任され、今後益々活躍していくのがとても楽しみです



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プロフィール

ヴァイオリン 木村紗綾

広島市出身。3歳よりヴァイオリンを始める。
15歳で単身チェコに渡り、プラハ音楽院に学ぶ。
第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第38回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール第1位、第2回ヴィッラフランカ・ディ・ヴェローナ国際コンクール第1位、併せて聴衆賞を受賞するなど国内外のコンクールで入賞。
ドヴォルジャーク音楽祭にて指揮者、ヤロスラフ・クルチェク氏とバッハのヴァイオリン協奏曲を共演。
2016年よりチェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミーに在籍し、プラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭など国内外の演奏会、ツアーに多数出演し、2018年修了。
2017年イタリアで開催されたインターハーモニー音楽祭ではコンサートミストレスを務める。
2011年度ヒロシマ平和創造基金ヒロシマスカラシップ奨学生、2016年より大植英次氏プロデュース威風堂々クラシック in Hiroshimaにてコンサートミストレスを務め、チャリティコンサートなどソリストとしても多数共演。
第54回文化庁委託事業新進演奏家育成プロジェクト オーケストラシリーズにて広島交響楽団と共演。
現在チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者として活動中。
2020年秋よりチェコ ピルゼンフィルハーモニー管弦楽団アシスタント・コンサートミストレスに歴代最年少で就任。



ピアノ 重野友歌

広島県に生まれる。母親の手ほどきによりピアノを始め中学校卒業後に渡英。
メニューイン音楽院を経て英国王立音楽大学に全額特待生で入学。
首席で卒業した後ドイツに移り、ハンブルグ国立音楽演劇大学で大学院修士と国家演奏家資格をどちらも最優等で取得。
2018年よりアメリカ、マイアミ大学フロスト音楽学校にてケヴィン・ケナーの下、博士課程に在籍。現在は日本に帰国し休学中。
リカルド・ヴィネス国際コンクール日本人初優勝をはじめ、国内外でのコンクールで数々の賞を受賞。
ソロのみならず、妹 文歌とのピアノデュオ・カントゥス、国内外のアーティストとのアンサンブルにも力を注いでいる。
全日本ピアノ指導者協会演奏会員。

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気象庁の区切りでの冬(12~2月)が終わり、3月になって春が始まりました
その3月が早くも終わり4月になって新年度を迎え、月日の流れの早さに驚きます。

春の始まりの頃は、まだ冬を意識していました。
しかし3月上旬、中旬と進むにつれて、段々と年末年始の頃のような猛烈な寒さにはもうならないのだろうなと実感するようになりました。
季節が春になってから少し遅れ、気持ちも春になったのだと思います
3月下旬になると完全に後ろの冬より前の春に意識が向くようになりました。
4月を迎えた今は約1ヶ月後に迫った二十四節気の「立夏」、そして初夏の時期を意識するようになり、人の気持ちもどんどん移り変わって行くのを感じます。

3月は着るものや寝る時の布団の厚さも目まぐるしく変わりました。
毎日天気予報を見て、朝冷え込むようなら布団を厚くし、暖かいようなら薄くしました。
服は最高気温をよく見るようにし、毎日コートは着ていましたがインナーを調節しました。
そのインナーも真冬の厚さになる日はほとんどなくて、ここでも冬が終わったことを日々感じました。

そして昨日4月2日はこの春初めてコートなしで通勤の行き帰りを歩きました。
今日もコートなしで一日過ごし、段々と身体もコートなしで過ごすことに慣れてくると思います。
日々力強くなって行く春に上手く対応しながら過ごして行きたいです

「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ ~扉子と空白の時~」三上延

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今回ご紹介するのは「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅱ ~扉子と空白の時~」(著:三上延)です。

-----内容-----
ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。
それは、この世に存在していないはずの本ーー横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。
どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。
老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。
その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。
深まる疑念と迷宮入りする事件。
ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始めるーー。

-----感想-----
北鎌倉にある古書堂の店主篠川栞子が古書にまつわる事件を解決していく「ビブリア古書堂の事件手帖」の、栞子と五浦大輔が結婚して娘の扉子が登場するようになって2作目の作品です。
読書をしたい思いはありながらもなかなか読めない中で少しずつ読み進めて行きました。

プロローグはブックカフェの臨時店番をする戸山圭とそこに現れる篠川扉子の場面で始まります。
二人は友達で、高校生なのが分かりました。
圭も扉子と同じで両親が古い本を扱う仕事をしているので幼い頃から本に囲まれて育ち本が好きですが、本の詳しさについてはとても控え目な考えを持っています。
「自分が本に詳しいとか、人より知識があるなどと思ったことはない。世の中には何事も上には上がいるものだからだ。」とあり、驕りがなくて良い考えだと思いました。
圭から見た扉子の本好き度合いの描写が「扉子は本が好きーーいや、好きというレベルではない。息をするように読んでいる。」とあり表現が面白かったです

扉子の前には2012年と2021年の「マイブック(新潮文庫が発行する日記帳のようなもの)」が置いてあります。
マイブックの中身は大輔が栞子とともに遭遇した事件について書いた「ビブリア古書堂の事件手帖」で、扉子は祖母の篠川智恵子と会うことになっていました。
智恵子は2012年と2021年に起きた横溝正史の「雪割草」事件について確認したいことがあると言い、2021年が過去のことになっていて、シリーズ1作目の「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」から作中でもかなり時間が経ったのを感じました。
扉子は智恵子が来るまでなら良いだろうと思い事件手帖を読み始め、そこから本格的に今回の物語が始まります。


「第一話 横溝正史『雪割草』Ⅰ」
栞子と大輔が結婚する前の時代に戻るので語り手は大輔になり、2012年の4月とあり二人は既に結婚しています。
栞子の妹の文香(あやか)はこの春高校を卒業し八王子にある大学の近くで一人暮らしを始めたとありました。
文香は栞子のことを「奴は息を吸うように本を読む」と言っていて、ここにもこの言葉が出てきて面白かったです。
そして活発な性格でムードメーカーの文香がビブリア古書堂から居なくなってしまったのは寂しく思いました。

井浦清美という人がトラブルの相談をしにビブリア古書堂にやって来ることになっていて、栞子はその相談内容に不安を感じています。
現れた清美は盗まれた本を取り返してほしいと依頼し、その本は「雪割草」という幻の作品です。
「この世に存在していないはずの本が盗まれ、それを探してほしい」という奇妙な依頼です。
気になったので調べてみると、横溝正史の『雪割草』は実際に近年発見されて刊行されたばかりの作品で、2012年当時はまだ発見されていませんでした。
その出来事を上手く作品に盛り込む構成が良いなと思いました

話の中心になるのは元華族に連なる「上島家」で、三姉妹の長女である上島秋世は「雪割草」を持っていました。
次女は井浦初子、三女は上島春子で、初子と春子は双子です。
また清美は初子の娘で、かつては結婚していましたが現在は離婚し息子の創太を引き取っています。
秋世が亡くなり、遺産となった「雪割草」が何者かによって盗まれてしまいます。
初子と春子は犬猿の仲で、お互いのことを雪割草を盗んだ犯人だと主張しています。

栞子は清美の依頼に対し、「調査費用はいらないから、雪割草が実在していて取り返せたら読ませてほしい」と言って引き受けます。
本が大好きな栞子は幻の作品が実在していそうなことに興味を持ちました。
また、栞子と大輔は今回の件には「元華族の一族」「複雑な家族関係」「いがみあう双子の姉妹」など、横溝正史の代表作でもある金田一探偵シリーズを連想させる事柄が妙に多いことが気になり、本当に全て偶然なのかと思います。

後日栞子と大輔が上島家の邸宅に行くと、仕事を抜けて来た清美と家政婦の小柳が出迎えます。
小柳に話を聞くと雪割草を見たことがあるのが分かり、美しい装釘の自装本(出版社からは刊行されておらず、個人で装釘した本)とのことでした。
また会話の中で道行(みちゆき)という言葉が登場し、和服用のコートだと初めて知りました。

やがて初子が現れ、日本の探偵小説は嫌いと言われて栞子が怒る場面があり、普段は物静かで控えめでもやはり本のことになると熱いなと思いました。
春子の息子の乙彦(おとひこ)は横溝正史の大ファンで、「雪割草」を盗む動機があることも分かります。
さらに春子も登場し、帰る間際の初子と口論になります。

栞子と大輔が上島家の邸宅を後にした時、今度は乙彦が現れます。
乙彦、清美ともに「雪割草」を盗んだ犯人は自身の母親だと言っているのが印象的で、親のことを信用出来ないのは寂しいものだと思いました。


「第二話 横溝正史『獄門島』」
2021年10月の話で、今回この作品を読んだ2021年3~4月より未来になりました。
もぐら堂という古書店の2階のブックカフェで大輔と扉子が過ごしているところから物語が始まります。
大輔は扉子の付き添いで来ていて、扉子は1階で取り置きしてもらっていた古書を買うつもりでした。
しかしアルバイトの店員は置き場所を知らず、店長は宅買いに出掛けていたため、2階のブックカフェで時間を潰しています。
古書の売買が昔より難しくなり、飲食スペースを併設する古書店が増えたとあり、時代の流れを感じました。

栞子はロンドンに出張して母親の経営する古書店を手伝いに行っています。
扉子の通う小学校のクラス担任から電話がかかってきて、扉子が読書感想文に横溝正史の「獄門島」を選んだことを問題視します。
殺人事件が起き怖い表現もあるので、子供に読ませるのはどうかという見方をする人もいるようです。
「決して横溝正史が悪いわけではありません」と言いながらも電話をかけてきたことを大輔は不審に思っていて、私もこういったやり方は嫌だなと思います。
最終的に担任は「本当に「獄門島」でいいのか、扉子さんに聞いてみて下さい」と言って電話を切り、あくまで自身が強制して読ませるのを止めたのではなく、親が止めたという形を作りたいのかなと思いました。
大輔は扉子の意思を尊重して「獄門島」を読むのを止めない方針で、私は意思を尊重するのは良いことだと思いました。

大輔がイギリスに居る栞子とパソコンでビデオ通話をすると、栞子は扉子の買う獄門島の値段が3000円と聞いてどの版なのか検討が付かず気にしていました。
物凄く本に詳しい栞子にも分からないのが興味深かったです。

取り置きしてもらっていたはずの「獄門島」がなくなってしまう事件が起きます。
扉子は栞子を思わせる鋭さで本が消えた謎を追って行きますが、大輔は出来れば扉子に古い本の事件と関わらないで欲しいと思っていて、「時として本を求める人の心には悪意があるのだ。」とあったのが印象的でした。
あまりに希少価値の高い古書は時として人の心を狂わせ、手に入れるためなら手段を選ばない狂気じみた人にしてしまうことがあります。

もぐら堂の店主は戸山吉信と言いプロローグに登場した戸山圭の父親でもあります。
吉信が帰ってきてそこから意外な展開を経てやっと「獄門島」を見つけ出すことができます。
事件は解決しましたが大輔はこの一件で、扉子が本の持ち主達の秘められた物語を読み解く喜びに目覚めていないかと心配します。
扉子の祖母にして栞子の母、智恵子は特に本の持ち主達の秘められた物語を暴くのを好むようなところがあり、篠川家の血統の宿命のようにも思います。

また、本を読むばかりで誰も友達のいなかった扉子はこの一件で戸山圭と友達になることが出来ました。
大輔が「本一冊で壊れる関係もあれば、本一冊で生まれる関係もある。」と語っていて、印象的な言葉でした。


「第三話 横溝正史『雪割草』Ⅱ」
2021年11月の物語で、第一話で解決出来なかった謎に9年経ってもう一度挑むことになります。
「横溝正史の幻の新聞連載小説 発表から77年を経て初の単行本化!」という帯の付いた「雪割草」の単行本が登場し、既に発売された描写がありました。
近代小説の研究者によって掲載紙が突き止められ本文も全て発見されました。
栞子達のように古書店で働く人にとって横溝正史の幻の作品が発見されるのは物凄い大ニュースなのではと思います。

井浦清美からメールで連絡が来て、初子が亡くなったので遺言に従いビブリア古書堂に蔵書を買い取ってほしいと依頼されます。
第一話での因縁もあり、初子はビブリア古書堂をよく思っていないはずなのになぜそんな遺言を残したのか、何か裏があると大輔は警戒します。
栞子は9年前に事件を解決出来なかった悔しさを晴らすために決意新たに臨み、大輔もまたそんな栞子を支えようと決意します。

栞子と大輔が蔵書を買い取るために整理をしていると、横溝正史の全く同じ文章の「雪割草」の直筆原稿が7枚も出てきます。
ヒトリ書房の井上太一郎に鑑定してもらうと7枚は全て偽物と分かり、栞子も気付いていました。
そして本物の直筆原稿を見ながら模写した可能性があり、本物がどこにあるのか探していくことになります。
いよいよ9年前の事件とともに全ての謎を解く時が来ます。


久しぶりにビブリア古書堂シリーズの作品を読み、やはりこのシリーズは面白いと思いました
プロローグとエピローグでは扉子がもう高校生になっていたのも印象的で、一気に時間が流れたのを感じました。
智恵子が扉子の洞察力を気に入った様子だったのも気になり、またいずれ扉子の前に現れると言っていたので、もしかすると智恵子と接する中で扉子も古書を巡る事件を解決していく人になることが予感されました。
高校生、あるいは大人になった扉子をはっきりと主役にした作品、栞子と大輔が活躍する作品、どちらも読みたい思いが強くなり、続編を楽しみにしています



ビブリア古書堂シリーズの感想記事
「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」
「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」
「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~」
「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」
「ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~」
「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」
「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」
「ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~」


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「響け!ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」武田綾乃

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今回ご紹介するのは「響け!ユーフォニアム2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏」(著:武田綾乃)です。

-----内容-----
新しく赴任した滝昇の指導のもと、めきめきと力をつけ関西大会への出場を決めた北宇治高校吹奏楽部。
全国大会を目指し、日々練習に励む部員のもとへ突然、部を辞めた希美が復帰したいとやってくる。
しかし副部長のあすかは頑なにその申し出を拒む。
昨年、大量の部員が辞めた際にいったい何があったのか……。
”吹部”ならではの悩みと喜びをリアリティたっぷりに描く傑作吹部小説シリーズ第2弾。

-----感想-----
この作品は「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」の続編となります。
プロローグは中学校時代の鎧塚みぞれと傘木希美が話す場面で始まります。
みぞれ達の通っていた南中学校は京都でそこそこ有名な吹奏楽部の強豪校で、関西大会には通算6回出場していますが全国大会にはまだ行ったことがないです。
希美が部長となり臨んだ最後の大会は全国大会に行くために猛練習しましたがまさかの京都府大会銀賞で、関西大会にも行けずに終わってしまいます。

全日本吹奏楽コンクールの京都府大会を終えた8月8日から物語が始まります。
京都府立北宇治高校は関西大会に出場出来ることになりました。

ユーフォニアムの特徴は深い響きを持つ柔らかな音色とありました。
私は以前聴いた演奏会で「ユーフォニアムは人間の声に最も近い音域の楽器」とユーフォニアム奏者が言っていたのが思い浮かびました。

北宇治高校はかつて吹奏楽の強豪校で、関西大会の常連で全国大会にも出場したことがあります。
しかし当時の顧問が別の学校に移ってから一気に弱体化し、ここ10年は大した結果を残せていませんでした。
それが今年、音楽教師の滝昇(のぼる)がやって来て吹奏楽部の顧問に就任し、優しい雰囲気ながらも口の悪いスパルタ指導で反発を受けましたが力を付け、見事に関西大会出場権を得たのでした。

関西大会で立ちはだかることになる「三強」の名前が3年生でユーフォニアム奏者の副部長田中あすかから語られます。
部長は3年生でバリトンサックス奏者の小笠原晴香ですが、あすかは変人ではあるものの天才でありカリスマ的な存在感があります。
三強は全て大阪の高校で、明静(みょうじょう)工科高校、大阪東照高校、秀塔(しゅうとう)大学附属高校とありました。
大阪東照高校は野球部の甲子園でもよく演奏しているとあったのでモデルは大阪桐蔭高校ではと思いました。
三校とも関西大会どころか全国大会でも金賞を取るレベルの超強豪校とあり、関西大会から全国大会に行けるのは二十三校中三校だけなので、三強のうちどれかを倒す必要があり北宇治高校が全国に行くのは非現実的と言わざるを得ないとあすかは語ります。
するとコントラバス奏者の1年生川島緑輝(サファイア。いわゆるキラキラネームで本人は嫌がって緑と呼ばせている)が明静工科高校の顧問が引退し、今年は弱くなっているかも知れないと語り三強に割って入るならそこしかないという雰囲気になります。

1年生でトランペット奏者の麗奈が同じく1年生でユーフォニアム奏者、そして主人公の久美子に一緒に帰らないかと誘ってきて同じ電車に乗ります。
麗奈は花火大会に一緒に行かないかと言い久美子と仲良くなりたそうでした。
久美子は部活にも一緒に行こうと言いますが、麗奈が毎日6時に学校に着いていると聞いて驚愕します。
麗奈は1年生にしてトランペットのソロ演奏を任される実力者で、やはり上手い人は人一倍努力しているのだと思いました。
そして麗奈よりさらに先に練習を始めている先輩が一人いて、2年生でオーボエ奏者の鎧塚みぞれだと語られます。

麗奈と別れると同じ電車に乗っていた秀一が話しかけてきます。
久美子は秀一を見ると息苦しくなるとあり、前作で秀一のお祭りへの誘いを断ってから気まずくなったのを引きずっているようでした。
二人で宇治橋を渡る場面で高欄という言葉が登場し、初めて聞く言葉だったので調べてみたら欄干のことと分かりました。
北宇治高校が全国大会に行けるかどうかの話になり、秀一が「ま、でも滝先生はめちゃくちゃ優秀やし。もし関西で負けても、それは俺ら部員側の問題やと思う」と言います。
人のせいにしない姿勢が素晴らしいと思いました。
吹奏楽における指導者の役割は大変重要で、指導者が別の学校に移って弱体化した学校はたくさんあり、反対に弱小校が新たな指導者を迎えて強豪校になることもあるようです。

久美子が麗奈のことを「そういえば麗奈は滝のことが好きなのだ。もちろん、恋愛的な意味で。」と語っていて、この言い回しが高校生らしくて良いなと思いました。
久美子と麗奈二人で音楽室に行く時、音楽室からオーボエの音色が聴こえてきて、「オーボエ特有のしっとりとした音色」とありました。
クラシックを聴くようになってしばらくはオーボエの音色は蛇使いの音色のようなイメージを持っていましたが、モーツァルトのオーボエ協奏曲を聴いてから私もそのイメージになってきました。
また久美子と麗奈は音楽室に向かいながら聞こえてきた音色に「何か物足りない」という印象を持ちました。
オーボエを演奏していたのは鎧塚みぞれで、みぞれは会話に独特な神秘さがあります。
オーボエは構造上その場でぱっと音を変えるのが無理なので、オーケストラではオーボエを基準に音を合わせるとあり、実際の演奏会でのチューニング(音合わせ)で一番最初にオーボエが音を出し、それから他の楽器も音を出して行くのが思い浮かびました。

滝から8月16日~18日に夏合宿を行うと伝えられます。
滝は今の北宇治高校では関西大会の壁は越えられないと言い、夏合宿の間に府大会で出来なかったことを出来るようになろうと言います。
また夏休みの間は金管楽器が専門の滝に加え、木管楽器とパーカッション(打楽器)のために外部の指導者を呼ぶことになります。
まず橋本真博という北宇治高校OBのプロのパーカッション奏者がやって来ます。
橋本は陽気な性格をしていて一日でパーカッションの部員たちの人気者になっていました。

「低音は音楽の土台であり骨組み」という言葉が登場し、まさにそうだと思いました。
演奏会でも低音が「底」から支えて厚みのある音になるのを何度も聴きました。

「胡乱(うろん)げな視線」という言葉も登場し、どんな視線なのか気になりました。
調べてみると「胡乱げ」は正体が怪しく疑わしいという意味とのことで、この作品はたまに普段使わない言葉が登場するのが興味深いです。

ある日、2年生で久美子と同じユーフォニアム奏者の中川夏紀が昨年吹奏楽部を退部した傘木希美を連れて来ます。
希美は副部長のあすかに吹奏楽部に戻りたいと言いますが、あすかは冷たく断ります。
あすかはどうしても戻りたいなら顧問の滝に許可してもらえと言いますが、希美はあすかの許可が欲しいと言い、二人の間には何かがあるようでした。

久美子が緑のことを「他人の心情をおもんぱかることに長けている彼女は、まるで好きなようにやっていますといわんばかりの顔をして、さりげなく他人をフォローする」と評していました。
天真爛漫に振る舞う緑の本当の姿をよく分かっていて、他の人のことをよく見ているのは久美子の良いところだと思います。

みぞれ、久美子、麗奈が朝早い音楽室で練習をしていると、その次に2年生のトランペット奏者、吉川優子がやって来たことがありました。
優子は麗奈が1年生にしてソロ演奏者に選ばれた時、3年生の中世古香織を推して麗奈と敵対していました。
みぞれが物凄くストレートに優子は2人と仲が悪いのかと聞き、久美子はあまりにストレート過ぎて緊迫した気持ちになります。

秀一が久美子に宇治川花火大会は誰と行くのかと聞く場面があり、やはり久美子のことが気になっているようでした。
花火大会の当日、久美子は練習が終わって帰る前に忘れ物を取りに行った時、みぞれが階段でうずくまっているのに遭遇します。
その様子は尋常ではありませんでした。
さらに階段の上からフルートの音色が聴こえてきて、久美子は北宇治高校のフルートソリスト(ソロ演奏者)より上手いと感じます。
演奏していたのは希美でした。
いったいこの二人には何があるのかとても気になりました。

久美子、麗奈、緑、チューバ奏者の加藤葉月の1年生四人で出掛けたプールで、久美子は一人で歩いている時に希美に遭遇します。
そして思い切ってなぜ吹奏楽部を辞めたのか聞きます。
なぜ希美が顧問の滝よりあすかの許可を得ることにこだわっているのかが分かりました。
また、希美は昨年まで平気で練習なんてせんでええやんと言っていた子が今になってケロッとした顔で関西大会に出ていることに凄く怒っていて、この怒りは分かる気がしました。
滝が顧問になって吹奏楽部の雰囲気が変わりはしたものの、その前の雰囲気に絶望して辞めた希美にはやり切れないものがあると思います。
麗奈は部活を辞めるのは逃げるということだと言っていましたが、久美子は希美が辞めたのはその時の彼女にとってベストの選択をしたのであり、逃げたわけではないと見ています。
私は思いやりがあって良い見方だと思います。
久美子はなぜ希美が復帰してはいけないのかを調べ、必ず復帰させると言います。

ついに合宿が始まります。
木管楽器の指導をする新山聡美という優しく穏やかな雰囲気のフルート奏者が新たにやって来て、滝の彼女ではという話もあり、麗奈が動揺していて面白かったです。
しかし指導を受けた緑は、新山は決して怒りませんが指導の中身は滝並に凄いと言っていました。
読んでいると滝と橋本は20代後半の印象があり、新山は二人の後輩とのことでもう何年か若いようです。

みぞれは久美子に、音楽の芸術性の部分は審査員の好みになってしまうので技術が重要だと言います。
みぞれと話した後、久美子は夜遅いのに3年生の部長や各パートのリーダー達が集まって行うリーダー会議が行われているのを目撃します。
そして自身の部屋への帰り道、久美子の足取りは軽くなっていて、その心境は先輩達から良い影響を受けたのが分かり良いなと思いました

各パートでの練習から全体での合わせになった時、橋本がみぞれの演奏はロボットが演奏しているようだと言います。
橋本は北宇治高校は技術では強豪校に引けを取らないようになったが表現力が足りていないと言い、みぞれの考えと逆のことを言っているのが印象的でした。

久美子はあすかとみぞれが話し合っているのを盗み聞きしてしまいます。
その様子からみぞれは希美を怖がっているようでした。
そしてついに、なぜ希美が吹奏楽部に戻るのをあすかが許可しないかが明らかになります。

新山が差し入れてくれた花火をみんなでする場面があります。
久美子が花火の光を「まるで夜を追い払っているみたい。」と形容していて良い表現だと思いました。
辺り一面に広がる夜の闇の中にあって、花火が光っている間だけはそこに明るさがあります。

久美子は今度は夜の自販機の前で優子に遭遇していて、主人公だけあって色々な人に遭遇するなと思いました。
優子が意外にも麗奈の実力を認める場面があり、憎まれ口を叩いていてもきちんと見る人なのだと思いました。

夏合宿が終わりを迎えます。
新山のみぞれへの言葉が印象的で、次のように言っていました。
「楽器を吹くのはね、義務じゃないの。あなたの技術はとても素晴らしいけれど、なぜだか聞いていると苦しくなる。もっとね、楽しんでいいのよ。オーボエを好きになってあげて。そうすればきっと、ソロだって上手くいくと思うわ」
やはり楽しく吹くのと義務のように気乗りせずに吹くのでは音色に差が出るだろうなと思います。

麗奈が久美子にコンクールでの審査員の評価について、「もし圧倒的な上手さがあれば、コンクールで評価されへんなんてことはありえへんと思う。」と言います。
みぞれの「芸術性の部分は審査員の好みになる」と違い、圧倒的に上手ければ有無を言わさず評価されると見ています。
同じ「コンクール」についての考え方でも人によって全然違うなと思いました。

いよいよ関西大会の演奏の順番が発表されます。
滝が部員達に「思う存分我々の演奏を見せつけてやりましょう」と言っていたのが夏合宿の自信が窺えて良いなと思いました。

しかし関西大会直前、みぞれが大きく取り乱す事件が起きます。
その中で「吐息がうっそりと漏れる。」という表現があり、「ぼんやりと」という意味のようで、これも珍しい表現だと思いました。
そして事件を経て常に塞ぎ込んでいるようだったみぞれの心がついに解き放たれる時が来ます。
夏紀の「綺麗な音やね。あの子、こんなふうに吹けたんや」という言葉が関西大会での善戦を予感させました。
関西大会でこの年の戦いが終わるのか、それとも全国大会に行けるのか、最後の盛り上がり方が凄く良かったです


今作では京都府大会を終えてから関西大会まで、短い時間の中で凄く濃密な物語になっていたと思います。
続編も出ていて、今作を通して物語の中心に居た鎧塚みぞれと傘木希美はかなりの実力者でもあり次作以降も活躍が予感されました。
北宇治高校吹奏楽部の演奏力もさらに上がり、関西大会の強豪達相手に引けを取らないまでになりました。
素敵な実力者達に囲まれた主人公久美子がユーフォニアム奏者としてどうなっていくのか、秀一との関係はどうなるのか、続編もぜひ読んでみたいと思います


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「推し、燃ゆ」宇佐見りん

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今回ご紹介するのは「推し、燃ゆ」(著:宇佐見りん)です。

-----内容-----
推しが、炎上した。
デビュー作『かか』で文藝賞&三島由紀夫賞、第二作となる本作で芥川賞を受賞。
21歳、驚異の才能、現る。
2021年1月第164回芥川賞受賞作。

-----感想-----
今年1月の芥川賞発表の時期に書店でこの小説を見かけ、第164回芥川賞受賞を知りました。
宇佐見りんさんのことは初めて知り、21歳という年齢の若さがまず印象的でした。
私に大きな影響を与えた綿矢りささんの「蹴りたい背中」という作品が2004年1月に史上最年少19歳で第130回芥川賞を受賞した時のことを思い出しました。
21歳での受賞は19歳綿矢りささん、20歳金原ひとみさん(綿矢りささんと同時受賞)に次ぐ史上3番目の若さです

もう一つ印象的だったのが「推し」という言葉でした。
推しとはアイドルグループのファンもしくはオタクの人が、特定の人物を特に応援する時に「この人を推す」という意味で使われる言葉です。
2010年代の初頭、アイドルグループAKB48が全盛時代を迎えて国民の間に広く知られた頃から「推し」という言葉をよく聞くようになったと思います。
その「推し」という言葉がタイトルに入り、アイドルを推す人を主人公にした作品が芥川賞を受賞したところに時代の流れを感じました。
史上3番目の若さでの受賞とともに興味を引き読んでみようと思いました

語り手は上野真幸(まさき)というアイドルを推す高校二年生の山下あかりです。
冒頭、「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」という言葉で物語が始まります。
「燃える」とはネットでの「炎上」のことで、アイドルや企業などの不祥事の際に非難が殺到すると炎上状態になります。

あかりと同じくアイドルを推す友達の成美との会話で「チェキ」という言葉が登場し、アイドルと一緒に撮る写真のことをチェキと言います。
これもAKB48によって広まった言葉だと思います。
しかし言葉を聞いても一般層には分からない人も多いと思われ、文脈から写真のことだと分かるようになっていました。

成美はメンズ地下アイドルにはまっていて「あかりも来なって、はまるよ、認知もらえたり裏で繫がれたり、もしかしたら付き合えるかもしれないんだよ」と誘っていました。
「裏で繫がれる」というアイドルとの関係には嫌悪感を持ちました。
現実世界では2018年末、新潟県を中心に活動するアイドルグループの特定メンバーと裏で繫がりのあるオタク達が、そのメンバーとは別のメンバーを待ち伏せして襲撃する事件も起き、全国ニュースで連日報道される大事件に発展したことがあります。
そのこともあり「繫がり」には非常にダーティな、犯罪を誘発しかねないというイメージがあります。
作者の宇佐見りんさんも事件のことを知っているのかも知れないなと思いました。
私は特定のファンもしくはオタクの人と裏で繫がっているような人は、他のファンやオタクの人全てを裏切っているのでアイドルとは呼べないと思います。

冒頭の季節は夏です。
あかりが「寝起きするだけでシーツに皺が寄るように、生きているだけで皺寄せがくる。」と語り、これは良い表現だと思いました。
誰かと喋ったり、お風呂に入ったり、爪を切ったりといった身の回りの些細なことがあかりにとっては負担が重いようでした。
病院の受診で二つ診断名が付いたとあり、あかりは精神面で何かの病気を患っているようです。

あかりが4歳の時、12歳だった推しがピーターパンの舞台でピーターパン役をしているのを観た時に思ったことは印象的でした。
重さを背負って大人になることを、つらいと思ってもいいのだと、誰かに強く言われている気がする。
このことからあかりは大人になっていくのを辛いと思っていることが分かりました。
「重さ」とは身の回りのことを自身でしながら生きて行くことだと思います。

あかりはラジオ、テレビなどでの推しのあらゆる発言を書いて20冊を超えるファイルに綴じて部屋に置いてあり、かなりのオタクだと思いました。
私はファンとオタクの違いを「ファンはライトに応援」「オタクはディープに応援」と解釈しています。

あかりの「アイドルとの関わり方」への考えは印象的でした。
アイドルとのかかわり方は十人十色で、推しのすべての行動を信奉する人もいれば、善し悪しがわからないとファンとは言えないと批評する人もいる。推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人、そういった感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人、逆に作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人、お金を使うことに集中する人、ファン同士の交流が好きな人。
あかりはアイドルの応援には様々なスタンスがあると考えていて、それ自体はそのとおりだと思います。
そして私の場合はあかりが挙げた例のほとんどはそれで良いのではと思いますが、唯一「推しのすべての行動を信奉」には「宗教を狂信的に崇拝」と似た怖さを感じます。
あかり自身のスタンスは「作品も人もまるごと解釈し続けること」とありました。
またあかりが偉いのは「自身のスタンスこそが優れていて他は劣等」とは考えていないことだと思います。
私が実際に見た例では、自身のスタンスと周りのスタンスを比べて「周りは劣等」のようにマウンティングしたり、「そのスタンスはなってないから私のスタンスに従え」のように仕切ろうとするタイプの人もいました。
そのように考えるようになったらお終いだと私は思います。

あかりは上野真幸の「ガチ勢」として他の人からも有名とのことです。
またあかりは推しがファンを殴ったことを事実と認め、さらにまだ本人も事務所もまともな記者会見での説明をしていない状態で「これからも推し続けることだけが決まっていた。」と語っていました。
この心境がコアなオタクの人らしいなという気がしました。
一般層の人は不祥事に際してはまず不信の目で見るようになり、記者会見での説明が行われるならそれを見て判断し、まともに説明しないともなればずっとイメージが悪いままになります。
そこがコアなオタクの人と一般層の人で大きく違うと思いました。

あかりは高校では保健室の常連とあり、登校はするものの教室で勉学をするのは難しいようでした。
学内での場面の情景描写で、「廊下窓から差し込む日差しが一段と濃くなり、西日に変わっていく。頬の肉が灼かれる。」とありました。
これは芥川賞系の「純文学小説」らしい良い表現だと思いました
最後の一言があるのが大きく、短い文章の中で厚みのある表現になっていると思います。

上野真幸は「まざま座」という男女混合アイドルグループに所属していて、2021年度で29歳になります。
他には斎藤明仁、立花みふゆ、岡野美奈、瀬名徹(とおる)というメンバーがいます。
このグループでは人気投票があり、CDを一枚買うごとに投票券が一枚付いていて好きなメンバーに投票出来ます。
結果次第で次のアルバムの歌割りや立ち位置が決まるとあり、これは明らかにAKB48など48グループの「選抜総選挙」をモデルにしているのではと思いました。

あかりは「未来永劫、あたしの推しは上野真幸だけだった。」と語っていて物凄い執着だと思いました。
推しのメンバーカラーが青色だからカーテンなど身の周りの物を徹底的に青く染め上げたとも語っていて、これも並々ならぬ入れ込みようだと思いました。
夏休みについては「推しを推すだけの夏休み」と語り、綿矢りささんの「蹴りたい背中」で主人公が夏休みを「どこまでも続く暇の砂漠」と表現したのと似たものを感じました。
今回は推しを推す楽しみがあるという点は違うもののどちらも高校のクラス内で孤立しているのは同じです。

「まざま座」のオフィシャルサイトで、予定していたライブに上野真幸を予定通り出演させると発表があった時、SNSは非難囂々(ごうごう)とありました。
これは責任を取らせずに活動だけしようとすれば実際にそうなると思います。

あかりは推しを推す資金を稼ぐために「定食なかっこ」というお店でアルバイトをしています。
そしてお客さんがたくさん来て忙しく動くのはかなり苦手なようで、上手く動けていない描写がありました。
印象的だったのが常連のお客さんから「ハイボールをちょっと濃いめに作ってくれない?」と頼まれた時で、そのお客さんは有料にならない範囲で多少濃いめにしてくれないか(おまけしてくれないか)という意味合いで言っていました。
しかしあかりは「普通だとこの値段、濃いめだとこの値段、大ジョッキだとこの値段」のように事務的な切り返しをし、お客さんは興醒めしたようでした。
例えば「仕方ないですね~」と愛憎良く応じ、実際のおまけの量はほんの少しにしたり、店長の指示を仰いでも良かったと思います。
ただしそういう立ち回りは苦手な人は本当に苦手だと思うので、この場面はあかりを可哀想に思いました。

あかりの漢数字の書き方への感性は面白かったです。
「一は一画、二は二画、三は三画で書けるのに、四は五画。逆に、五は四画だ。」とあり、今までこう考えたことはなかったので興味を引きました。

あかりの姉はひかりと言い、あかりが母親からちゃんと勉強をしろと叱られて「頑張ってるよ」と適当に返事をした時、頑張っているという言葉を使ったことにひかりが激怒する場面がありました。
適当な返事での「頑張っている」という言葉を本気で頑張っている人が聞くと頭にくるのだと思います。

上野真幸は投票のシステムを「このシステムはあまり良心的じゃない、ファンの子に投票してもらえるのは本当にありがたいけど無理はしないでほしい」とラジオでこぼしたりもしていて、これは良いと思いました。
アイドルがこの感性を忘れて「一枚でも良いから多くCDを買って投票してくれ」と、懐具合を考えずに催促するようになったら一般層からは白い目で見られることになるのではと思います。
あかりは前回1位だった推しが不祥事が原因で転落しないようにCDを50枚も買って投票していて、私はこの行為は不健全だと思いました。
記者会見でのまともな説明もせずに活動だけを再開した場合、一般層のみならずコアなオタク以外のファン層からも反発を受けるのは必至で、当然投票してくれる人の数も減り、そこから目を背けるわけには行かないのではと思います。
仮にあかりのようにコアなオタクの人が1人で大量に投票する戦法で順位を守ることが出来たとしても、その順位は実態とかけ離れたものになっていて信用もされないと思います。

夏休みが終わって新学期になると、あかりの体調が目に見えて悪くなります。
にきびが顔中から噴き出し、母親がそのにきびを汚いと言ったのは酷いなと思いました。
年頃の娘さんの、本人が一番気にしているであろうことをそのように言うとは、この母親は娘を愛していないのだなと思いました。
精神面の病気を患うあかりにとってこの母親の存在は不幸だと思います。

やがて冒頭の炎上事件から1年以上が経ちます。
アイドルグループ「まざま座」にも転機が訪れ、やはりそうなるだろうと思いました。
この頃になるとあかりの日常生活を送るのが困難な状態が一層酷くなっているように見えました。
あかりは「まざま座」の転機を見て決意を新たにしていて、「推すことはあたしの生きる手立てだった。業(ごう)だった。」とまで語っていて壮絶さを感じました。
最後は一体どうなってしまうのかと思いました。


あかりというオタクの「本人としては至極真面目に一生懸命推しているが、傍から見ると完全に狂気じみている」という状態が上手く描かれていました。
あかりがオタク活動について淡々と語っているのを読む時、その淡々とした雰囲気とは真逆の狂気を感じ、事件が起きるわけでもないのに独特の緊張感がありました。
本人が「推しのいない人生は余生だった。」と語っているように、精神面に病気を抱え普通の日常生活を送るのが難しいあかりにとって、推しを推すことだけが生きる希望なのだと思います。
それでも物語の最後、もしかしたら推しに頼らなくても生きていけるのではという予感がしたので、ぜひ推しを推す時のパワーを少しでも日常生活を送るほうに向けられるようになって行ってくれたらと思いました。


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東京オリンピックの医療ボランティアについて

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今年の夏に開催する方針で準備が進められている東京オリンピック。
新型コロナウイルスの影響が依然として収まらず、本当に開催出来るのかと疑問視する声も聞かれます。

私は看護師などによる「医療ボランティア」についての方針に愕然としました。
元々人間に対して医療対応をする人をタダで働かせるつもりなのかの問題があるのに加えて、やはり新型コロナウイルスの影響が色濃い中では人数も集まらず、苦戦しているようです。
感染の脅威が高い大都市東京に行って、同じく感染の脅威がある人対人の医療対応をしたい人は思うようにはいないものだと思います。
そんな中、オリンピックの組織委員会が日本看護協会に看護師約500人の確保を要請したことが先月末に明らかになっています。

問題が二つあり、一つは「看護師の確保を要請」という方針です。
ボランティアとは本来、「報酬は出せないですが、もしご協力頂ける方がいたらよろしくお願いします」という募集を見た人が、参加するかどうかを自身で決められるものを言います。
ところが組織委員会は約500人という人数を決めて日本看護協会に確保の要請を出しています。
そういうのは「ボランティア」ではなくて「強制招集」と呼ぶのではないか?と私は思います。
私は言葉だけボランティアにして実態は半ば強引に動員して働かせるようなやり方は良くないと思います。
新型コロナウイルスの対応で、政府や知事などが補償金をたくさん払いたくないばかりに使う「自粛を要請」という言葉に通じるものがあります。
そちらも、自粛とは本来自身の意思で自主的に営業を取りやめることを言うのに、政府や知事からの「要請」になっています。
ただし形の上ではあくまで「自粛」なので、自身達の意思で休業したということで補償金も全額は支払われない状況になっています。

もう一つの問題は、菅義偉首相の認識です。
組織委員会が日本看護協会に医療ボランティアの確保を要請したことについて、「看護協会の中で現在、休んでいる方もたくさんいると聞いている。可能だと考えている」という認識を示しました。
私はこれを聞いて、率直にズレているなと思いました。
表面の理論だけを言っている印象があり、菅義偉首相としては「日本看護協会の認定有資格者の中には休職している人もたくさん居る。よってその人達にボランティアをして貰えばオリンピックは大丈夫」という理論なのだと思います。
しかし休職するからには育児や介護、激務で体調を壊したなどの理由があるものです。
その層の人達を狙って、しかも無報酬のボランティアで動員しようとするのはあまりに酷くないかと思いました。
物には「言い方」があり、こんな言い方をすれば反発を招くのを本人も認識しておらず、周りにも教えてくれる人がいないのかなと思いました。
これでは支持を失うと思います。

東京オリンピックの医療対応については、「ボランティア」のように言葉で誤魔化すのはやめにしたほうが良いと思います。
完全無報酬に本人が乗り気で参加する場合を「医療ボランティア」、完全無報酬に本人は反対だが偉い人に言われて強引に動員される場合を「医療強制無報酬従事者」、適切な報酬が支払われる場合を「医療従事者」のように、はっきり区分けするのが誠実な対応ではと思います。
汚いやり方の部分を全て「ボランティア」という綺麗に聞こえる言葉で誤魔化すようなオリンピックにならないことを願います。

やよい軒 昔ながらの朝食

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写真は定食などの外食チェーン「やよい軒」の「納豆朝食(生卵付き)」です。
サイドメニューの「蒸し鶏と海藻のぽん酢和え」も付けました。

「納豆朝食(生卵付き)」はとてもシンプルかつヘルシーで、メニューはご飯、味噌汁、納豆、生卵、海苔、ミニ冷奴です。
私はこのメニューを見て、昔ながらの朝食を思い出しました

小学生の頃の朝食と言えば、実家は和食派なので卵かけご飯に納豆、海苔、ウインナーなどが中心でした。
特に卵かけご飯と納豆は毎日食べていました。
後に卵かけご飯は目玉焼きに変わりましたが、小学生時代に毎日卵かけご飯を食べていたのはよく覚えています。
この組み合わせは味も美味しくご飯が進み、さっぱりしているので朝食に向いていると思います。

最近、卵かけご飯に納豆の組み合わせが脂質控えめな上にたんぱく質をしっかり摂れることに気付きました。
何も意識せずに食べていた朝食が実は凄く優秀な朝食だったのだなと思いました
やよい軒の納豆朝食はそんな昔の日を思い出させてくれる素敵な朝食です。
また食べに行きたいと思います

※卵かけご飯と納豆の組み合わせは、卵白が納豆の美肌ビタミンの吸収を阻害するので、納豆が持つ美肌効果が薄れてしまうようです。
混ぜる場合は卵黄だけにするか、卵は卵、納豆は納豆で分けて食べたほうがが美肌には良いようです。

異例の梅雨入り

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5月15日、山口県が異例の早さで梅雨入りしました。
5月前半のうちに梅雨入りするのは今まで見たことがなかったので驚きました。
調べてみると平年に比べて20日も早い梅雨入りで、1951年の統計開始以降、54年の5月13日に次ぐ2番目に早い梅雨入りとのことです。

普段の年の5月と言えば過ごしやすい陽気が思い浮かびます。
有名な「茶摘」という歌の歌詞に「夏も近づく八十八夜」とあるように、5月は立春から数えて88日目の「八十八夜」があり、さらには二十四節気の「立夏」もあり、爽やかな初夏のイメージがあります。
晴れた日に日差しを浴びながら薄着でウォーキングするとやや汗ばんだりしながらも気持ちが爽やかになります

それが今年は5月前半という異例の早さで梅雨入りしてしまい、爽やかな初夏の時期があまりなかったです。
一年の中でもかなり好きな時期なので少し寂しく思いました。
それでも梅雨の合間に晴れた日には5月らしい爽やかさを感じるので、貴重な晴れ間を楽しみたいと思います

近所の紫陽花の花は早すぎる梅雨入りについて行けなかったのか、まだそこまで色鮮やかには咲いていないです。
しかし6月が近付いてきたこともあり間もなくたくさん咲くようになると思います。
紫陽花の淡い色合いに心を和ませながら、梅雨の雨の中を真夏目指して進んで行きたいです

HiKaRi Library Concert Vol.27

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(写真左からピアノ田中香織さん、ヴァイオリンrioさん、エレクトーンrionさん)

6月5日、山口県周南市立徳山駅前図書館の2階広場で行われた、新感覚音楽ユニットHiKaRi(ヒカリ)のHiKaRi Library Concert Vol.27を聴きました。
HiKaRiのコンサートを聴くのは初めてで、ヴァイオリン、ピアノ、エレクトーンでの三重奏という珍しい編成となっており、これまでに聴いたコンサートでもこのトリオでの演奏は聴いたことがなかったです。
また今回、ヴァイオリンメンバーの山口紘子さんの活動休止に伴い、新たなヴァイオリニストとしてrioさんが加わりました。
rioさんは広島県広島市のエリザベト音楽大学在学時の2018年秋~2020年春に演奏会で何度も演奏を聴いたことがある浦川莉緒さんで、とても演奏の上手い人なので興味を持ちこれはぜひ足を運んでみようと思いました



1.ピアソラ:リベルタンゴ(3人で演奏)

1曲目から情熱の曲「リベルタンゴ」が来たのが印象的で、情熱的なコンサートになるのかなという予感がしました。
メロディはそれほど速くないのですが聴いていると内側から気持ちが盛り上がってきます



2.映画「魔女の宅急便」より:海の見える町(ピアノ、ヴァイオリンで演奏)



写真のように、rio(浦川莉緒)さんのヴァイオリン演奏はピッチカート(指でポロンポロンと弦を鳴らす演奏)で始まりました。
音の響きが良く、「海の見える町」冒頭のどこかもの悲しさのあるメロディへの良いアクセントになっていました。



3.ディズニー音楽:リトルマーメイドメドレー(ピアノ、エレクトーンで演奏)



雄大さ、ロマンチックさを感じる音色で、エレクトーンという様々な種類の音を出せる楽器の良さがかなり発揮されたように思いました
楽器の見た目は田中香織さんの弾く電子ピアノと似ていますが出てくる音は全く違っていて、それがピアノの光が弾けるような音色と合わさって豪華な音色になっていました。



4.アニメ「エヴァンゲリオン」より:残酷な天使のテーゼ(ヴァイオリン、エレクトーンで演奏)



かなり楽しそうに演奏しているのが印象的でした
この曲はヴァイオリン演奏に向いている気がします。
音が生き生きと弾んでいるように聴こえ、やはり楽しい音楽は良いなと思いました



5.一青窈(ひととよう):ハナミズキ(3人で演奏)



一青窈さんの有名曲で、この曲は音色に安心感や安らぎがあると思います。
ピアノもエレクトーンも良い演奏をして安らぎに明るさも感じられ、残酷な天使のテーゼで盛り上がった気持ちをゆったりと落ち着かせてくれた気がします。



6.Superfly:愛をこめて花束を(3人で演奏)

こちらもハナミズキと同じくバラード系の有名曲ですが、熱量の物凄い曲でもあります。
「愛をこめーてー はーなたばをー」のサビの部分の演奏がかなり生き生きとした明るさがあって良かったです



7.映画「ティファニーで朝食を」より:ムーン・リバー(ヴァイオリン、ピアノで演奏)



オードリー・ヘプバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」で歌われた曲で、とても安らぐ音色の曲です。
田中香織さんがトークで「この曲はヴァイオリンの良さが引き立つ」と言っていましたがまさにそのとおりで、ゆったりとした安らぎが良かったです。
またここまでのプログラムを見ると気持ちが盛り上がる曲の後には反対に安らぐ曲が入れてあり、上手く緩急がついていると思いました。



8.T-SQUARE:宝島(ピアノ、エレクトーンで演奏)





田中香織さんはこのコンサート全体でトークを担っていて、演奏もピアノ、エレクトーン、ヴァイオリンの珍しい編成の中で上手く全体の調和を取っていたと思います。

宝島は「エリザベト音楽大学 打楽器アンサンブル Trip! ~9th Concert~」で聴いたことがあり、好きな曲です。
聴いていると気持ちがワクワクしてきて笑みがこぼれたりもします



9.アニメ「呪術廻戦」より:廻廻奇譚(かいかいきたん)(ヴァイオリン、エレクトーンで演奏)



かなりロックな雰囲気の曲でスピードも速く、ハイテンションで駆け抜けるように演奏して行きました。
速い曲はやはり盛り上がりも良く、コンサートが終盤になっているのが意識されました。




rio(浦川莉緒)さん。これまでで一番近い距離で演奏を聴き、そしてこれまでで一番のびのび演奏している気がしました





rionさん。高校生時代からシンガーソングライターとして活躍してCDも出し、今年から音楽大学に進学したとのことでこれからのさらなる活躍が楽しみです



10.葉加瀬太郎:情熱大陸(3人で演奏)



最後の曲は情熱大陸でした。
演奏会でも聴いたことのある盛り上がる曲で、rio(浦川莉緒)さんが楽譜スタンドを後ろによけたのが印象的で、田中香織さんが「暴れるということでしょうか」と言っていました
観客も手拍子を送り、大きな盛り上がりの中で終演となりました


初めて聴いたHiKaRiのコンサート、良いコンサートだと思いました。
音がノリノリで楽しそうだったのが印象的で、楽しい音楽の良さを改めて感じました。
山口県周南市の徳山駅前図書館と協力して地域に根ざした活動をし、定期的にコンサートを開いていて27回も続いているのも素敵です。
偶数月にコンサートを開いているとのことで、次回の8月もぜひ聴きに行ってみたくなりました


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-----徳山ゆかりのフォトギャラリー -----
出光興産徳山事業所 「海賊と呼ばれた男」ゆかりの地
遠石八幡宮 整った綺麗な神社


-----徳山ゆかりの小説-----
「海賊とよばれた男 (上)」百田尚樹
「海賊とよばれた男 (下)」百田尚樹



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「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(主演:佐藤健)

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(緋村抜刀斎と雪代巴。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのは映画「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(主演:佐藤健)です。

-----内容&感想-----
人気漫画「るろうに剣心」(原作:和月伸宏)を映画化したシリーズの最終作です。
この作品は「るろうに剣心」の主人公緋村剣心(佐藤健さん)が幕末の動乱期に反徳川幕府勢力の長州藩(現在の山口県)で「人斬り抜刀斎(ばっとうさい)」となって京都に行き、幕府側の要人を次々と暗殺していた時代が舞台です。
その時代に抜刀斎は左頬に十字傷を負い、後にトレードマークになりますが、この作品ではなぜ十時傷が出来ることになったのかが描かれています。
「スターウォーズ」という有名映画でフォースに安定(平和)をもたらす者と予言されたアナキン・スカイウォーカーがなぜ暗黒面に堕ちてダース・ヴェイダーになったのかを描いたのと通じるものがあり、謎が明らかになる話は興味を引きます。

Beginningは始まりという意味で、シリーズ最終作にして「るろうに剣心」の物語の始まりでもあります。
そして最終作にして私が劇場で観る初めての作品となりました。
先日ネットでこの作品の特集を読み、十字傷誕生に大きく関わる重要登場人物の雪代巴(ゆきしろともえ)役の有村架純さんが素晴らしく似合っていて、これはぜひ観に行こうと思いました



(雪代巴。有村架純さんのこの雰囲気を見て一気に映画への興味が強まりました。)

雪代巴という悲劇的な役のイメージと有村架純さんが醸し出す雰囲気がピッタリだと思いました。
また今作は悲しきラブストーリーにもなっていて、今まで「るろうに剣心」を知らなかった人が観ても十分興味深く観られる内容だと思います。


1864年(元治元年)1月、幕末の動乱に揺れる京都を舞台に物語が始まります。
冒頭からいきなり抜刀斎の殺陣(たて)が凄まじかったです。
対馬藩の敵達を前に「新時代のため、あなた方には死んでもらう」と言ったかと思いきや、次の瞬間から物凄い速さのアクションが始まり次々と敵が倒されて行きました。

暗殺仕事の後、現代の歴史の教科書で「維新三傑(明治維新立役者の中でも特に優れた三人)」と称される長州藩の重要人物、桂小五郎(高橋一生さん)と話す場面になります。
その時に抜刀斎が「人斬り抜刀斎になって半年」と語っていました。
桂は最近幕府の力が増していて「壬生(みぶ)に現れた狼」が特に強いと語ります。
桂の他に高杉晋作(安藤政信さん)も登場していて、幕末に実在した重要人物が登場すると気持ちがワクワクします



(抜刀斎と話す桂小五郎)

抜刀斎による対馬藩大勢暗殺の惨劇の舞台を壬生の狼、新選組が検分しにやって来ます。
三番隊組長の斎藤一が「誰の仕業だ」と誰にともなく問うと、一番隊組長の沖田総司が「この太刀筋にこの人数、言うまでもなく人斬り抜刀斎でしょう」と返していて、表向きは秘密にされている抜刀斎の存在を既に新選組は知っていました。



(新選組三番隊組長の斎藤一(江口洋介さん))

抜刀斎が居酒屋で静かに酒を飲んでいると、同じ店に巴がやって来ます。
その時の巴の澄ました表情とゆったりとした所作がかなり良く、超然とした存在感を放っていました。
抜刀斎は酔っ払いに「酒をつげ」と絡まれていた巴を助けてあげます。

居酒屋からの帰り道、抜刀斎の前に忍び装束を着た男が現れ「抜刀斎だな?」と言い襲いかかってきます。
秘密のはずの抜刀斎の存在はどこからか漏れ、刺客に狙われるようになっていました。
抜刀斎は男を斬り殺しますが、その時にお礼を言おうとして後を追いかけてきた巴が大量の返り血を浴びます。
「惨劇の場では血の雨が降ると言いますが、あなたは本当に血の雨を降らすのですね」と静かに淡々と言っているのが印象的でした。
巴は血の雨の雰囲気に当てられ倒れてしまい、抜刀斎は長州藩士がアジトにしている宿に連れて帰って介抱します。
翌朝抜刀斎は巴に「みなが安心して暮らせる新時代のために人を斬っている。武器を持っている敵が対象で、市井(しせい)の人を斬っているわけではない」と語りますが、ならば私が刀を持てば斬るのかと反論されます。

巴が一緒に祭りを見に行ってくれないかと言い二人で見に行きます。
その時に巴が「平和のための戦いなど本当にあるのか」と問い、これも印象的な言葉だと思いました。

また今作は悲劇を描いた作品でもあり、明かりが全体的に薄暗いかもしくは暗くなっています。
抜刀斎も巴も口数が少なく淡々と話すタイプなので、照明の暗さはこの作品がどんな作品なのかを表すとともに二人の雰囲気にもよく合っていました。



(人斬りとして暗躍する人斬り抜刀斎。佐藤健さんはかなりのはまり役だと思います

やがて「池田屋事件」が起きます。
史実において維新獅子達が倒幕のための密会を開いているところを新選組が襲撃して壊滅させた有名事件です。
飯塚という桂小五郎の側近から池田屋襲撃の知らせを受けた抜刀斎は現場に急行しますが、その途中で逃げた維新獅子を追撃していた一番隊組長の沖田総司と遭遇して戦いになります。
アクションが凄まじく、殺陣の凄さは「るろうに剣心」映画シリーズの大きな特徴だと思います。



(激闘を繰り広げる抜刀斎と新選組一番隊組長の沖田総司(村上虹郎さん))

巴が寝ている抜刀斎に毛布を掛けようとしたシーンは良かったです。
常に澄ました表情で他の人からは「愛想がない」と言われている巴が毛布を掛ける時少し微笑んだように見えました。
しかし直後、気配に気付いた抜刀斎が瞬く間に刀を取り刃を巴の首に突き付けます。



(抜刀斎に敵の襲撃と思われて斬られそうになる雪代巴)

斬られそうになり、巴に初めて動揺が走り恐怖に引きつった声が出ますが、それ以上に抜刀斎も信じられないものを見るような驚愕の表情で自身の手元を見ていました。
一体自身は何をしているのか、とんでもないことをしてしまうところだったと表情が物語っていてかなり良い演技だと思いました
抜刀斎は「市井の人間は斬らないと言っていたのにこの有様だ。(このままでは殺してしまうかも知れないから)出て行ってくれ」と言いますが、巴は恐怖しながらも抜刀斎に近寄り、「もうしばらくおそばに居させて頂きます。今のあなたには、狂気を収める鞘が必要です」と言います。



(雪代巴を斬りそうになって悔やむ抜刀斎と、恐怖しながらもその場に留まる巴)

このシーンが凄く良くて、怖いという感情は表情に出て、この人のそばに居たいという感情は座ったままジリジリと間合いを詰める態度に出て、この人のそばに居たい感情が何とか勝ったのが上手く表されていました。
佐藤健さんと有村架純さん、両者揃って高い演技力が発揮された今作最大の名シーンだと思います

池田屋事件以降、新選組の勢いが増し、長州藩士がアジトにしている宿にも藩士潜伏の情報を聞きつけたようで捜査をしにやって来ます。
間一髪のところで抜刀斎は巴を連れて逃げ、守ってあげていました。



(雪代巴を守る抜刀斎。佐藤健さんの醸し出す雰囲気と刀の構えが凄く良いと思います

徳川幕府との戦いが激化し、長州藩は劣勢に立たされていたため、抜刀斎と巴は桂から京都の外れにある農村でしばらく2人で夫婦に扮して暮らすように言われます。
桂は巴に「形だけで良い」と言いますが、巴の方は「そんなことを言わなくて良いのに」といった感じの無表情で佇んでいました。
しかし抜刀斎は「出来れば形だけでなく共に暮らそう」と言い、すると巴は微笑んで「はい」と言っていて、それぞれがお互いのことを想っているのがよく分かりました。

農村での暮らしでは巴が再び寝ている抜刀斎に毛布を掛けるシーンがあり、今度は起きずに眠っていました。
抜刀斎が巴に気を許しているのがここでも分かりました。
ある晩、巴が鏡を見ながら涙を流す場面があり、なぜ泣いていたのか最後に明らかになりますが、原作を知っていると表情だけでも自身の境遇と抜刀斎への想いの板挟みで泣いているのだろうな、とすぐに想像がつくくらい印象的な涙でした。



(農村で暮らす抜刀斎と雪代巴。その様子はまさに夫婦でした)

巴が抜刀斎に「あなたは近頃、よく笑うようになりましたね」と言う場面があり、その時の言葉の雰囲気がとても優しいと思いました。
最後の「なりましたね」の辺りで声量を少し弱めていて、それでいて同時に温かさが滲む言い方でかなり上手いと思いました

しかし温かい雰囲気は長くは続きませんでした。
闇乃武(やみのぶ)と呼ばれる徳川幕府側の暗殺諜報組織が動き出します。
長州藩士の中にかねてから存在が囁かれていた裏切り者がいて、闇乃武と結託して抜刀斎暗殺を企てていました。

巴の弟の縁(えにし)が農村にやって来て、巴はどうしてここが分かったのかと驚きます。
縁の話を聞くうちに巴は何が起こっているのかを悟ります。

その夜、巴は抜刀斎に実家は江戸にあるなどの自身の生い立ちを話します。
10代の頃に「るろうに剣心」の漫画を読んだ時は分かっていませんでしたが、人が突然生い立ちを話したりするのは何か心境の変化があった時の可能性が高く、映画が佳境を迎えているのがよく分かる場面でした。
また抜刀斎は巴に「新しい時代が来たら、人を斬るのではなく人を守れる道を探したい」と言います。
巴は抜刀斎の思いを聞いて「はい」と穏やかに言っていて、序盤では反論していたのが「はい」になったのが良いなと思いました。
先に眠った抜刀斎の横で巴は自身の短刀を手に取り、思い詰めた顔になります。
その最後、抜刀斎を見て悲しそうに微笑んだのが印象的で、出向いた先で生きて帰って来られそうにないのを悟っているのだと思いました。
巴は一人で自身と関わりのある闇乃武のアジトに向かいます。



(闇乃武のアジトに向かう雪代巴)

翌朝抜刀斎も長州藩の裏切り者の謀略によって動揺した心境でアジトに向かいますが、様々な罠を仕掛け地の利を得て戦う相手達を前にボロボロになります。
そんな中、巴が窮地の抜刀斎を助けに来ますが…
スローモーションで描かれた場面を見て「巴さん…」という心境になり目にじわりと涙が浮かびました。
結末を知っていても涙が浮かぶのは抜刀斎役の佐藤健さんと巴役の有村架純さんの作り出す世界観がそれだけ凄かったのだと思います。
闇乃武との戦いの後、「じゃあ、行ってくるよ、巴」という寂しそうな言葉とともに、抜刀斎は新しい時代のために再び徳川幕府との戦いに向かって行きます。


この作品を観て、紛れもないラブストーリーだと思いました。
元来どちらも愛想がなく、さらには意見も違っていて恋愛には程遠い関係だった二人が、段々と心を通わせていく様子はとても良かったです。
二人揃って口数が少ない分、表情や所作、間から伝わって来るものがたくさんあり、特に巴が抜刀斎の方を静かに見る回数がたくさんあったので、どういった心境なのかに思いを馳せながら見ました。
悲劇のラブストーリーになるのが分かってはいても、せっかく心を通わせたこの関係が終わらないでほしいと願わずにはいられないような良い雰囲気で、観に行って良かったと思う素敵な映画でした。

「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)

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(「ショコラの魔法」のポスター。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのは映画「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)です。

-----内容-----
美しき魔女ショコラティエ・哀川ショコラが作るのは、食べるだけで願いが叶う不思議なチョコレート。
ある日、哀川ショコラの元に聖蘭学園に通う女子高生が訪れる。
その女子高生は、「チョコを食べた者は、お代としてその者の“一番大切なもの”を奪われる」という危険な契約を聞かされるが、彼女は契約を受け入れ、チョコを食べる。
そしてその日から、聖蘭学園内に次々と謎の事件が起き…。
一方、学園の新聞部に所属する飯田直はそれらの事件を追う。
直は事件に隠された闇深い欲望と、チョコの謎に迫っていくが…。

-----感想-----
少女漫画紙「ちゃお」に不定期連載されている「ショコラの魔法」(著:みずの梨乃)の実写映画化で、原作は今年第66回小学館漫画賞を受賞しました。
映画に興味を持ったのは、女優の山口真帆さんが主演すると知ったのがきっかけでした。
山口真帆さんはかつて新潟県を本拠地とするアイドルグループで活動していましたが2年前に卒業し、「研音」という芸能事務所に移籍し女優に転身しました。
移籍の際の「研音」のコメントは「令和という時代に合った情報発信力を評価」というもので、これからの時代を担う存在として非凡さが高く評価されていました。
今回の映画初主演はそこから女優として歩んできた2年間の集大成であり、一つの重要な区切りになる気がしてぜひ観に行きたいと思いました



(哀川ショコラ役の山口真帆さん)

どこかの人里離れた森が映し出され、ミステリアスな雰囲気で始まりました。
やがて入口に「Chocolat noir」(ショコラノワール)と書かれた、一見すると洒落ていますが雰囲気はかなり不気味な洋館に辿り着きます。
洋館の主、哀川ショコラが登場していよいよ物語が幕を開けました。
食べれば願いが叶う代わりに1番大切なものを失う怖いチョコと、チョコを売る魔女が登場するホラー要素もあるダークファンタジー映画と知ってはいましたが、冒頭から想像以上に怖さを感じました。



(飯田直役の岡田結実さん)

聖蘭学園高等学校2年生で新聞部部長の飯田直は学園内に流れる噂「食べれば何でも願いが叶うチョコ」に興味を持ちます。
しかし「願いは叶うが高い代償を払うことになり、中にはチョコを食べてビルから飛び降りた子もいる」とありました。



(仁科愛利役の桜田ひよりさん)

2年生で美術部の仁科愛利が描いた絵が全国美術展で最優秀賞を受賞します。
後輩の1年生、水無月花音が「絶対に最優秀賞を取ってください。そのためなら何でもします」と言っている場面があり、もしやこの後輩が先輩に最優秀賞を取らせたいばかりにチョコを食べてしまうのかなと思いました。
しかし物語が進むともっと凄まじい展開が待っていました。



(水無月花音役の畑芽育さん)

沢村という学園一のチャラ男が行方不明になる事件が起きます。
直は事件の真相を突き止めようとしますが、西尾猛という同級生に「お前では無理だからやめておけ」といったことを言われて憤ります。
猛は嫌な奴に見えますが頭は良く、直が追いかけている事件の謎に直よりも早く辿り着くことが何度もあったとのことです。
直は沢村の消息を追うべく聞き込みをしていきますが、何者かに後を付けられていて足音が迫ってくる雰囲気が怖かったです。
そして直の元にショコラからの「招待状」が届きます。
どうやらショコラは何かの願いを強く持っている人のことが分かり、その人の元に招待状を送っているようでした。



(西尾猛役の中島健さん)

人里離れた森の中を直が歩く場面があり、霧も出ていて辺りが不気味でさらに音楽も怖かったです。
ショコラの住む洋館「ショコラノワール」での場面になる時は必ず怖い雰囲気になるのが印象的でした。
やがて直がショコラノワールに辿り着くと、ショコラが「ようこそ、ショコラノワールへ」と静かに淡々と言い出迎えます。
直が最近のわだかまりを口にすると、ショコラがチョコを出して願いを叶えてあげようとしますが、同時に「お代はいただくわ。私のチョコは高いわよ」と怖いことを言います。
チョコを見て考え込む直がどうするのか、とても気になりました。

ショコラ役の山口真帆さんは話す時の声がミステリアスだなと思いました。
そして話し方は穏やかそうに見えますが、実際には「冷たさ」が漂っていると思いました。
人間を人間として見ておらず、自身のモルモットとして見ているような冷たさを感じ、演技力が着実に上がっていると思いました。

猛が直に「お前なんかに事件が解けるわけねーよ」と言うのは、直の身を案じているように見えました。
するとやはり、直は聞き込みをするうちにある女性から凄まじい嫉妬による憎悪を向けられて窮地に立たされます。
その場面も怖く、超常現象的な怖さとはまた違う、嫉妬でそこまで狂気じみたことが出来るのかという人間の心の怖さを感じました。

全国美術展で最優秀賞を受賞した仁科愛利は進路も順風満帆でしたが、この人の笑い方を見て怖さを感じ、裏があるなと思いました。
愛利が美術室で遭遇した体験は恐ろしいものでした。
私はまず愛利ととある「絵」のシーンでギクッとなりました。
音楽もこちらに打ち込んでくるような響き方で、客席で思わず身じろぎしました。
さらに美術室はまるで脱出不可能な永遠に続く地獄のような様相になり、愛利が恐怖しているのと同じように見ているほうも恐怖しました。
日本を代表するホラー映画「リング」の貞子が井戸から出てきて対象を呪い殺す時を彷彿とさせるようなシーンもあり、まさかここまで怖い映画だとは思っていなくて衝撃的でした。

やがて愛利にどういったことがあったのかが明らかになります。
ここにも人間の嫉妬が絡んでいて、嫉妬に狂う人間は時として感情に任せて一線を越えてしまうのだなと思いました。

「お待ちなさい。あなたからはまだ代償を頂いていないわ。言ったはずよ、私のチョコは高いわよ」
最後はショコラもかなり怖くなり、怒っているのが分かりました。

「黒き闇に堕ちなさい」

「ショコラノワール」にはカカオ・テオブロマ(綱啓永さん)という得体の知れない人物も住んでいて、「しかし人間というのは欲深い生き物だな」と言っていました。
嫉妬のような感情に支配され、欲深く他人よりも自身が何かを手に入れようとすると周りが見えなくなり、気が付いた時には手遅れとなります。
そうならないように、自身が抱いている感情と向き合い、感情任せに動かずに気持ちの整理をする力を身に付けるのは重要だと思いました。





(最近の山口真帆さん)

山口真帆さんはこの2年間でアイドルの顔から女優の顔になってきた気がします。
高校や大学からプロ野球選手になった人などによく見られますが、人は新たな環境で顔の雰囲気が変わることがあります。
最近は充実感が伝わってくるような表情を目にすることがあり、良い雰囲気だと思います。

主役ではありますが役柄上頻繁に登場するわけではない山口真帆さんを、岡田結実さんが準主役の立ち位置で映画全編に渡って登場し強力に支えていました。
岡田結実さんは演技も良かったですが顔立ちの凛々しさが印象的で、女優として良い個性だと思いました。
後半は桜田ひよりさんもかなり存在感が出ていて、山口真帆さんと同じ「研音」所属で年齢は今年度19歳と若いですが女優歴は長く、演技も上手かったです。
こういった人達の支えによってショコラの淡々としたミステリアスさが際立ったと思います。



(新潟の先行上映で舞台挨拶時の山口真帆さん)

6月18日の全国公開に先立ち、16日に新潟県で先行上映が行われました。
大都市東京ではなく新潟で先行上映というのが、山口真帆さんの「義理」への熱い思いを感じて良いなと思いました。
新潟を本拠地とするアイドルを卒業後、女優として2年間歩んできた姿の集大成を、新潟の人達に真っ先にお見せしに来てくれたのではと思います。
この姿勢は非常に好感が持て、今後のさらなる飛躍を決定付けた気がしました
義理を大事にする人には周りの人達も義理を持って接してくれると思います。


山口真帆さん本人の努力も当然凄いですが、それとともに「研音」という芸能事務所も凄いと思いました。
移籍の直後、当時は全国放送のニュースやワイドショーで連日報道されていたので、ワイドショーなどに出演してさらに知名度を上げる手はいくらでもありました。
しかし「研音」はそれをしませんでした。
最初はモデルやグラビアのお仕事を中心に活動して、その間にじっくりと演技の稽古をしていったのだと思います。
その後少しずつドラマや舞台に出演するようになり、ついに映画初主演となりました。
地道な歩み方ですが「王道の歩み方」でもあり、私は女優としての活動を長期的に見れば大正解だったのではと思います。
今回の主演が今後への大きな糧になると思われ、これから先どんな活躍を見せて行くのかとても楽しみです


過去に書いた山口真帆さん作品の感想記事
「山口真帆 1st写真集 present」
「DIVER-特殊潜入班- 第二話」

雷雨

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今日の夕方は突然の雷雨になりました。
帰り道、家に着く少し前からポツリポツリと雨が降り始め、半袖の腕に当たった雨粒がやけに大きく感じ、梅雨のしとしと降る雨とは違う荒れた降り方になるのが予感されました。

幸い傘は差さずに帰宅できましたが、間もなく大雨になりました。
物凄く強く打ち付ける雨で、窓への打ち付け方が半端ではなかったです。
横から叩き付けるような降り方でそのスピードも凄かったです。
ウオンと唸りを上げるような叩き付け方で、叩き付けた雨のしぶきでまるで煙が立ち込めたようになっていました。
遠くの景色が見えないどころか近くの景色も見えなくなり、少しの間窓辺に立って嵐の様子を見ていました。

雷も鳴っていて、細長く青白い光のすぐ後、あまり遠くない距離に落ちる音が聞こえました。
この嵐の中を歩いていたらひとたまりもなかったと思います。

激しい雷雨を見て、もうそんな時期になったのかと思いました。
雷が鳴り、嵐のような大雨が短い時間に降るのは近年では「ゲリラ豪雨」とも呼ばれ、真夏ならではの天気です。
6月下旬の今、真夏はすぐそこまで来ていると感じ、ワクワクと「もう来てしまうのか」の焦りが入り混じった気持ちになり、一日一日を大事にしたいと思いました。

一番蝉が告げる夏

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6月25日、今年初めてセミの鳴き声を聞き、私にとって一番蝉となりました。
鳴いたのはニイニイゼミという控え目に鳴く蝉で、実家のある埼玉県でも現在住んでいる山口県でも、他の蝉より少し早く毎年6月下旬になると登場します。
元々控え目な「チー」というかすれ気味の鳴き声が一匹だとより小さく聞こえますが、間違いなくニイニイゼミの鳴き声でした。
その日は夕方にウォーキングをしていて、普段歩いているコースの折り返し地点まで来た時、木々の中から鳴き声が聞こえてきて思わず足を止めて聞き入りました。
今年もいよいよ夏本番になるなと思いました。

気象庁の区切りでは6~8月が夏と定められています
夏の始まりの6月に「夏」を強く意識する日としては一年で一番昼間の時間の長い「夏至」があり、中国地方では毎年6月上旬に広島市で行われる「とうかさん」というお祭りも夏を意識させてくれます
そしてもう一つが「一番蝉の鳴く日」です。
一匹鳴き始めれば次々と鳴く数が増え、やがて大合唱になり真夏となります。

6月29日のウォーキングではニイニイゼミに加えてヒグラシの鳴き声も聞きました。
明け方と夕方に「カナカナカナ」と甲高く寂しげに鳴くのが特徴の蝉で、普段の年より少し登場が早いなと思いました。
翌日の6月30日には「イリイリイリ」とけたたましく鳴くのが特徴のアブラゼミの鳴き声も聞こえてきて、今年はニイニイゼミ以外の蝉の登場が早いのかなと思いました。
一番蝉を聞いた6月25日から着々と蝉の鳴き声が増えていて、それだけ真夏に近付いているのを感じます。
本格的な大合唱になり梅雨も明けて真夏になるまでの間、日々蝉の鳴き声が増えて夏が色濃くなっていく様子を楽しみたいと思います

「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第54回広島」

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(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲演奏後、観客の拍手に応える木村紗綾さん(写真中央))

昨年の2月27日、広島県広島市のJMSアステールプラザ大ホールで行われた「新進演奏家育成プロジェクト オーケストラ・シリーズ 第54回広島」を聴きに行きました。
当時新型コロナウイルスの混乱で何もかもが自粛になる前に聴くことが出来た、最後から2番目のコンサートでした(最後はエリザベト音楽大学2019年度卒業演奏会)。
文化庁の事業として行われる「新進演奏家の発掘及び育成」を目的とした演奏会で、出演者はプロのオーケストラ(広島地区では広島交響楽団)と共演します。
この演奏会に何度も演奏を聴いたことのある広島出身のヴァイオリニスト木村紗綾さんが出演されるということで、ぜひ聴きに行こうと思い足を運びました




広島交響楽団コンサートミストレス(オーケストラのまとめ役)の蔵川瑠美さんによるチューニング(音合わせ)。
演奏会では演奏の前に必ず行われます。



1.イベール:アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲



(サクソフォンソリスト(ソロ演奏者)の井出崎優さん)

一楽章
アルトサクソフォンで演奏しました。
オーケストラのやや緊迫した速い演奏で始まり、サクソフォンは陽気な雰囲気で入って行きました。

陽気なサクソフォンの演奏をオーケストラがかなりの高音で支える場面があり、ヴァイオリンが目立っていました。
サクソフォンはずっとスピードが速く、そのスピードが作り出す世界観に聴き入っているうちにあっという間に時間が過ぎて行きました。




二楽章
サクソフォンのゆっくりとしたミステリアスな独奏で始まります。
オーケストラも始まり、こちらもゆっくりとした不気味な音色でした。

曲調が変わり、サクソフォンがスピードを上げて明るくなります。
そこからサクソフォンの独奏になりしばらく続きました。
最後は全体での明るい演奏になり、サクソフォンの物凄いスピードが印象的でした



2.チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 二長調 作品35



(ヴァイオリンソリストの木村紗綾さん)

一楽章
第一楽章を聴いたことはありましたが第三楽章までのフル演奏を聴くのはこの日が初めてでした。
冒頭、小さい音で始まったオーケストラの迫力がどんどん上がって行きました。
ソリストはややゆったりとした入り方で、雄大さを感じる音色が良かったです



ソリストとオーケストラの掛け合い、オーケストラの大迫力の演奏を経てソリストの独奏になります。
他に何の音もない中、少しミステリアスさのある独奏は印象的で、静寂の雰囲気を味方につけた印象もあり良い演奏だと思いました。
また一楽章最後のスピードがこれまでに聴いたことがないほど速いのも印象的で、同じ曲でも演奏する人によって解釈が全く違うのはクラシック曲の面白さだと思います。




(演奏の全景。楽器の演奏者にとって、ソリストで登場してオーケストラと一緒に協奏曲を演奏するのは一つの夢ではと思います

二楽章
管楽器のゆったりとした雄大な音色で始まりました。
ソリストはもの悲しげに始まります。
やがて全体がゆったりとした、そして綺麗な音色になりました。




(演奏ではタイミングが特に重要になる場面もあり、写真のようにソリストと指揮者で演奏中に上手く息を合わせないといけないです)




三楽章
一気に力強い曲調に変わります。
ソリストの独奏になり、ピッチカート(弦を指でポロンポロンと弾く演奏)の力強さが特に印象的でした。
全体がピッチカートでソリストを支えます。





ソリストとオーケストラの掛け合いがあり、優雅で綺麗でした。
オーボエ、クラリネット、フルート、ファゴットの順に同じメロディを演奏し、それを引き取る形で最後にソリストが同じメロディを演奏する場面がかなり良かったです
最後は力強く凄い盛り上がりになりました。
木村紗綾さんは全体的に音の「切れ」がズバッと切れ味鋭くて良いと思いました








(演奏終了時はそれまでの緊張感から解き放たれた雰囲気になります



3.ベッリーニ:歌劇「夢遊病の女」より”気も晴ればれと”



(ソプラノソリストの高橋梢さん)



第一部
二部構成に分けた歌唱になっていました。
凄く高い声でよく響き、明るい歌声でした
オーケストラも陽気になります。







第二部
こちらも明るい歌声でした。
オーケストラは穏やかで明るい雰囲気もありました。

オーケストラだけになる場面があり、凄く明るかったです。
ソプラノも入り、やがて独唱になりました。
タイトルに「気も晴ればれと」とあるように、終始明るい雰囲気なのが印象的で良いと思いました




(歌唱終了後、観客に礼をする高橋梢さん)



4.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15



(ピアノソリストの吉岡千佳さん)

一楽章
明るく堂々としたオーケストラで始まり、しばらく続きます。
ピアノが入り、明るくスピードが速く、軽やかで音色が良かったです。
曲調が変わりピアノは速さの中に安らぎも感じる音色になりました。




ピアノとファゴットが掛け合いをする場面があり、そこからオーケストラが冒頭のメロディをもう一度演奏しました。
ピアノも入りその軽やかさが凄かったです

ピアノの独奏になり、軽やかで凄いスピードで良い音色でした。
派手で力強くもなります。
この時コンサートミストレスの蔵川瑠美さんが、軽やかなピアノ独奏に体を揺らしていたのが印象的でした。




(演奏の全景。協奏曲でソリストが演奏する場所は、ほぼ必ずこちら側から見て指揮者の左側になります)

二楽章
ピアノとオーケストラ一緒に演奏が始まり、ややゆったりとした穏やかな音色でした。
音色はやはりとても良くて綺麗に響き、ゆったり目のスピードで演奏が進んで行きました。
最後は静かに終わります。






(これまでに聴いた演奏会で女性ピアニストが主役で登場した時は必ずドレスで、吉岡千佳さんのようなワンピース姿の人は初めて見ました。そしてそれ以上に演奏の物凄さに驚かされ、ぜひまたどこかの演奏会で聴いてみたいです

三楽章
ピアノの独奏で始まりスピードが凄かったです。
オーケストラも凄いスピードで迫力もありました。
凄く盛り上がる演奏になり、それが繰り返されました。
そこから再び凄いスピードで演奏が進んで行き、スピードと軽やかさが非常に印象的な演奏でした



(演奏を終えて立ち上がる吉岡千佳さん)


昨年の2月終わり頃は新型コロナウイルスによる影響が日毎に強くなっていて、この演奏会にも例年なら行われる出演者によるお客さんのお見送りが中止になるという影響が出ました。
しかし今思えば、開催して頂けただけでも幸せなことだったのだと思います。
ぎりぎり開催出来たこの演奏会のステージに立てた4人の演奏者には天運が味方したと私は捉えます。
広島交響楽団と協奏曲を共演という貴重な経験を生かし、これからさらに活躍していってほしいです



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プロフィール 2020年2月時点

井出崎優

1993年山口県山口市出身。
上野学園大学音楽学部音楽学科を卒業。
在学中に同大学オーケストラとP.クレストンの協奏曲を共演(下野竜也氏指揮)。
第28回中国ユース音楽コンクール、第17回さくらぴあ新人コンクール、第6回秋吉台音楽コンクールなどに入賞。
NPO法人 芸術・文化 若い芽を育てる会 第5回牛尾シズエ特別賞を受賞。
これまでに工藤三千代、福光恒星、甲斐尚美、彦坂眞一郎、松原孝政、長澤範和の各氏に師事。
2019年5月ピアニスト高橋優介とのデュオユニット「ユーアート」として初のCDアルバム「for you」をティートックレコーズよりリリース。
現在、beautiful 珍 earth、東京中低域の各メンバーとして活動中。



木村紗綾

広島市出身。15歳で渡欧。
プラハ音楽院に主席入学。
第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第38回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール第1位、第2回ヴィッラフランカ・ディ・ヴェローナ国際コンクール第1位、並びに聴衆賞を受賞。
チェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミーに在籍中はプラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭に出演。
2016年より大植英次氏と威風堂々クラシック in Hiroshima、チャリティコンサート等、多数共演。
これまでに村上直子、石川静、中村英昭の各氏に師事。
現在、プラハ音楽院にてイージー・フィッシャー氏に師事する傍ら、チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者としても活動中。



高橋梢

1993年愛媛県出身。
広島大学教育学部音楽文化系コース(クラリネット専攻)卒業、同大学院教育学研究科音楽文化教育学専修博士課程前期修了。
22歳より本格的に声楽の勉強を始める。
学内オペラにて、『こうもり』(アデーレ)、『フィガロの結婚』(ケルビーノ)、『ジャンニ・スキッキ』(ゲラルディーノ)を演じる。
2019年ひろしまオペラルネッサンス『魔笛』クナーベⅠでオペラデビュー。
声楽を枝川一也、市村公子、佐藤ひさらの各氏に師事。
現在、二期会オペラ研修所に第65期予科生として在籍中。



吉岡千佳

ノートルダム清心中・高等学校を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。
2015年いかるがコンクール(現・あおによし音楽コンクール)ピアノ音大生・音大卒業生部門第1位。
これまでに、ピアノを畑久美子、原田敦子、西佳子、横山幸雄、広瀬康に、室内楽を田野倉雅秋の各氏に師事。
現在、ウィーン私立音楽芸術大学にてローランド・バティック氏のクラスに在籍中。



末廣誠(指揮)

桐朋学園大学修了。
1989年、N.リムスキー=コルサコフのオペラ『サルタン王の物語』の日本初演において訳詞及び指揮を担当し、高い評価を受ける。
以降オペラを数多く手がけ、豊富なレパートリーを誇っている。
バレエでも多くの作品に参加しており、舞台作品における技量は各界から厚い信頼を得ている。
1990年ハンガリーにおいてサボルチ交響楽団を指揮。
同年、ワイマールで開催された国際セミナーでイェーナー・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、チューリンガー・アルゲマイネ紙に”真にプロフェッショナルな指揮者”と称賛される。
1991年、第4回フィッテルベルク国際コンクールにおいて第1位ゴールドメダルとオーケストラ特別賞を併せて受賞する。
翌年よりポーランド国立放送交響楽団をはじめとする各地のオーケストラに招かれ、クラコフ放送交響楽団の首席客演指揮者に就任。
また、国立シレジア歌劇場においてヨーロッパにおけるオペラデビューを果たし、定期客演指揮者として多くの作品を指揮している。
帰国後は群馬交響楽団を経て1995年から1999年まで札幌交響楽団指揮者を務め、多岐にわたる活動を続けている。
2016年には、ウィーン楽友協会合唱団のモーツァルト「レクイエム」を指揮し大好評を得た。
高いレベルの演奏を引き出す手腕には定評があり、今後の活躍が期待されている。
また、執筆活動のほか演奏会の司会や企画にもその才能は遺憾なく発揮されている。
レッスンの友社よりエッセー「マエストロ・ペンのお茶にしませんか?」を刊行。

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真夏への備え

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昨年末から、今年の夏を見据えてウォーキングを継続してきました。
昨年は真夏の暑さを乗り切るのに苦戦し、梅雨明け以降の猛暑の時期は外を歩くのが嫌になりました
その反省を生かし、今年の夏は暑さに負けずに過ごせるようにしたいと思いました。
目安として10000歩以上歩いた日に記録を取るようにし、各月ごとの結果は次のようになりました。
それぞれ最後の行に合計歩数を記載しています。

12月
日付  歩数
1225 19000
1226 18000
1227 13000
1228 20000
1229 12000
1230 10000
1231 22000
合計 114000歩

1月
日付  歩数
0101 18000
0102 20000
0103 20000
0104 18000
0109 15000
0110 21000
0113 12000
0116 13000
0117 14000
0120 13000
0122 12000
0124 13000
0125 13000
0130 17000
0131 16000
合計 235000歩

2月 ※花粉症で後半が失速
日付  歩数
0206 20000
0207 20000
0211 21000
0212 24000
0213 14000
0214 18000
0217 11000
0218 12000
0226 13000
0228 12000
合計 165000歩

3月 ※花粉症で失速
日付  歩数
0303 11000
0313 11000
0320 17000
0325 11000
0326 11000
0329 15000
0330 14000
合計 90000歩

4月
日付  歩数
0401 10000
0403 22000
0404 19000
0406 23000
0407 25000
0408 24000
0409 24000
0410 21000
0411 20000
0412 11000
0413 24000
0414 24000
0415 24000
0416 10000
0417 21000
0418 23000
0419 10000
0420 23000
0421 24000
0422 23000
0423 27000
0424 20000
0425 16000
0426 12000
0427 10000
0429 10000
0430 21000
合計 521000歩

5月
日付  歩数
0501 20000
0502 20000
0503 24000
0504 26000
0505 24000
0506 27000
0507 21000
0508 22000
0509 16000
0510 22000
0513 11000
0514 12000
0515 11000
0517 10000
0518 11000
0519 24000
0522 22000
0523 27000
0525 13000
0526 17000
0527 12000
0528 12000
0529 21000
0530 24000
0531 10000
合計 459000歩

6月 ※梅雨と相談しながら
日付  歩数
0601 24000
0604 10000
0605 22000
0607 22000
0608 22000
0609 23000
0610 24000
0611 12000
0613 10000
0617 21000
0619 11000
0622 14000
0624 28000
0625 22000
0629 26000
0630 26000
合計 317000歩

7月 ※前半が体調を崩して失速
日付  歩数
0702 26000
0711 11000
0712 10000
0716 12000
0720 25000
0721 25000
0722 21000
0723 21000
0724 25000
0729 24000
0730 24000
0731 23000
合計 247000歩

12~7月合計 2148000歩

10000歩が約7kmとのことで、1000000歩で約700km、2000000歩で約1400kmとなり、合計をしてみてそんなに歩いていたのかと驚きました。
そして月ごとにたくさん歩いた月やあまり歩けなかった月があるのが分かります。
2月の後半から3月の終わりまでは花粉症に苦しめられ、思うように歩けませんでした。
4月から5月の途中までは過ごしやすい気候なこともあり最も活発に歩いた時期で、20000歩以上歩いた日が何日もあります。
5月の半ばからは異例の早さで梅雨入りしたので空模様と相談しながら歩いて行きました。

7月は13日に中国地方の梅雨明けが発表され、ついに真夏に突入しました
その直前、体調を崩して一週間くらい満足に歩けない時期が続いていたので、体が真夏の暑さに対応できるか心配でしたが、それまでの貯金があったおかげで大丈夫でした。
7月後半は再び活発にウォーキングを行い、体調を崩す前の体力に戻ったのではと思います。
今日から8月を迎え、徐々に秋の気配はしながらもまだしばらくは続く真夏の暑さを乗り切る手応えも得られました。

昨年末からウォーキングを続けたおかげで、体重が目に見えて落ちる効果がありました
さらにウエストも細くなり、くびれがすらりとなったのも密かに嬉しいです。
この調子でこれからもウォーキングを続けていき、体力のさらなる強化とともにもっと締まった体を手に出来たらと思います

HiKaRi Library Concert Vol.28

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(写真左からピアノ田中香織さん、ヴァイオリンrioさん、エレクトーンrionさん)

8月7日、山口県周南市立徳山駅前図書館の1階スペースで行われた、新感覚音楽ユニットHiKaRi(ヒカリ)のHiKaRi Library Concert Vol.28を聴きました。
HiKaRiはヴァイオリン、ピアノ、エレクトーンという珍しい編成になっていて、元々は何度も演奏を聴いたことがあるヴァイオリンのrioさん(浦川莉緒さん)が加入されるということで興味を持ち、前回の6月に初めて演奏を聴いたのが始まりです。
その時に良いコンサートだったのでまた聴きに行こうと思い、今回も足を運びました。
真夏のコンサートなので夏らしい曲がたくさん登場し、ワクワクしながら聴きました


1.Whiteberry:夏祭り(3人で演奏)



(間近で座って聴ける席は満席だったので、私は本棚の手前側から聴きました。いかにも図書館でのコンサートという雰囲気です

「きーみーがーいたなーつーはー」の、冒頭のゆったりとした有名メロディを、エレクトーンが独奏して始まりました。
1曲目はトーク等はなしですぐに始まるので何を演奏するか知りませんでしたが、「夏祭り」が来て気持ちが盛り上がりました
2番の出だしはヴァイオリンが生き生きと演奏して目立っていました。





(1曲目終了後、挨拶がありました。左からピアノ田中香織さん、ヴァイオリンrioさん、エレクトーンrionさん。真夏の夕方、太陽との位置関係で3人がややシルエットのようになり、叙情的だなと思いました。)



2.DAOKO×米津玄師:打上花火(ヴァイオリン、エレクトーンで演奏)





アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌です。
終始ゆったり目のしっとりとした演奏で、その中で盛り上がる場所もありました。
サビの演奏がドラマチックさを感じて特に良かったです



3.映画「魔女の宅急便」より:海の見える町(ピアノ、ヴァイオリンで演奏)





ピアノとヴァイオリンで演奏しました。
冒頭のピッチカートがよく響いていて良かったです。
その同じメロディを次は弓で弦を弾いて演奏し、爽やかさとともにどこかもの悲しさを感じる響きになっていました。
ピアノの響きもまさに目の前に日差しの当たる海が見えてくるかのようで良かったです。



4.東京スカパラダイスオーケストラ:Paradise Has No Border(ピアノ、エレクトーンで演奏)





とてもリズミカルに始まりました。
昭和を感じるようなノリノリなメロディが印象的で、そこに格好良さもありました。
リズム、テンポが良く、聴いていると気持ちが楽しくなってくる演奏でした



5.映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」メドレー(3人で演奏)





前半最後の演奏でした。
3つの曲を演奏し、冒頭はロマンチックなメロディで爽やかさがありました。
次はもの悲しげでしっとりとして、そして雄大さも感じるメロディになりました。
次は一番有名な「彼こそが海賊」という、誰しも一度は耳にしているのではという曲で、迫力が凄く演奏に切れもありました。



6.葉加瀬太郎:ひまわり(3人で演奏)



(ヴァイオリンのrioさんがピッチカート(指で弦をポロンポロンと弾く演奏)をしている場面。
手に持つ弓のリーチが意外と長いのが分かるかと思います。)



10分休憩後に後半が始まりました。
ひまわりは夏の花でもあるので今回選曲したのではと思いました
凄く安らぐメロディを伸びやかに演奏していて聴き心地が良かったです。



7.マスネ:タイスの瞑想曲(ピアノ、ヴァイオリンで演奏)





今回のコンサート唯一のクラシック曲でした。
ゆったりとした安らぐ音色で、ヴァイオリンの迫力が凄い場面がありました。
かなり上手く、クラシックが専門でもあるrioさんのこの日の勝負曲のように感じました。
ピアノもヴァイオリンとピッタリ息を合わせていて、その中でしっかりと存在感も出ていて良いと思いました。
ゆったりとした安らぐ音色なのに、対照的に聴こえ方は立体的で生き生きとしていたように思いました。
「ゆったり」と「生き生き」は全く違う要素で、それをごく自然に両立させているところに高い表現力を感じました



8.アニメ「呪術廻戦」より:廻廻奇譚(かいかいきたん)(ヴァイオリン、エレクトーンで演奏)






迫力が凄く、何より演奏が楽しそうでした
「タイスの瞑想曲」から打って変わってこちらは「生き生き」が全開になっているなと思いました。
そしてエレクトーンのおかげで非常にロックな雰囲気が出ていて、この編成の底力を感じました。
表現の幅がかなり広い気がします。
エレクトーンはこの編成の鍵を握る存在と思われ、出せる音の種類の豊富さを生かして様々な音で演奏を盛り上げてくれます



9.T-SQUARE:宝島(ピアノ、エレクトーンで演奏)





冒頭から楽しそうなメロディなのが印象的な曲です。
エレクトーンの、クラリネットのような柔らか味のある音色がスキップするように奏でられ目立っていました
終始夢の中に居るような音色で聴いているほうも夢見心地になりました。




(最後の曲の前にメンバー紹介がありました。今回は衣装が緑、赤、黄色で信号機のようになっていたのが面白かったです



10.葉加瀬太郎:情熱大陸(3人で演奏)



情熱大陸は前回に続いて今回も手拍子ありで、大盛り上がりでした。
演奏もノリノリで、伸びやかになったり迫力が出たり、切れが出たりと変化に富んでいて面白かったです。
HikaRiというグループの重要ナンバーになっている気がしました


真夏のコンサート、とても楽しかったです。
このユニットはやはり演奏が楽しそうなのが印象的で、楽しさは音楽の原点でもあると思います。
聴きに来た人達を楽しくさせてくれるユニットな気がし、末永く地域に愛されて行くのではと思いました。
次回の10月もぜひ聴きに行って楽しいひと時を過ごせたらと思います



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-----徳山ゆかりのフォトギャラリー -----
出光興産徳山事業所 「海賊と呼ばれた男」ゆかりの地
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-----徳山ゆかりの小説-----
「海賊とよばれた男 (上)」百田尚樹
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ひろしま美術館 ミュージアムコンサート(出演:木村紗綾)

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(曲の合間のトークで談笑する木村紗綾さん)

一昨年の9月14日、広島県広島市のひろしま美術館で行われた「ミュージアムコンサート」を聴きに行きました。
何度か演奏を聴き非常に上手い人だと思ったヴァイオリニストの木村紗綾さんが出演されるということで興味を持ちました。
ピアノ伴奏のない「無伴奏ヴァイオリン」という形でのコンサートで、ヴァイオリンだけ、それもソロでの演奏は高難度なのではと思いました。
どんなコンサートになるのかとても興味深く聴かせて頂きました





ひろしま美術館にやって来ました
美術館で開催されるコンサートに行くのはこの日が初めてでした。




会場となる「別館地下第8展示室」に到着しました。
さすが美術館で、壁にはいくつもの絵画が展示されています。




写真中央前方が演奏場所で、用意された席はほぼ全て埋まっていたので私は後方で立ち見をすることにしました。



1. J.S.バッハ(1685-1750)
無伴奏パルティータ第3番 BWV1006より ガボット



とても明るくてスキップするような音色が印象的でした。
約3分くらいと短めの曲で、挨拶代わりの1曲にピッタリだと思います




演奏の合間にはトークがあり、木村紗綾さんはチェコで活動していて、当時7月後半から日本に滞在してこの日が滞在期間最後のコンサートとのことでした。



2. F.クライスラー(1875-1962)
レチタティーヴォとスケルツォ Op.6



トークで「クライスラーらしいウィーンの気品高い感じのする曲」と言っていました。
右手に持つ弓でややミステリアスな音色を弾いている時、同時に左手でポン、ポンと三味線をバチで弾く時のような音を単発で出していたのが印象的でした。
当時はクラシックのコンサートを聴くようになって1年弱で、そんな演奏が出来ること自体とても新鮮でした




3曲目の作曲者パガニーニについて、「悪魔に魂を売ったと言われるくらいヴァイオリンが上手い人だった」と紹介がありました。



3. N.パガニーニ(1782-1840)
24の奇想曲 Op.1より 第5番、第24番





第5番は小刻みな高速演奏が続き、圧倒されているうちに終わりました。




左手の位置に注目で、パガニーニの曲は第5番も第24番も、他の曲のヴァイオリン演奏よりも弓に近い位置になる場面が目立ったように見えました。

第24番のメロディはフィギュアスケートで聴いたことがあるなと思いました。
物凄く上手い演奏だと思いました
低音と高音の繰り返しが、音域が違っても非常にスムーズだと思いました。
「ポンポンポンポン」と、フライパンで豪快に炒め物をしているような音のはじける演奏が印象的でした。




4曲目について、「最近新たな楽譜が発見されて全7曲のソナタになった」と紹介がありました。
また4曲目が今日のメインとのことでした。



9月はまだ暑く、ヴァイオリンは暑い時期を苦手としているので4曲目の前にチューニング(音合わせ)をする場面がありました。



4. E.イザイ(1858-1931)
無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番 Op.27 ホ短調





一楽章
高音で伸びのある良い演奏がありました。
音色にどこか「昔」を思わせる風情も感じました。

二楽章
最初と最後がピッチカート(弦を指でポロンポロンと弾く演奏)だったのが印象的でした。
穏やかな演奏からの最後のピッチカートは淡い雰囲気で、まるで水の中に居るようだと思いました。

三楽章
軽快でドラマチックな音色でした。
伸びやかな演奏になった時の手首のスナップの良さも印象的でした。




5曲目はオーケストラ用の曲で、それをヴァイオリン一挺(いっちょう)で弾くとどうなるか見てほしいと言っていました。



5. H.W.エルンスト(1814-1865)
シューベルトの「魔王」による大奇想曲 Op.26



やや不気味で小刻みに、迫ってくるように始まりました。
その音色が何度も登場していて、緊迫した音色はまさに魔王的だと思いました。
またこの曲でも右手で演奏しながら同時に左手で単発の音を入れる場面がありました。




5曲目が終わり、アンコールの前に広島テレビの方によるインタビューがありました。



チェコは東ヨーロッパなのでそれほど都会的ではないとのことで、どこか広島的な雰囲気もあって良いと言っていました。
明後日チェコに戻る予定で、チェコの料理ではチーズを揚げたものが好きとのことでした。



一人っ子なので一人でぼーっとしている時間も好きとのことでした。
ヴァイオリンは1日4~6時間演奏の稽古をしているとのことで、その他にも事務的なこともしないといけないはずなので大変なのではと思いました。
11月30日と12月1日には「威風堂々クラシック in Hiroshima」があり、木村紗綾さんは今年4回目の参加で3回目のコンサートミストレス(オーケストラのまとめ役)をするとのことでした。



アンコール
エルンスト:夏の名残のバラ



途中からまさに夏の名残のような、ゆったりとした安らぐ音色になりました。
この曲も右手で演奏しながら同時に左手で別の音を入れていました。
特に右手で伸びやかな演奏をしながら、左手で高い音域で「ドレミファソファミレド」と一音ずつ上下するような、安らぐ音色を演奏した時がかなり良かったです


プログラムの「演奏者コメント」欄には次のようにありました。
「一挺のヴァイオリンから聴こえてくる音は、どんな色に見えるでしょうか。「あえかなる音(きゃしゃな音)」も人々の心に届くと、鮮やかな風景になります。そんな音を奏でたいと思います。」
まさにこのコメントのとおり、私の場合は色で言えば4曲目の「無伴奏ヴァイオリンソナタ第4番」を聴いた時に水色が、風景で言えば3曲目の「24の奇想曲 第24番」を聴いた時にフライパンで炒め物をしている風景、アンコールの「夏の名残のバラ」を聴いた時に9月後半頃の、暑くても空が澄んで高い爽やかな風景が思い浮かびました。
無伴奏ヴァイオリンの、ソロのコンサートでこんなに多彩な音が出せるのかと驚かされ、これからもぜひ様々なコンサートで木村紗綾さんの演奏を聴いてみたいと思いました



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演奏者プロフィール 2019年9月時点

ヴァイオリン 木村紗綾

3歳よりヴァイオリンを始める。
2010年安田女子中学校を卒業後、15歳で渡欧。
プラハ音楽院に首席入学。
第15回日本クラシック音楽コンクール小学校の部全国大会第4位、第59回第60回全日本学生音楽コンクール大阪大会入選、いしかわミュージックアカデミーIMA奨励賞、第50回コツィアン国際ヴァイオリンコンクール第1位、第35回チェココンセルヴァトワール・ギムナジウム国際コンクール最高位、第38回第1位を受賞するなど国内外のコンクールで入賞。
2010年ドヴォルジャーク音楽祭にて指揮者、ヤロスラフ・クルチェク氏とバッハのヴァイオリン協奏曲を共演。
2011年ヒロシマ平和創造基金より2年間奨学金を授与される。
2016年より大植英次氏と威風堂々クラシック in Hiroshima、チャリティーコンサート等で多数共演。
またチェコフィルハーモニー管弦楽団オーケストラアカデミー在籍中はプラハの春音楽祭、スメタナ音楽祭等に出演。
2017年イタリアで開催されたインターハーモニー音楽祭ではコンサートミストレスを務める。
これまでに村上直子氏、石川静氏、中村英昭氏に師事、現在プラハ音楽院にてイージー・フィッシャー氏に師事する傍ら、チェコフィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団などの客演奏者としても国内外で活躍中。

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辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT

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(コンサートで歌唱する左から菅原りこさん、辰巳真理恵さん)

8月21日、東京都中央区築地のライブハウス「BLUE MOOD」で「辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT」が開催されました。
コンサートは今年1月に上演された舞台「『Mogut(モグー)』~ハリネズミホテルへようこそ~」で女優・タレントの菅原りこさんと俳優の辰巳琢郎さんが共演し、その娘さんでソプラノ歌手の辰巳真理恵さんと知り合って交流が生まれ、辰巳真理恵さんによって企画されました。
新型コロナ対策で限定席数での会場席とネットのライブ配信があり、私はライブ配信で聴きました

辰巳真理恵さんは音楽大学で声楽を学んだプロのソプラノ歌手で、ピアニストの追川礼章さんとクラシックコンサートを開催することがよくあるようです。
菅原りこさんは女優・タレントになる前は新潟県を本拠地とするアイドルグループNGT48で活動しておられ、その歌唱力は「高い」と評判を得ていました。
女優・タレントに転身後にコンサートで歌を披露するのはこの日が初めてで、ご本人も意欲を持っている「歌手活動」へのデビューとなりました



第一部

1.AKB48:虫のバラード



アイドルグループAKB48の楽曲「虫のバラード」の、追川礼章さんによるピアノソロで始まりました。
菅原りこさんもかつて歌唱したことがあり印象深いオープニングとなりました。
ピアノは儚さ、誇り高さ、力強さなどが音色から溢れていて上手い演奏だと思いました。



2.シン・エヴァンゲリオン劇場版より:Beautiful World



虫のバラードの終わり際に辰巳真理恵さんと菅原りこさんが登場し、間髪入れずに2曲目が始まり、ピアノが全く違う世界観に即座に対応していて流石だと思いました。
辰巳真理恵さんは赤のドレス、菅原りこさんはピンクのドレスで、まさにクラシックコンサートの雰囲気だと思いました
「もしも願い一つだけ叶うなら 君のそばで眠らせて」という、辰巳真理恵さんの物悲しい雰囲気のソロで歌唱が始まります。
そこから一気に高音になって歌う時、美しさとともに消え入りそうな儚さが強く表現されていて、かなり上手いと思いました



菅原りこさんも「もしも願い一つだけ叶うなら 君のそばで眠らせて」とソロで歌い、こちらは同じ歌詞でも表現を変え、「君のそばに居たい」という思いを前に出した歌い方に聴こえました。
ゆったりとした歌い方の中に思いの熱がこもっているのが感じられ、こちらも上手いと思いました

そこから二人が交互に歌いながらスピードも上がり盛り上がって行きました。
さらに二人同時での歌唱になり盛り上がりの頂点に来た時、追川礼章さんのピアノを弾きながらの「男声」も入ってきて驚きました。
三人でのハーモニーは音の層の厚さを感じました。
最後は辰巳真理恵さんと追川礼章さんのハーモニーを菅原りこさんが引き取る形での歌唱が繰り返され、しっとりと終わりました。



トークでは辰巳真理恵さんによる出演者のご紹介がありました。
しかし自身への言及を忘れて次の話題に行ってしまい、追川礼章さんに「自身の紹介がまだ」とフォローされていました
追川礼章さんは若くして非常に落ち着いていて、トークが暴走気味のお二人を様々な場面でフォローしていました。



3.絢香:にじいろ





NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」の主題歌で、菅原りこさんが歌いました。
菅原りこさんの歌唱は一つ一つの音の発声がはっきりしているのが印象的で、益々実力が上がっているように思いました。
「優しく、弾むように、さらにはフワフワと」といった雰囲気の歌い方になった場面もあり、表現力が豊かだと思いました。



4.オッフェンバック:オペラ ホフマン物語より 生垣には小鳥たち





「人形の歌」とも呼ばれているぜんまい仕掛けの人形のオペラで、辰巳真理恵さんが歌いました。
まさにソプラノ歌手という歌い方で、時にコミコルにも歌っていて非常に上手かったです。
辰巳真理恵さんは腹の底から声が出ているのがよく分かり、どっしりとした大樹のような響きだと思いました
歌唱時にカクカクとした特徴的な動きをしていたのは、ぜんまい人形を表現していました。
終盤、ぜんまいが切れて動かなくなったところを菅原りこさんがぜんまいを巻いてもう一度動かす演出がありました。
ぜんまいが切れる瞬間の、エコーがか細くなっていくような歌い方も秀逸だと思いました。



5.大原櫻子:瞳



第93回全国高校サッカー選手権大会の応援歌で、菅原りこさんが歌いました。
ゆったりとした安らぐ音色で、音程もバッチリ取れていて上手かったです。
情感もたっぷりでした。
「涙だって 笑顔だって がむしゃになった証だよ」の「がむしゃら」の部分を歌った時、それまでの綺麗な歌唱を維持しながらがむしゃらさも出ていて特に良かったです。



トークは菅原りこさんのキャッチフレーズについてでした。
「さくらんぼの妖精」というキャッチフレーズを持っていますが、ご本人が携帯電話で今のキャッチフレーズは何なのかを「診断メーカー(名前を入力すると自動で診断してくれる)」で調べたところ、「今世紀最大の謎」と出てきたとのことでした。
実際に謎エピソードがたくさんあるという話になり、追川礼章さんが持ってきた「どら焼きシフォン」の差し入れのうち、「こっちがこしあん、こっちがあんず」と説明があり、「こしあんが良い」と言って取ったのがあんずだったとのことです
しかしトークの雰囲気から二人に愛されているのがよく分かり嬉しかったです
また、最後に辰巳真理恵さんから今年はピアソラの生誕100周年で、2曲続けてピアソラの曲をお送りするとご紹介がありました。



6.ピアソラ:オブリビオン





日本語で「忘却」という意味で、辰巳真理恵さんが歌いました。
別れた恋人を忘れるといった意味合いの歌と言っていたとおり、悲しそうな雰囲気で始まり、冒頭から上手さを感じました。
高音の響きが良く、音が伸びながら広がって行くのが印象的でした。
また辰巳真理恵さんは一貫してマイクをかなり遠い位置に置いていて、声楽の奏者がクラシックコンサートに登場する時はマイクなしで歌う場合が大半でもあり、おそらくなしでも全く問題ないのではと思います。



7.ピアソラ:リベルタンゴ



追川礼章さんのピアノソロでした。
「このピアノは電子ピアノ」と紹介がありましたが、音が電子ではないピアノに近い印象があり、かなり良い電子ピアノなのではと思いました。
演奏はやはり上手く、情熱の音色に聴き入りました。
低音部の演奏で情熱の雰囲気を出しながらの、高音部の躍動するような響きが良いなと思いました。
終盤は物凄い速さの演奏になっていました



第二部



第二部は辰巳真理恵さん、菅原りこさんともに衣装を替えて登場しました。
カジュアルなドレスになり、第一部よりもアクティブなステージになることが予感されました。
冒頭から一気に4曲続けてジブリ映画のメドレーとなりました



8.魔女の宅急便より:やさしさに包まれたなら



辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌い、とても爽やかな歌で、聴いていると気持ちも爽やかになりました
菅原りこさんがメインメロディを歌い辰巳真理恵さんが「ルー」とハモっていた時の、爽やかさの中に神秘さも感じる音色が特に良かったです。



9.ゲド戦記より:テルーの唄





菅原りこさんが歌い、冒頭アカペラで始まり、やがてピアノも入って行きました。
物悲しそうに歌い上げていて上手かったです。
まるで自身が作品世界の中に佇んで歌っているように聴こえ、まだ20歳の若さで高い表現力を持っているのはここに由来する気がしました。



10.千と千尋の神隠しより:いつも何度でも





辰巳真理恵さんが歌い、とても安らかな音色で上手かったです。
気持ちも休まる歌声でした。
ソプラノ歌手ということで高音で歌っている時の声に注目しがちですが、そこよりも低めの音での歌声もかなり上手いと思いました



11.天空の城ラピュタより:君をのせて





辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌い、冒頭の辰巳真理恵さんのソロが寂し気でなおかつ気高さも感じる音色で一気に引き込まれました。
そこからの菅原りこさんメインメロディ、辰巳真理恵さん低音でのハモりの場面も厚みのある音から冒険のワクワク感が感じられて良かったです



トークは好きなジブリアニメについてでした。
菅原りこさんは「ハウルの動く城」、追川礼章さんは「となりのトトロ」、辰巳真理恵さんは「千と千尋の神隠し」が好きとのことでした。
再びトークが暴走気味で、辰巳真理恵さんがリードしていましたが次の曲のピアノソロを忘れて2曲先に行きそうになっていました。
ここでも追川礼章さんがフォローに入り、「プリンス」というニックネームで呼ばれていますがステージ上での落ち着いた振る舞いはまさにプリンスだと思いました



12.千と千尋の神隠しより:あの夏へ(いのちの名前)



追川礼章さんのピアノソロでした。
トークの曲紹介の時に「夏の終わりのわびしさ、寂しさを感じる曲」と言っていて、まさにその通りな音色でした。
ゆったりと始まり、音がとてもしっとりとしていました
そのしっとりさこそ夏の終わりに感じる寂しさそのものだと思いました。
ゆったりとした中でこちらに迫ってくるような迫力を感じる音と、遠ざかって行くような儚げな音に分かれていて、それも夏の終わりの、猛暑だけでなく初秋の陽気の日が出始める頃に通じるものがあると思いました。
情感もたっぷりでとても上手かったです



トークはこの後4曲続けるアニメの歌についてでした。
辰巳真理恵さんが「本日は歌のコンサートだが、「檄!帝国華撃団」を歌う時に菅原りこさんにダンスを披露してもらうことにした」と言っていて興味深かったです。



13.ソードアート・オンラインより:ANIMA



菅原りこさんが歌い、力強くスピーディーな歌い出しが印象的でした。
今までの曲と声質を変えていて、ワイルドで男性的な力強さをも感じる歌声になっていて上手いと思いました。
素晴らしい表現力だと思います



14.世界名作劇場 ロミオの青い空より:空へ





辰巳真理恵さんが歌い、この歌は聴いたことがありました。
幼少期にアニメを見たことがあるのを思い出しました。
かなり上手く、儚げな雰囲気が良かったです。
超高音で歌った場面は音色から感じるものが儚さから「美しさ、澄んだ雰囲気」へと変わり、その雰囲気はまさに青空だと思いました。



15.美少女戦士セーラームーンより:ムーンライト



辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌いました。
お客さんの手拍子の中で歌っていてノリノリな雰囲気でした
音楽の原点「楽しさ」を思い出させてくれる明るい歌唱も印象的で、「月の光に導かれ」というフレーズを二人でハモった時の楽しい雰囲気が特に良かったです。
それを引き取る形で演奏されたピアノの少しミステリアスな響きもかなり良かったです



16.サクラ大戦より:檄!帝国華撃団





辰巳真理恵さんが歌い、菅原りこさんがダンスで盛り上げました。
曲調にモダンな雰囲気があり独特な楽しさがありました。
この曲もお客さんの手拍子の中でノリノリで歌い、会場の雰囲気が最高に良かったです



トークで3人が「足を運んで頂いた皆さん、配信をご覧の皆さんありがとうございました」と挨拶していました。
次が最後の曲とのことで、映画「鬼滅の刃 無限列車編より「炎(ほむら)」」と紹介がありました。



17.鬼滅の刃 無限列車編より:炎



辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌いました。
三人それぞれキャラクターの羽織りものを羽織り、辰巳真理恵さんは竈門禰󠄀豆子(かまどねずこ)、菅原りこさんは胡蝶しのぶ、追川礼章さんは竈門炭治郎(たんじろう)でした。
やや悲しそうな歌い出しから次第に盛り上がって行き、ドラマチックな雰囲気になるのが良かったです



アンコール
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?より:瑠璃色の地球



ゆったりとした安らぐ音色の曲で、アンコールに合っていると思いました。
高音のハモりが特に良く、安らぎが増して行きました


コンサートを聴いて、歌手活動デビューということで気になっていた菅原りこさんは、この先超一流のポップス歌手になれる人だと思いました。
歌唱力、人を引き付ける魅力ともにあり、文句なしの逸材です。
所属しているエイベックスは歌に強いイメージもあり、歌手として老若男女問わず国民全般に広く名を轟かせる日が来ることを期待します。





コンサートのチラシに「さくらんぼ」がたくさん描かれているのは、菅原りこさんがアイドル時代に「さくらんぼの妖精」と呼ばれ、女優・タレントになった現在もさくらんぼがトレードマークな事に由来すると思います。
なので私はチラシを見て、辰巳真理恵さんの菅原りこさんへの配慮の手厚さに驚きました。
「ゲスト出演して手伝って頂く」とは全く違い、歌唱経験に差があっても一人の歌手として尊重し、対等に扱って頂いているのが分かりました。
度量の大きな人だと思いました。
そして菅原りこさんには貴重なご縁をこれからもぜひ大事にしてほしいと思いました


私は菅原りこさんの歌手活動デビューが、プロのソプラノ歌手辰巳真理恵さんとの共演になって良かったと思いました。
この先歌唱分野での活躍も目指しているご本人にとって、得るものがかなりあったのではと思います。
また今回のコンサートを聴いて、辰巳真理恵さん、菅原りこさん、追川礼章さんによる編成は息も合っていて良い編成だと思いました。
またいつか3人でのコンサートを聴けたら嬉しいです✨


-----菅原りこさん出演作品の感想記事-----
「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」三谷幸喜



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演奏者プロフィール

ソプラノ 辰巳真理恵

東京音楽大学卒業、同大学院及び二期会オペラ研修所修了。
東京二期会や東京オペラ・プロデュースなどのオペラにも数多く出演し、「第九」等でもソリストを務める。
CD「Ba,Be,Bi,Bo,Bu」他をキングレコードよりリリース。
八王子FM「辰巳真理恵のBa,Be,Bi,Bo,Bu」にてパーソナリティを務め好評。
10/23にはサントリーホールブルーローズにて、3回目となるリサイタルを開催予定。



女優・タレント 菅原りこ

新潟県出身の20歳。
2015年7月NGT48の第1期生として最終審査に合格し2017年デビュー。
デビューシングルでは、表題曲選抜メンバーに選出された。
2019年NGT48を卒業し、エイベックスに所属。
現在は、女優・タレントとして舞台やテレビなど様々なジャンルで活躍中。



ピアノ 追川礼章

1994年生まれ。
埼玉県立浦和高等学校卒業後、東京藝術大学楽理科を経て同大学大学院ソルフェージュ科を修了。
テレビ朝日《題名のない音楽会》、BS-TBS《日本名曲アルバム》等にピアニストとして出演。
現在は国内外の有名アーティストと全国的にコンサートを行い、年間公演数は100を超える。
これまでに編曲&ピアノで参加したCDの多くがメジャーレーベルから発売されている。
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